79 見当たらないヴィクター
お待たせしました。
続きの更新です。
「……てなわけ」
私は、ファースたちにヴィクターのことを話し終えた。
「いや、全然単純じゃないじゃん」
ファースからよく分からないツッコミが入る。
「そう?」
まあ、なんか余計なことは紛れていたかもしれないけど、割と単純じゃない?
「ねえ、1番気になること聞けてないわ」
「何?」
「どうして、ヴィクターはエイリーに強く当たってたのよ?」
「ああ。……実は私もよく分かってないんだよねぇ」
「「「はあ?!」」」
盛大に皆の口から驚きの声が漏れる。だよね、そういう反応になるよね。
「なんか、改心した(?)ヴィクターに『聞かないでください。若気の至りです。恥ずかしいので聞かないでください』って毎度毎度言われたから、諦めたよ」
「エイリーが諦めるなんて珍しいな」
「珍しい言うな。……私だってしつこく聞いたよ。でも誰も教えてくれないんだもん」
もう諦めるしかなかったんだよ。別に、そんなに興味もなかったし。
「よっぽど恥ずかしい理由だったんだろうなぁ」
レノが面白そうに言った。
「まあ、あの頃のヴィクターは、仲間にはすんごく優しかったけど、それ以外にはきつかったんだよね。そんな理由だとは思ってるけど」
「成程」
「私が助けた後は、そんなことなくなって、本当にいい人になったんだよ」
今思えば、やばいなヴィクター。成長というか、変わったというかとにかく別人のようだなぁ。
「……それにしてもヴィクター、いないな」
「それね、どこ行ったんだよ。呼び出したのそっちなのに」
ファースの呟きに、私はヴィクターに対する文句を言う。
「ヴィクターにも、事情があるんじゃないかしら?」
「それでもねぇ」
とりあえず、私たちは村を歩いてヴィクターの行方を確かめることにした。村人にも話を聞くが、“まだ帰ってきていない”、と口を揃えて言った。
え……、まさか死んじゃった? 連絡精霊は遺書だったの…?
いやいや、ヴィクターだよ? あんなんでも、レベルは高いのに……。死ぬわけないよね……?
時間が経過するごとに、不安ばかりが募っていく。そんな表情をしていたのだろうか、
「大丈夫だ、エイリー」
「ええ、お兄様の言う通りだわ。エイリーが信じるヴィクターがそんな簡単に死ぬわけないじゃない」
「こういう奴は、図太く生きてるもんなんだよ。案外どっかでけろっとしてるさ」
と、それぞれが言葉をかけてくれる。
情けないなぁ、私。ちょっと姿が見えないだけで、こんなに不安になるなんて。
エイリーになってから親しい人をあまり作らなかったから、失うのには慣れてないみたいだ。本当に情けない。
ぱんぱん、と頬を強く叩いて気合いを入れる。絶対に、ヴィクターを見つけ出してやる!
「見つけたら、一発殴ってやるんだ!!」
「それでこそエイリーだ」
私の言葉に、レノが愉快そうに言う。
「……それでいいのかしら?」
「……エイリーらしいといえばエイリーらしいが……」
他の2人は何やらぶつぶつ言っているが、気にしたら負けだ。
「それで、エイリーこの後どうするの?」
一通り村を探し終えたので、グリーがそんな質問をしてくる。
「とりあえず、森に行ってみようか? 村にいないってことは、森にいる可能性が高いだろうし」
「そうだな」
そうして、私たちは森に向かうことにし、村の出口を目指した。
すると。
「た、大変ですっ! は、早く治療を……!」
「く、薬を持ってくるんだ!」
村の出口付近が、何やら騒がしかった。
――――まさかっ!?
そんな考えが浮かぶのと同時に走り出していた。
村の人の様子だと、重症そうだ。
ヴィクターだよね、ヴィクターだよね?! 死んでるとかないよね?
「ち、治療ができる者はいないのかっ!」
「この村にはこんな大怪我を治せる者などいません……!」
ざわざわとしている、人だかりの間を潜り抜け、私は倒れている怪我人に近寄る。
そこには、身体中傷と血だらけのヴィクターと、ヴィクターの仲間がいた。確か、片手剣ちゃんと縄使い君だ。
どうして、こんなことに……。
いや、考えるのは後だ。まずは治療をしないと。
「下がって、邪魔」
「き、君は?」
「この人たちを治療するから、下がって」
「な、治せるんですか?!」
「勿論」
村人とそんな会話をしながら、私はクラウソラスを抜く。よろしくね、相棒。
そして、私は深呼吸をすると、呪文を唄う。
「癒せ、癒せ、癒せ。我は願う、癒しを願う。我は祈る、回復を祈る。命が尽きるのはまだ早い。最期を迎えるのはまだ早い。癒せ、癒せ、癒せっ!」
最大級の回復魔法。これで、ヴィクターたちは元通りになるはずだ。
優しい光が、ヴィクターたちを包み込む。その光は、血を落とし、傷をふさぎ、綺麗な状態へと戻る。
「……っん?」
そうして、しばらくしないうちにヴィクターたちの意識が戻った。よし、成功したみたいだ。
「ヴィクター、私のことが分かる?」
「……えーと、ええええ、踊る戦乙女様?!」
「だから、戦乙女って呼ぶなって言ってるでしょ」
いつものヴィクターだ。
そんなヴィクターの様子を見て、少し安心したのは内緒だ。




