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第143話 集落の現状

遅くなって申し訳ないです!

明日はギリギリにならないように頑張りますm(__)m

「そうね......。三十年ちょっと前の話だったかしら。今の首領に変わってからだったわね。待遇が変わり始めたのは。」


 当時、リザードマンとオーガはお互いが睨み合ってはいたものの、2つの種族がぶつかり合う大陸の境界線付近以外は暮らすのに問題なかったそうだ。


「今の首領(ボス)に変わって間もない頃......そうね。三十年前、どうやったのかは分からないけれど、リザードマンがオーガに快勝したのよ。当時は湧き上がったわ。オーガ内のナンバーワンの戦士も捕らえ、私もようやくこの戦争に前進の兆しが見えたのだと嬉しかったのを覚えているわ。」


 ジークハルトはそれを聞いて唇を噛み締めているのが分かった。だが、ジークハルトが何も言わないのなら俺が口を出すわけにもいかないのでそのままゴライヤの話へと耳を傾ける。


「この後、その勝利をきっかけに首領はオーガの土地を次から次へと占領していったわ。オーガ内はきっと混乱していたのでしょうね。急に強くなったリザードマンの群勢と、主力の戦士が欠けたことによる再編で。」


「ふむ。つまり、リザードマンはオーガの混乱に漬け込んで一気にオーガに痛撃を与えたということじゃな?」


 ベッドの上で横になっているチサが相槌を打つ。


「ええ、この手腕が今の首領のすごいところなの。一瞬の隙を突いてこの大陸内でオーガの都以外全ての地を奪取したんだもの。」


「そこまでなら別に何も不都合なことなんて無いんじゃないか? オーガからすれば災難だが、リザードマンからすれば新たな土地が手に入るし、領土だって広がっていくのだろう?」


 俺は分からなかった。今の話だけを聞けば、リザードマンは一方的に勝ち続けているし不自由をする理由にもなっていないからだ。


「そうね。私も......いえ私たちリザードマン全員がそう思っていたわ。でもね、そんな甘い話じゃなかったの。ジークハルトなら分かるんじゃない?」


 ジークハルトはその問いに噛み締めていた口を開く。


「統治か。」


「そうね。今の首領はこう言ったわ。『オーガたちから得た土地の統治に資金と人手が必要だ。だから、少しの間力を貸してくれ』と。」


 俺はようやくこの話の本筋を理解する。


「なるほどな。オーガたちだってタダで土地を渡すはずが無いからな。なんせ楽に統治されてしまったら、それを足掛かりに更に深くまで攻められてしまう。だから、土地を統治しにくいように手を打ったと?」


 ゴライヤは俺の言葉に深く頷くとため息をついて言う。


「ご明察よ。オーガたちはその土地を荒らし、家々を取り壊してから私たちリザードマンへと引き渡したわ。よって技術者や戦える者たちは皆徴兵されたわ。オーガから奪った土地を整備するために。そのおかげで、私たちはまともに食料を集めることも、家や道路を直すことだってできなくなってしまったの。」


 そう言うとゴライヤは立ち上がりチサのベットに腰掛けている俺へと向き直る。


「一つお願いがあるのだけれどいいかしら?」


「なんだ?」


「今の話からわかると思うのだけれど......今この集落にはニードルウルフを捕獲できるほどの実力を持つ者がいないの。だからこの病室を貸す代わりに毎日百匹ニードルウルフを捕獲してくれないかしら?」


 ん? チサの治療はニードルウルフ百匹だったのに病室の確保でも百匹? 少し金額が法外すぎではないか?

 そう疑問に思うと案の定ジークハルトが口を開いていた。


「それはいくらなんでも高すぎではないでごわすか? 病室代なら、ニードルウルフ一匹が相場であろう?」


 ゴライヤはジークハルトの言葉に笑みを浮かべる。


「そうね。普通ならそうだわ。でもね、さっき話していて思い出したわ。貴方、オーガ族の英雄ジークハルトでしょう? そして見たこともない種族の子が二人。ここまで分かればいくらなんでも察するわ。匿うなら安いもんでしょう? それに治療もしてあげたしね。」


「くっ......。」


 ジークハルトは言葉に詰まる。

 バレているのか。やはりジークハルトはこの大陸では有名すぎるほどの戦士だったようだ。俺の本音としては、森に入って領域を使えば十分ほどでニードルウルフ百匹は確保できるから好条件と言ってもいい話だった。確かに相場の百倍は恐ろしいほどに高い気はするが、チサを助けてもらったことに比べれば安いものだった。


 だがここで疑問が生じる。


「いいのか? 俺はニードルウルフを毎日百匹支払うというのはそう難しいことじゃない。だが、俺たちを(かくま)うということは、それ相応のリスクがあるんじゃないのか? そんなことを一人で決めて大丈夫なのか?」


「ええ。大丈夫よ。なんせ私、村長の妻だから。」


「村長の妻!!?」


 俺はゴライヤが村長の妻だと聞いて思わず声が裏返る


「ええ。だから私が村長に話を通せば全て通るわ。それに、貴方たちを匿えばこの集落のリザードマンたちが飢えなくて済むと考えればバレた時のリスクなんてなんてことないわ。私が一人でやったことにすれば村のみんなは知らなかったで済むんだから。」


 俺はゴライヤの話を受けようと決める。ゴライヤの覚悟を聞いてだ。もしゴライヤの言葉が嘘で今俺たちがリザードマンの首領に突き出されても逃げ出すことはできる。チサに無理をさせることになるのは辛いが、監獄の警備から考えて捕まることは無いだろう。

 それに俺たちを匿ってくれるのならその程度の働きは安いものだった。その間チサの容態を見てもらえるという意味でも......。


「その話受けさせてもらう。」


「決まりね! なら明日からニードルウルフ百匹お願いできるかしら?」


「問題ない。」


 俺がそう言うと満足そうに笑いゴライヤは病室の入り口へと歩いてゆく。


「あ、そうそう。貴方たちの分のベッドもここへ運んでおくわ。大切な食料源だもの。丁重に扱わなきゃね。」


 その言葉に俺たちは顔を見合わせて苦笑いをする。そしてしばらくするとゴライヤがもう一つベッドを運んでくる。


 何故ひとつなのか?

 それは俺はチサと一緒に眠るからだ。そもそもチサの寝かされているベットはリザードマン用のもので、俺とチサが一緒に寝てもまだまだ余裕があったからだ。まあ流石にジークハルトが寝る余裕は無かったのだが。


 こうして俺は久々にチサと一緒に眠ることができたのだった。







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