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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題とその他諸々/第3節 ゼーレ族の問題(シェミー編とも言う)
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79 見当たらないヴィクター

お待たせしました。

続きの更新です。

「……てなわけ」


 私は、ファースたちにヴィクターのことを話し終えた。


「いや、全然単純じゃないじゃん」


 ファースからよく分からないツッコミが入る。


「そう?」


 まあ、なんか余計なことは紛れていたかもしれないけど、割と単純じゃない?


「ねえ、1番気になること聞けてないわ」

「何?」

「どうして、ヴィクターはエイリーに強く当たってたのよ?」

「ああ。……実は私もよく分かってないんだよねぇ」

「「「はあ?!」」」


 盛大に皆の口から驚きの声が漏れる。だよね、そういう反応になるよね。


「なんか、改心した(?)ヴィクターに『聞かないでください。若気の至りです。恥ずかしいので聞かないでください』って毎度毎度言われたから、諦めたよ」

「エイリーが諦めるなんて珍しいな」

「珍しい言うな。……私だってしつこく聞いたよ。でも誰も教えてくれないんだもん」


 もう諦めるしかなかったんだよ。別に、そんなに興味もなかったし。


「よっぽど恥ずかしい理由だったんだろうなぁ」


 レノが面白そうに言った。


「まあ、あの頃のヴィクターは、仲間にはすんごく優しかったけど、それ以外にはきつかったんだよね。そんな理由だとは思ってるけど」

「成程」

「私が助けた後は、そんなことなくなって、本当にいい人になったんだよ」


 今思えば、やばいなヴィクター。成長というか、変わったというかとにかく別人のようだなぁ。


「……それにしてもヴィクター、いないな」

「それね、どこ行ったんだよ。呼び出したのそっちなのに」


 ファースの呟きに、私はヴィクターに対する文句を言う。


「ヴィクターにも、事情があるんじゃないかしら?」

「それでもねぇ」


 とりあえず、私たちは村を歩いてヴィクターの行方を確かめることにした。村人にも話を聞くが、“まだ帰ってきていない”、と口を揃えて言った。


 え……、まさか死んじゃった? 連絡精霊(アンゲロス)は遺書だったの…?

 いやいや、ヴィクターだよ? あんなんでも、レベルは高いのに……。死ぬわけないよね……?

 時間が経過するごとに、不安ばかりが募っていく。そんな表情をしていたのだろうか、


「大丈夫だ、エイリー」

「ええ、お兄様の言う通りだわ。エイリーが信じるヴィクターがそんな簡単に死ぬわけないじゃない」

「こういう奴は、図太く生きてるもんなんだよ。案外どっかでけろっとしてるさ」


 と、それぞれが言葉をかけてくれる。


 情けないなぁ、私。ちょっと姿が見えないだけで、こんなに不安になるなんて。

 エイリーになってから親しい人をあまり作らなかったから、失うのには慣れてないみたいだ。本当に情けない。


 ぱんぱん、と頬を強く叩いて気合いを入れる。絶対に、ヴィクターを見つけ出してやる!


「見つけたら、一発殴ってやるんだ!!」

「それでこそエイリーだ」


 私の言葉に、レノが愉快そうに言う。


「……それでいいのかしら?」

「……エイリーらしいといえばエイリーらしいが……」


 他の2人は何やらぶつぶつ言っているが、気にしたら負けだ。


「それで、エイリーこの後どうするの?」


 一通り村を探し終えたので、グリーがそんな質問をしてくる。


「とりあえず、森に行ってみようか? 村にいないってことは、森にいる可能性が高いだろうし」

「そうだな」


 そうして、私たちは森に向かうことにし、村の出口を目指した。

 すると。


「た、大変ですっ! は、早く治療を……!」

「く、薬を持ってくるんだ!」


 村の出口付近が、何やら騒がしかった。


 ――――まさかっ!?


 そんな考えが浮かぶのと同時に走り出していた。

 村の人の様子だと、重症そうだ。

 ヴィクターだよね、ヴィクターだよね?! 死んでるとかないよね?


「ち、治療ができる者はいないのかっ!」

「この村にはこんな大怪我を治せる者などいません……!」


 ざわざわとしている、人だかりの間を潜り抜け、私は倒れている怪我人に近寄る。


 そこには、身体中傷と血だらけのヴィクターと、ヴィクターの仲間がいた。確か、片手剣ちゃんと縄使い君だ。

 どうして、こんなことに……。

 いや、考えるのは後だ。まずは治療をしないと。


「下がって、邪魔」

「き、君は?」

「この人たちを治療するから、下がって」

「な、治せるんですか?!」

「勿論」


 村人とそんな会話をしながら、私はクラウソラスを抜く。よろしくね、相棒。

 そして、私は深呼吸をすると、呪文を唄う。


「癒せ、癒せ、癒せ。我は願う、癒しを願う。我は祈る、回復を祈る。命が尽きるのはまだ早い。最期を迎えるのはまだ早い。癒せ、癒せ、癒せっ!」


 最大級の回復魔法。これで、ヴィクターたちは元通りになるはずだ。

 優しい光が、ヴィクターたちを包み込む。その光は、血を落とし、傷をふさぎ、綺麗な状態へと戻る。


「……っん?」


 そうして、しばらくしないうちにヴィクターたちの意識が戻った。よし、成功したみたいだ。


「ヴィクター、私のことが分かる?」

「……えーと、ええええ、踊る戦乙女(ヴァルキリー)様?!」

「だから、戦乙女ヴァルキリーって呼ぶなって言ってるでしょ」


 いつものヴィクターだ。

 そんなヴィクターの様子を見て、少し安心したのは内緒だ。


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