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第140話 マンドラゴラと火山花

「次は森か」


 俺は森へと向かった分身たちへ意識を同化してゆく。


 森。そうあの巨大キノコの群れのようにも見えるあの森だ。この中にマンドラゴラという生き物がいるらしいが、問題が一つあった。


「根が人面ってどうやって見分けるんだ......?」


 そうなのだ。実はこの森、地面には無数と言って差し支えない程には草が生えていた。とは言うものの日照時間がほぼゼロと言っていいこの大陸で更に少しの光でさえキノコの傘によって遮られたこの場所では全てが褐色で、歩くのに支障が無いほどには(たけ)も低かった。


 とはいえこの大陸の素人である俺にマンドラゴラの葉を見分けるなんて真似は至難だった。

 手当たり次第に抜いていっても良いのだが、下手したら見つからない可能性だってあるし効率だって悪い。


 俺はクレボヤンスから受け取ったリストを読み返す。


 ニ、マンドラゴラの根 森の中に生える根が人面になっている生物。生きたまま連れ帰ること。


「ん? ちょっと待てよ? ()()()()()連れ帰る? もしかしてマンドラゴラって動くのか?」


 ならば......!

 俺は黒影切ごとコピーした分身に地面の草を刈り取るように黒・ジンを打たせる。


「黒・ジン」


 俺の分身の放った斬撃は、劣化版ながらも草木を切り裂きながら飛び、途中でぶつかった木に切り傷をつけて消える。


 数秒後ーー。

 なんと人面の根が空中へと打ち上がり始めたのだ。どうやら自身の葉を失って自分から出てきてくれたらしい。


「ラッキー!」


 俺は笑みを浮かべながらマンドラゴラを回収するが......そこには苦痛でその顔を恐ろしいほどに歪めたマンドラゴラがいた。


「マンドラゴラってこんなに怖い顔してるんだな......。そういえば生きたままって言ってたけど、これ死んでないよな? まさか葉を切り落としたくらいで死ぬなんて......。」


 だが、マンドラゴラはピクリとも動かず、更に少しずつ暗褐色の根が少しずつ炭のような灰褐色へと変わってゆき最後にはボロボロになって崩れてゆく......。


「おいおい嘘だろう......? つまり、葉を傷つけずに掘り出す必要があるってことか。」


 見渡せば他にも地面から飛び出したマンドラゴラは全てがボロボロになって崩れ落ちていた。


 このあたり一帯の草は全て刈り取ってしまったので俺は更に森の奥へとポイントを変えることにする。

 10分ほど分身を奥地へと走らせるとまるで森の中に穴が空いたかのようにポッカリと木が無い場所に出た。


「これは......!?」


 俺は自分の目の前に広がる光景を思わず否定したくなる。流石にここまで気持ち悪い光景はそう無いだろうと思えるほどだった。


 何せ生首が......否、マンドラゴラが笑顔で何匹も踊っていたのだから......。


 俺は分身を操り傷つけないように優しく抱え込むようにマンドラゴラを捕獲する。さっきまでの苦労がなんだったのかと思えるほどあっさりとマンドラゴラを捕獲した俺は、ー分身あたり一匹ずつ持たせて俺の元へと走らせるのだった。


 最後は火山か......。


 俺は火山へと向かった分身たちへと意識を同化させてゆく。火山、そこは普通であれば死地と言って差し支え無い場所だった。山の色合いは漆黒。暑さや溶岩で全てを焼かれたかのように。

 そして山頂から海へと向けてまるで川のようにマグマが海へと流れ続け、更には砲弾の様に海へと火山弾を発射し続けていた。

 高さとしては山頂が麓からでも分かるあたり俺の生まれ育った大陸にあるサルマイア山よりはかなり低いように思えたが。


「何故、大陸へ向かってあの火山弾は落ちないんだろうな?」


 俺は少し不思議に思う。だが、神が創った世界であるが故にこういうこともあるのだろうとそれ以上は考えないことにする。


 さて、ここで集めるのは......。


 三、火山花 ボルケーナ火山の溶岩地帯に咲く花、真っ白な花弁が特徴。


 もしかしてアレか?

 こんな簡単に見つかっていいのか?


 そう。火山花と思われる白い花々は、どういうわけかマグマで出来た川に沿うようにしてマグマの河口まで生えていた。

 俺は分身一体に取りに行かせる。


 だが......。


 なんと火山花を取りに行く途中で分身に火がつき燃え尽きてしまったのだ。

 どうやら火山花というやつはあのマグマの熱波に適応して外敵を寄せ付けないように進化したらしい。


「今度は見えてるのにたどり着く前にチェックメイトかよ......。」


 俺は目の前に広がる赤と白と黒のコントラストを眺めながら、対策を練る。あと火山花だけがあればチサを助けられるんだ!なんとかならないか?


 そう考える俺の分身の近くに十メートルはあろうかという巨大なネズミ......?が姿を現す。

 勿論、気配遮断を使った俺の分身には気付かなかったようだが。


 そのネズミは真っ直ぐに火山花へと近付いてゆく。


「ん? もしかしてあのデカネズミ、あの熱気に耐えられるのか!?」


 それが分かれば話は早かった。俺は分身を操り、巨大ネズミが戻ってくるのを待つ。

 そして、俺の分身が動ける場所まで戻ってきたネズミを分身で死角から一瞬で首を落として仕留めると、毛皮だけを剥ぎ取ってゆく。

 俺の想像通り、このネズミの毛皮は耐熱性能があったおかげで、なんとか火山花を摘み取ることに成功する。


 こうして俺は運良く現れたネズミのお陰でなんとか火山花を確保し、チサの元へと急ぐ。

 勿体無いとは思ったが、ネズミに関しては使い終わった毛皮も肉も全て火山に置いてきた。

 というのも俺の分身はストレージが使えないから手で持つしかなかった。そうなるとチサの治療のリミットに間に合わないが故に拾って帰るのを諦めたのだ。


 こうして俺は、なんとか時間内に三つの素材全てを手に入れることに成功したのだった。





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