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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題とその他諸々/第3節 ゼーレ族の問題(シェミー編とも言う)
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80 信頼っていいもんだよね

 私たちは村で部屋を借り、そこで落ち着いて話をすることにした。と言っても、私は話を聞くだけである。話をするのは、ヴィクターたちだ。


「…………」

「…………」


 そう受け身でいたら、一向に話が進む気配がしない。ヴィクターたちも、私が口を開くのを待っているようだ。

 確かに、私が質問した方が話が進めやすいのか? まあ、このまま黙ってても埒があかないので、私から話すことにした。


「で? どうしてあんなに重症だったの? まさか、上級魔物に負けたわけじゃないよね?」

「はい、上級魔物は思ったよりも楽勝でした」

「そ、良かったじゃん。じゃあ、どうしてあんな悲惨な状態になったのよ?」


 楽勝に勝てたなら、重症なんて負うはずない。どんな厄介事に巻き込まれたんだよ。


「魔物を倒したあとにですね、森を不自然な霧が覆ったんです」

「霧?」

「人為的に発生させたと思われる、霧です」


 霧、ねぇ。嫌な予感しかしないよね、それ。


「それで?」

「その瞬間、何者かの襲撃に遭いまして、あの有様です。……そして、セオ、シエナ、アメリアは攫われてしまったんです」


 えーと、確かヴィクターの仲間の子だよね。まあまあ強い子たち。確か、弓使い君と格闘家ちゃんと闇魔法ちゃん、だったはず。記憶がぼんやりしてるなぁ。


「で、『仲間を返して欲しければ、踊る戦乙女(ヴァルキリー)・エイリーを連れてこい』とでも言われたの?」

「その通りです」


 こくりと、ヴィクターは頷いた。

 てか、ヴィクターたちをあんなにコテンパンにできるって、かなりレベルが高いんだな。霧、というアドバンテージがあるとはいえ、たいしたものだ。


「それで? 私は何処に行けばいいの?」

「え、行ってもらえるんですか?!」


 何故かヴィクターが驚きの声を上げる。


「当たり前でしょ。そもそもあんたが連絡精霊(アンゲロス)を使って、私を呼び出したんじゃん」

「それは……、相手側に要求されたってのもあるんですけど、助けてくれるのはエイリー様かなぁって、思って……、いや、何でもないです、忘れてください」

「……まさか本当に私が来るとは思ってなかった?」

「はい、正直なところ……。俺、なんかうざがられてましたし……」


 あー。確かに、ヴィクターはうざい。私の知ってる中(そんなにいないだろ、というツッコミは置いといて)で、一番うざい。

 でも、嫌いではない。許せるうざさだ。だから、助けたいと思った。


「来るに決まってるでしょ。冒険者省からの依頼なんだし。依頼は基本的に断らないよ」

「あ、確かに、そうですよね……」


 本人に、本当のことを言うのはなんか癪だったので、私はうまくはぐらかすつもりだった。ヴィクターは基本的に単純なので、何の問題もなかったはずだった。


「もう、エイリー。照れちゃって。素直になりなさいよ」

「ヴィクター、これでもエイリーは君の姿が見えなくて本当に心配していたんだぞ」

連絡精霊(アンゲロス)の内容を聞いた時も、大分焦ってたよなぁ」


 と、グリー、ファース、レノがニヤニヤしながら、口々に言った。ここからの流れ弾は想定してなかったっ!

 本当にこいつら、とことん邪魔してくるよねっ! 私になんか恨みでもあるの?!


「な、なんでもいいでしょっ!」

「赤くなっちゃって、可愛いわねぇ」


 くすくすと、グリーが笑ってくる。

 むむむむむ、このままだと完全に彼らのペースだ。ここは、強引にでも話題を変えるしかない。


「こほん。じゃあ、私は森の廃屋に行けばいいのね? ヴィクター、場所はわかる?」

「なんとなくですが、わかります」


 まあ、わかんなくても、便利なマップというものがあるからね。ぶっちゃけ場所がわからなくても、探しながら進めるはず。


「それで十分よ。私とヴィクターだけで行きましょ。病み上がりで悪いけど、よろしくね」


 場所がなんとなく分かれば、辿り着くのは早くなるだろう。ヴィクターの仲間が無事でいるとは限らないしね。


「俺たちは?」

「留守番」


 ファースが質問に私は簡潔に答える。


「どうしてだ?」


 どうしてって言われてもねぇ……。皆のこと守れる保障はないし、そもそも呼ばれてるのは私だけだし。呼んでない奴連れて行って、相手の機嫌を損ねてもねぇ……。


「この村が襲われるかもしれないでしょ。その時のために待機してて欲しい。それに、万が一、いや絶対にありえないとは思うんだけどさ、私が帰ってこなかった時のための連絡係として残ってて欲しいの」

「…そういうことなら」

「また、頼られてないと思った?」

「ああ」


 まあ、半分くらいは頼りない部分はあるけどね。ファースたちのことを信頼してないわけではない。信頼してるからこそ、こういう役目を任せるのだ。


「そんなわけないでしょ。だから、よろしくね」

「気をつけてな」

「言われなくても」


 こうして、私とヴィクターは、ヴィクターの仲間を助け出すために、森へ向かった。




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