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試合開始

 試合用のユニフォームに着替えた駒池こまいけの選手たちはコートに下りると、円陣を組んでから練習を始めた。ランニングし、準備体操を済ませてランニングシュートに入る。ベンチ入りしていない二十人ほどの選手たちはウォームアップの練習にさえ参加せずに、コート外に一列に並んで声出しに徹した。


「シュー! シュー! シュッ! シュー! シュー! シュッ!…」


 二週間前の大会を思い出させる独特の応援だ。ただ今日は練習試合ということもあって応援幕は吊り下げないし、体育館の気温を二度上昇させる駒池OB軍団もいない。それでも駒池と戦うというのは、これから獣と対戦するような緊張感になる。


 舜也しゅんやたち江清こうせいチームもウォームアップ練習に入っていたが、ほぼ全員が傍から見てもわかりやすいほど動きが固くなっていた。新人チームになって初めての練習試合の相手が駒池なのだから無理もない。

 

 最後の練習として各自自由のシュート練習を打っていたとき、沖さんが不意に相手コートの方へ走っていった。舜也が見ると、どうやら駒池の横岸よこぎし監督が手招きして呼んだみたいだ。話している内容までは聞こえないけども、横岸監督がなんと朗らかに笑いながら話しかけ、沖さんも気楽な表情で応じている。数十秒ほど話した後、沖さんが一礼して江清のコートに戻ってきた。すかさず舜也が尋ねにいく。


「沖さん、何話してたんですか?」


「ん? ああ、いろいろとな。今日はわざわざ来てくれありがとうとか、練習台にみたいに使って悪いなとか、進路先はもう決めているのか、とか」


「意外ですね~。そんな気遣いもできるんや、あの監督…」


「おいおい。お前あの人をどんな目で見てたんだよ。言っとくけどあの監督、他校の選手や引退したOBにはかなり優しいんだぜ。厳しいのはあくまで自分のチームの現役選手だけだ。じゃなきゃ卒業したOBが市内大会レベルで応援に駆けつけるわけないだろ」


 それもそうか、と舜也は思った。しかしそれでも試合中の横岸監督は鬼より怖い。見てるこっちがすくんでしまうほどに。


 両チームとも十分なアップが終わり、ベンチに下がって作戦ミーティングに移った。オフィシャルも得点板も準備は整っている。江清ベンチでは九間くま先生からスタメンが発表された。


おき土居どい冷前れいぜん三上みかみ不亜ふあ。まずはこの五人で行く。序盤はマンツーマンで様子をうかがい、相手の荒橋あらばしが中に切り込んできたらすぐにヘルプに行けるように警戒しておけ。声の掛け合いを忘れるな」


 三上先輩以外、大会のときと同じスタメンメンバーだ。舜也がベンチに座り、スタメン選手五人がそれぞれマークする相手を決めていたとき、駒池選手が例によって雄たけびを上げ始めた。


「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!…」


 以前聞いたときは二階のギャラリーだったが、こうしてベンチに座りながら聞くと迫力が五割り増しだった。和太鼓の生演奏のように、直接胸の中の心臓を叩いてくるような振動が伝わってくる。しばらくしてコートの中央に十人が対面した。審判は駒池側のコーチの男性だ。挨拶が終わり、試合が始まる。


「ジャンプだ健吾けんご! ジャンプだ健吾けんご! …」


 江清一年生が大声で応援を始めた。審判の手からボールが放たれ、土居が制して三上へパスを送る。しかし相手も軌道を読んでいて、三上の手に渡った直後、駒池の選手がボールをはたき落とした。フリーになったボールは近くにいた駒池選手に渡る。


 まずは駒池が先攻だ。


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