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身長の伸ばし方

「こういう地味な練習は誰だってキツイ。しかも毎日やらないと効果ないうえに、効果が出たかどうかもわかりにくい。だから大多数のやつは嫌がるんだ。だからこそ、こういった練習を人一倍やれば、一気に大きな差が開く。身体能力の差ってのは誤魔化しがきかないからな」


「わかります。おきさんはいつからこの練習をやってるんですか?」


「んー…一年の夏前ぐらいに始めたな。さすがに雨の日や試合の一週間前からはやってないけど、それ以外は続けてるよ。いろいろ改良も重ねてる」


「他の先輩たちは?」


「何回か誘ったけど、結局みんな続かないんだよな。まあ塾とかの用事で来れない奴もいる。健吾けんごとかそうだな」


土居どいさんが…塾?」


「ああ。でもテストは悪い。一回、英語のテストがひどかったときなんか、俺はフランス語と相性がいいんだとか訳のわからないこと言ってたしな」


 三人は笑いながら坂を下り、カバンを置いてるあるところまで来て学ランに着替え始めた。


「このフットワークメニューも沖さんが考えたんですよね?」


「そうだよ」


「すごいですね。やってることはもう実質、監督じゃないですか」


「まあ俺の場合、将来スポーツトレーナー目指しているから」


「スポーツトレーナーですか」


 どうりで的確な練習になっているわけだ。舜也しゅんやは長年の疑問を聞いてみた。

「身長ってどうやったら伸びるんですか?」


「身長はなあ。残念ながら親の遺伝によるところが大きいんだ。両親は背高いほう?」


「どっちも平均より低いです」


「なら高望みはできないな。とはいえ少しでも身長を伸ばしたいんだったら、三つ助言がある。一つは栄養を偏りなく取ること」


「知ってます! カルシウムを取ればいいんですよね?」


「いや、それはよくある誤解だ。確かにカルシウムは骨の形成に不可欠だけど、成長期に大量に飲めば確実に骨が長く伸びるなんてことはない。そもそもカルシウムに加えてマグネシウムも取らないとカルシウムの吸収率って良くならないしな。繰り返すけど、バランスよく栄養取ることが大事だ。偏食とか最悪だぞ? 何か嫌いな食べ物ってあるか?」


「嫌いな食べ物ですか…」


「ああ、ないか?」

 舜也は目を泳がせてから横に逸らし、小さく言った。


「ピ、ピーマンが…嫌いです…」


 キャプテンと広宣ひろのぶが同時に笑った。舜也が恥ずかしくなって怒る。


「笑わんといてください! あの苦さを凝縮した味が駄目なんですよ! 毒よりもマズイじゃないですか!」


「いや~かわいいな、お前」

 笑ってからキャプテンが続けた。


「アレルギーじゃないなら身長のためにと思って食べるんだな。食事も練習のうちだ。そうそう、食事といえば牛乳を飲むより肉を食べたほうがよほど背を伸ばす効果はあるぞ。知っているか? 実は江戸時代の頃の人間って戦国時代よりも平均身長が小さくなっているんだ。理由は宗教上の理由から肉食を控えるようになったためと言われている。それだけじゃない。戦後から今まで日本人の平均身長は右肩上がりで伸びてきているが、それは間違いなく食の欧米化の影響なんだ。好き嫌いせず肉を多めに取ってみるといい」


「努力します。それで二つ目の秘訣は?」


「早く寝ること。身長を伸ばすのは成長ホルモンで、この成長ホルモンってのは夜の十二時から夜中の二時までが一番多く分泌される。だからできるだけ早く寝て、間違っても夜更かしはしない」


「はよ寝ます。最後の三つめは?」


「朝起きたときベッドに寝た状態のまま十秒ぐらい背伸びをすること。ただしこれに関しては科学的根拠がない。ただ、二年の冷前渡れいぜんわたるが去年の夏に毎日実践していたら、あいつ、夏だけで九センチも身長が伸びたんだ。俺もその話を聞いて試してから二センチ伸びている。寝起きの刺激が骨の成長を促しているのかもしれないな。あくまで個人の感想だが、やる価値はあると勧める」


「肉を食って、早寝して、寝起きに背伸び、ですね? わかりました! 今日からやります!」


「ん。継続に成果ありだぜ」


 すでに日は暮れ、気温も落ちて肌寒くなってきている。三人は整理体操してから帰途についた。


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