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フォワード、センター

 一方、広宣ひろのぶが割り当てたれたフォワードは最多人数の二十一人にのぼった。バスケ部人数の三分の二がフォワードのポジションということになる。リーダーは不亜ふあ先輩だ。


「フォワードの仕事は簡単だ。点を取りゃいい。そのためにシュートはどっからでも打てるようになんなきゃなんねえし、ドリブルで相手のゴールまで切り込んだり、センターの代わりにポストプレイすることもありうる。つまり全種類の攻撃をできるようになれって話だ」


 不亜先輩が一年生を睨みつけるようして言った。


「つったって得意不得意はあるだろう。俺だってスリーはあんまし打たねえ。お前たち一年に言えるのは、まず自分の得意技を見つけて武器にしろってことだ。これからフォワードの基本として全てのポジションのパターンで一対一をやる。意味わかるか? ゴールに近くない平面コートでのワンオンワン、相手コートのミドルエリア内に入ってからのワンオンワン、センターを想定してのポストプレイのワンオンワン。全部だ。その練習の中で自分の武器を見つけるのと同時にディフェンスも上達させろ」


 一旦言葉を切る。


「フォワードは点を取るのが仕事ってのは相手チームも同じだ。相手のエースをマークすることだってよくある。どこからも得点を決めるエースになるのと同じく、相手のエースを止められるようになれ。あとは自分で考えろ。俺は細かいことは聞かれないと教えねえからな」


 フォワード陣は三種に別れてワンオンワンをこなしていく。


 センターのポジションでは土居どいがリーダーだ。身長の高さが求められるこのポジションは、土居と冷前れいぜんの他に一年生の高角春吉たかすみはるきちとETの四人しかいない。


「センターはおいしい」


 土居が腕を組み、鼻息出しながら宣言した。


「基本的に一番得点を決めるポジションだからだ。一試合に二十点も取れば女の子からモテモテになること間違いない」


 ならなんで先輩に彼女がいないんですか、と春吉とETは思ったが、口には出さない。


「だからこそ責任が重いポジションとも言えるけどな。練習試合なんかではだいたいどこもセンターが一番怒られてる。それはともかく、俺らの仕事は二つだ。ゴール下で得点を決めることとリバウンドを取ること。とにかくこの二つの仕事に専門家になれ。細かいドリブルなんかはガードに任せろ。つーわけで、今からやるのはポストプレイだ」


 ゴールに近い場所で、まずは土居さんと春吉の一対一が始まった。専攻は春吉。ゴールに背を向け、パスをもらったというところからスタートする。


「パスを空中でキャッチするときは必ず両足で着地しろよ! もし片方が先に地面に着いたらその足がピボットフットになる。ピボットフットを軸にして動かなきゃなんねえから攻撃の手が相手に読まれやすくなっちまうんだ。ほら、来い!」


 春吉はこれまでに見た土居の動きを真似て、左に首を振ってフェイントを入れ、右側にターンしてゴールに正面から向き直り、シュートした。途端に土居が素早くゴールを振り返り、自分の背中を春吉に密着させる。シュートはリングに当たって外れ、土居が跳躍してリバウンドを取った。


「今の動き、わかったか?」


 春吉にパスを出しながら土居が言った。


「相手がシュートを打ったら、リングの傍に近寄らせないように速攻で体を張って止める。これがスクリーンアウトだ。おしくら饅頭の要領で背中越しに相手を押せばいい、って俺は先輩から言われたんだが、おしくら饅頭ってしたことねえんだよな。お前、ある?」


「ないっす」


「だよな。ま、要するに背中以外をくっつけんなってことだ。腕で押したり肘で突いたりするとファウルになる。次はシュート打ったら積極的にリバウンド取りに来いよ」


「はい!」


 春吉は全身の力をこめて土居に押し合いを挑む。一方で、ETと冷前先輩のポストプレイは常に止まってばかりだった。何度やってもETがトラベリングしたりボールを手からすべり落としたりして自滅してしまうのだ。それでも冷前先輩は一度も怒ることなく、根気よく丁寧に動きを教えていった。


 ポジション別の練習は、日によってガードの選手がフォワード練習に参加したり、身長のあるフォワードがセンター練習へ参加したりと、みな一通りのポジションをローテーションで体験して、一週間もすると各自自分の適性にあったポジションに専念することになった。ポジションによって動きや役割が変わることをみんなわきまえてくるので、全体練習の質も向上していく。


 目指すは駒池こまいけ戦での勝利。


 新チームの練習に慣れてくると、自然と練習中や練習後の中で対駒池戦の戦略を話し出すようになる。そんな中、期末テスト前になった七月二週目の金曜日に九間先生が衝撃の言葉を告げた。


「明後日、駒池と練習試合します」


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