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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題とその他諸々/第3節 ゼーレ族の問題(シェミー編とも言う)
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87 帰ると決意してから帰るまで長すぎ

本日2回目の更新です。

「あ、エイリー様!」


 私が逃げようとしたところをヴィクターに呼び止められた。その後ろには、ヴィクターの仲間たちが並んでいる。


「何?」


 こっちは急いでいるんだけど。早く帰りたいんだけど。

 あからさまにイライラした態度をとって、ヴィクターとその仲間たちに接することにする。


「「ありがとうございました!」」


 声を揃えて感謝を告げるので、驚いた。迫力があった。

 あー、そう言えばまだお礼言われてなかったもんなぁ。

 ……なんか、より私をキラキラした目で見るようになったのは気のせいだろうか? 気のせいでありたい。


「あーはいはい。どーいたしまして。じゃ、私は先帰るから。後のことはファースたちにでも聞いて」

「わかりました。……あの、エイリー様」

「何?」


 お礼言って終わりだと思ってたわ。まだなんかあるの? ギルドへの勧誘だけはやめてほしい、切実に。


「シェミー救出しに行くの、俺たちも連れて行ってもらえませんか?」

「私たちのせいで、シェミーが連れ去られちゃたので、責任が取りたいんです!」


 どっちかというと、シェミーを連れ去るためにヴィクターの仲間を拉致った、という表現の方が正しいんだけど。彼らは被害者だ。


 まあ、救出作戦に人は多い方がいい。向こうはなんせ組織でかかってくるのだ。私ひとりでも行けるけど、万が一のことがあった場合仲間はいた方がいい。

 ヴィクターたちは、そこそこレベルが高いので、安心して連れて行くことができる。

 油断やトラブルがない限り、彼らは強いのだ。私は失敗してるとこしか見たことないけど。


「いいよ。だったらファースたちと打ち合わせしといて」

「わかりました!」

「早く王都に帰ってこないと置いてくからね」

「わかってます!」

「じゃあ私は一足先に」

「はい、本当にありがとうございました!」


 と、感じでぱっぱと会話を終わらせ、私は森へ向かった。

 召喚魔法を使うためだ。村の真ん中でやって大きな召喚獣が来ても困るからね。家を破壊したら大惨事だ。

 私も周りの迷惑くらい考えられるのだ、うん。


 こうして私は、森の開けた場所で召喚獣(前と同じペガサス)を召喚し、王都へ帰ったのだった。



 * * *



 取り敢えず、私は王都に帰ってから冒険者省へ向かった。

 本当は王妃様のところに直行したかったかったけど、生憎ファースから何の連絡もなかった。

 一国の王妃様のところへアポなしで訪ねるのは流石の私も気がひける。


 時間をつぶすため、私はロワイエさんにヴィクターたちの無事を報告することにした。

 まあ、ロワイエさんに報告するのも、大事なんだけどね? そもそもヴィクターを助けに行くことが今回の目的だったのだ。

 シェミーはその過程で誘拐されてしまったので……、ああもうめんどくさいな。


 イベント発生する頻度多すぎ! 私は元悪役令嬢だよ?! なんでこんな勇者イベントみたいなのが発生してるのさ?!

 不満しかない。勇者イベントなんていらない。


 そんなことを考えていると、冒険者省に着いた。

 中に入ると、いつものようにざわざわと噂をされる。なんかもう慣れた。慣れって怖いよね。


 噂を聞き流しながら、私は受付嬢さんのところへ向かおうとした時、受付嬢さんが私の方を見て目を見開いた。

 気づくの早っ!


 受付嬢さんは、私を見て『エイリー様っ!』と叫びそうだったが、そこは流石の受付嬢。しっかりと自重した。

 そんな受付嬢さんを待たせるわけにはいかなかったので、私は早足で受付まで行く。


「エイリー様、おかえりなさいませ!」

「あ、うんただいま」


 なんだこの会話。新婚さんみたい。


「それで、どうでしたか?」

「ああ、かなり面倒なことになっててね。というか現在進行形でなっててね」

「じゃあ、ヴィクターさんたちは……!」

「ああいや、ヴィクターを含めた仲間たちは無事だよ。仲間の何人かは誘拐されてたけど、私が助けたよ」

「そうなんですか、良かったです」


 受付嬢はほっとした顔をする。

 冒険者が怪我をしたり、命を落としたり、行方不明になったり、そんなことは日常茶飯事だし、受付嬢もそれに慣れている。

 だけど、心配なものは心配だし、無事だと安心するし、嬉しい。だって、人間だもの。


「詳しいこと、ロワイエさんに話したいんだけど、ロワイエさん、いる?」

「はい、いつもの部屋で待っています」

「わかった。詳しいことは、ロワイエさんに聞いて」

「はい。お疲れ様でした。報酬は後ほどお渡しいたします」

「ありがとう」


 受付嬢さん、仕事ができるなぁ。可愛いし、しっかりしてるし、面白いし、最強じゃね?

 こういう子がモテるんだろうなぁ。



 * * *



 私はいつもの部屋の扉をガチャリと開けた。


「…………」


 そして、パタリと扉を閉める。

 幻覚だ、幻覚に決まってる。私、最近働きすぎて疲れてるんだよ。

 王妃様がこんなところにいるはずないって!


 …………こんなこと前にもあったなぁ? そう何回も起こることじゃないよねっ!


 それと同時くらいに、ファースから連絡精霊(アンゲロス)が届いた。


『母上から、会うことの了承をいただいた。直接冒険者省に出向くそうだ』


 …………この王族たち、皆フットワークが軽すぎだよおおおお。

次回は不思議な面子でお話し合いです。

明日も複数回投稿します。


平日の更新が難しいので、土日にまとめてってなることが今後増えると思います。

ご了承ください。

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