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第113話 地獄の特訓を終えて

 深海でチサの猛特訓を受けること数ヶ月。


 俺は起きたら領域を使ってチサが丸呑みした深海のモンスターをエンドレスで討伐し続け、魔力が尽き領域が維持できなくなったら強制睡眠という地獄のようなスケジュールをこなしていた。

 数ヶ月といったのも、ステータスの表記がいつの間にか23歳になったことで気付いたわけで、正確な時間の感覚はなくなっていた。


 強制睡眠といえど、十分な睡眠がとれるわけではない。俺の睡眠時間は決まっており、ギュジットを護衛する際にチサがこっそり計測していた俺の魔力が完全に回復する3時間の睡眠でチサに叩き起こされることとなる。

 つまり、3時間の睡眠、起きてすぐ領域の発動、モンスターとの戦闘、倒したモンスターを狩って食べる、領域が維持できなくなったら強制的に睡眠......。もしさぼろうものなら俺は胃酸の海へと沈められるというまさに地獄のような日々だった。


 確かに無の大陸にいたとき1ヶ月の不眠を経験してはいる。だが、それとは違った厳しさがあった。チサがよく魔力不足で眠っているのだが、魔力が減ると、体力の有無にかかわらず、疲労感や、倦怠感を感じるのだ。

 いくら不死身といえども、死に至る一歩手前で押しとどまるだけで、十分な睡眠をとらねば行動で伴う疲労が消えることはないのだ。


 更に俺の不死身はこのような環境であっても、死に至るような病魔に侵されたり、精神が壊れることを許さない。チサもそれが分かっていたのだろう。俺はこの終わりの見えない強制特訓をやり遂げることに成功する。強制特訓の終わりごろ、俺はこの生活に順応しつつあった。


「ジ~ン~! ジ~ン! そろそろ起きるのじゃ!」


「ヒィ! 申し訳ありません! 領......。」


 俺はチサの言葉に反射的に反応して領域を発動するレベルになっていた。


「待て、待つのじゃ! ついに次の大陸が見えてきたのじゃ!」


「次の大陸?」


 俺は何か目指していたような気がするが、チサの言うことが理解できなかった。それよりももう少しなんだ。もう少しで何かがつかめそうなんだ


「何を寝ぼけたこと言うておる。これから、次の大陸へ行くのであろう?」


「チサ何を言ってるんだ? もうすぐ領域について何かがつかめそうなんだ! 今やめるわけにはいかないだろう?」


「領域!」


 俺はチサの言葉を無視して領域を発動する。だが、待てども待てども、一向にモンスターが現れる気配はなく俺の耳にはチサのため息だけが聞こえてくる。


「はああ......。ちとやりすぎたかのう。妾も自分の特訓で精一杯じゃったからのう。ジンも熱心にやっておったが故に大丈夫じゃと思うておったが、そういうわけでもなかったんじゃのう。妾もまだまだじゃな。少し上陸を遅らせて、甘やかしてやるとするかの。」



 俺はこの後、チサ曰く、元に戻るまで2週間かかったそうだ。これは俺自身の時間間隔が狂っていたので正確な時間間隔が分かっていなかったから仕方がない。

 どうやら俺はあの地獄を俺自身の強化だけに思考を切り替えたことによって乗り切ったのだ。

 おかげで領域の消費魔力が範囲によって150~200で調整できるようになっていた。とはいっても最小で俺を中心に首長竜を覆い隠すほどの広さで発動してしまうので、依然として発動範囲はかなり広いのだが。


「ジン、今回はすまなかったのじゃ。妾、自分のことで精一杯でジンにはちゃんと目が向いてなかったのじゃ。愛ゆえに鬼になりすぎていたのかもしれぬ。」


「気にするな。今回の特訓で俺はかなり領域を使いこなせるようになったわけだしな。だけど――次の時はもう少し優しくしてもらえると助かる。チサはどうだ?」


「そういってもらえると助かるの。じゃが、特訓の成果については妾は秘密なのじゃ! 披露する機会がきっと来るはずじゃからのう。その時に見せてやるので楽しみにしておくのじゃな。」


「チサって結構秘密主義なんだよなあ。岩の大会の闘技大会の時もそうだっただろう?」


「ふん。サプライズと言うんじゃな。妾は普段のジンも良いが、ジンを驚かすのもまた格別な楽しみなのじゃ。その時に褒めてもらうことにするかの。」


「なんか俺だけ褒めてもらって気が済まないんだが......。」


「ジン! 次の大陸の近くへ出るのじゃ! 上陸の準備じゃー!」


 俺はチサに特訓の成果を聞き出そうかと思うも、それを気取られたのだろう。チサの合図ととも俺の体を浮遊感が襲う。ここはチサの胃の中だ。今まではこんなことはなかったのだから、俺にこれ以上問い詰められないように敢えて一気に海面へと近づいたのだろう。ある意味チサの照れ隠しだったのかもしれない。俺はどこか釈然としないものを感じながらも、聞くのを諦める。代わりに、チサが特訓の成果を発揮する時が来たら、全力で誉めてやろうと。そう心に決めて。



 海面に着いたのだろう。俺を襲い続けていた浮遊感が急に消える。


「着いたのじゃ。ジン、外に出るが覚悟しておくのじゃぞ? 妾は暖かい場所に行きたいとは思うておったが、これは暖かいとかいうレベルでは言い表せぬかもしれぬのじゃ。」


 俺はチサに続いて、首長竜の背中から外へ出る。その瞬間、俺は急激に襲い来る熱気弾に吹き飛ばされることとなるのだった―。

次話から新大陸入ります〜!

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