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第144話 集落の村長

 次の日ーー。

 俺とチサとジークハルトは揃ってゴライヤの案内の元、村長の家へと向かっていた。

 俺たちを見たリザードマンたちが不思議そうに



 とはいえチサはまだ歩けないので俺がおぶっているのだが。本当は寝ていて欲しかった!昨日目覚めたばかりだったから本当は無理してほしくなかった!

 だが、「妾も行くのじゃ!」とチサは言い張った。こうなったチサは俺の力では折れさせることなどできず、仕方なくゴライヤから紐と布を借りて背中に縛り付けているのだ。


「やはり良いのう。牢と違ってこうして外の景色が眺められるというのは。ジンの肩の上じゃなくて少し視線が低いがこういうのも悪くないのじゃ。」


 チサは俺の背中で鼻歌を歌っている。俺はそんなチサを心から凄いなあと思う。なんせ全身骨折に拷問でついた傷だらけで、止血も傷口を適当に焼いて行われたようで傷口の周りは火傷でただれていた。更に片目の視力を失い、不衛生に起因する感染症で死の淵を彷徨ったというのに......。


 首長竜だからだろうか。人じゃないという意味で痛みに強いのかもしれないが、俺だったらこの不死身と自動回復の力が無ければ絶対に無理だと思う。

 だけどやっぱりチサがこうして元気で俺のそばにいてくれるというのは不思議と力を与えてくれる気がした。


「ここよ。」


 ゴライヤに言われ建物を見る。改めて見ると目の前の建物はやはり俺のような人間に合わせたものではないからやはり大きい。入り口だけでも四メートルは高さがあるのではないかと言うほどの大きさだった。この建物は村長の住むところだからかこの集落で唯一外観まで綺麗に整備されていた。


「凄いな。やはり村長の家だけあってここだけは綺麗に整備されているんだな。」


「ええ、外から来る客人に最低限分かる様にね。ここに(おさ)が住んでいるって。」


 そんな話をしながら扉を開けて中へと入る。中に入った瞬間、そこはリザードマンが二十人は座って話せるほどの巨大な円形のテーブルが俺の視界に入る。そして入ってきた俺たちの対角線上の席に一人のリザードマンが座っていた。

 あれは確か、俺がこの集落に来た時リザードマンたちを指揮していたリザードマンだったはず......。


「待っていた。まずは五日前、突然貴方達を襲ってしまったことを詫びさせて欲しい。すまなかった。」


「気にすることはなか。おいどんがいた時点で村長殿は迎撃するほか無かったでごわす。ジンもそれを覚悟でおいどんをここへと一緒に入ってくれたでごわすから。」


「ああ、どの道俺が動く時にチサを看ていてくれる信頼出来るやつが必要だったからな。あれは気にしていない。結局チサの命を救って貰えたわけだしな。」


「ありがとう。そう言ってもらえると助かる。では自己紹介を。私は、ジスカーダ・マッケンリー・スプライト・ドルチェ・ヴェータ・アクトラス・サルダーニャ・バーだ。ジスカーダと呼んでくれ。この集落で村長をやっている。」


「ジンだ。海を渡ってここへ来た。」


「チサじゃ。ジンと同じく海を渡ってここへ来たのじゃ。」


「ジークハルト・アヴァロディでごわす。」


「私はいいわよね?」


 そんな感じで自己紹介を終えた俺たちはジスカーダに促されジスカーダの対面となる席に座ってゆく。とは言っても俺だけはチサを背負っているので立ったままなのだが。


「すまないな。さて今日わざわざ来てもらったのは、これから脱獄犯であるジークハルト、ジン、チサをこの集落で匿う上でのすり合わせについてだな。」


 俺は目を見開いて驚く。昨日ゴライヤから少し触れられてはいたが、ここまでハッキリと言われるとは思わなかった。


「いやな、すでに指名手配が来ておるのだよ。貴方たち三人に。賞金だって賭けられておる。差し出せば、一人頭千万コヨーテ。情報提供でも有力な情報には百万コヨーテ。コヨーテというのはこの大陸の通貨で千万コヨーテはニードルウルフ約100匹分に相当するな。」


「それは手が早いな。」


「それだけおいどんたちの存在が野に放たれたのは不味いとリザードマンの上層部は思っているのでごわすな。」


「そういうことだ。だが、貴方たちと敵対するにはウチの集落ではあまりにも実力が足りないのだ。情報提供するのも悪くは無いが、告げ口をするにはお主たちの様な実力者はあまりにも惜しいのだ。」


 なるほどな。たしかにそうだろう。俺たちを捕まえられるならまだしも、捕まえられないのなら密告をしても得られる利益はせいぜいニードルウルフ十匹程度の資金。それに対して村全体で口裏を合わせさえすれば俺が毎日ニードルウルフ百匹、即ち千万コヨーテが集落へと供給される。


「ゴライヤから昨日聞かされた契約にも理由があったのだな。」


 俺はそう言葉を紡ぐ。たしかに懸賞金がかかっているのであれば匿う側も相応のリスクが発生するのだから。


「ああ、そうだ。本当は十匹でも十分に匿う価値があるんだが、十匹では集落全体に行き渡らず不満を持つ者が出てくるからな。そういった者たちの不満を抑えるのは容易では無いが故に今回はこの様な対応とさせてもらった。」


「ふむ。妾にはニードルウルフとやらはわからぬが、まあジンなら大丈夫であろうな。とはいえリザードマンの上層部はここへ兵を送ったりはせぬのかの?」


 俺の背中から今まで沈黙を保っていたチサが話し出す。


「ああ、それは大丈夫だ。ゴライヤから聞いただろう? 今リザードマンが置かれている状況について。わざわざお前たちの様な隠蔽したい存在を敢えて高額な懸賞金をかけて探し出そうとするほどに今のリザードマンには人的な余裕が無いのだ。だから、手配書を二日前に運んできて以来音沙汰さえも無いな。」


 万が一捜索が来れば返り討ちにするなり気配遮断で隠れるなりやりようはあった。

 こうして改めて話をまとめた俺は村長と握手をする。チサが回復するまで匿ってもらうことと、食料供給で利害が一致したのだから。その後、村長は俺たちのことを村人たちへ周知するために、俺とチサとジークハルトはニードルウルフの確保に村の外へと動き出すのだった。




ここ2話くらいもうちょっと上手く話出せたなあと少し後悔気味だけど、次の展開に活かせるように頑張る!


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