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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題とその他諸々/第3節 ゼーレ族の問題(シェミー編とも言う)
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76 英雄さん、依頼を受ける

2話目。

 その後、私は依頼の内容を達成し、再び冒険者省に戻ってきた。

 まだお昼を少し過ぎたくらいだ。今日は割と早く終わったなぁ……。


「あ、お疲れ様です、エイリー様」

「お疲れ様ー。依頼終わったよ」


 そんな感じで、いつも通り受付嬢と挨拶を交わす。


「早かったですね」

「そうだね。今日はいつも以上にあっさり片付けたからね」


 誰かさんからいただいたストレスを発散するために、力をセーブしなかったからなぁ……。ヴィクターに似てる魔物いたんだよねぇ。

 そんな私の考えを読み取ったのか、受付嬢は苦笑いを返してくれる。


「こちらが依頼の報酬になります」


 そう言って、受付嬢が銀貨を20枚差し出してくる。


「ありがとう……って多くない?」


 確か、今回の依頼は銀貨10枚だったはずだ。なんで倍になってるんだ? ボーナスか? いやいや、冒険者にボーナスなんて制度は存在しない。

 割とシビアな世界なんだよなぁ、冒険者って。


「これからエイリー様に冒険者省から依頼をします。引き受けてくださいますか?」


 真剣な表情で、受付嬢が言ってくる。

 そういうことね。そういうことは、割とあることだとわかってきたので、驚かない。


「内容は?」


 銀貨10枚出してくるということは、割と大きめな仕事なんだろう。まあ、私が受けている依頼は銀貨10枚以上のもの多いけどね。余り物が押し付けられてるので、私。


「ヴィクターさんたちの補助です」

「はあ?」


 思わず心の声をそのまま出す。

 嫌とかじゃなくて(嫌だけど)、ヴィクターたちも性格はあれだけど、そこそこは強いのだ。私の補助なんていらないはずだ。


「それがですね、不相応な依頼を受けやがりまして」

「あー、余り物のクソ難易度高いやつ?」


 冒険者省に押し付けられて、私がこつこつ消費してるやつ。

 というか、受付嬢さん『受けやがりまして』って。口が悪くなってますよ~。


「そうです。なんか、ヴィクターさんたち、ムキになってしまいまして、受けるって聞かなかったんですよ。冒険者の意思はなるべく尊重したいので、承諾しましたが」

「粘れよ」

「不干渉を貫く、それが冒険者省ですので」


 ……私にはかなり干渉している気がしてるのだが。気のせいなんだろう、きっと。


「で? 死にそうなの?」

「はい。間違いなく」


 受付嬢、即答。

 まじかよ、もっと考えろよ、命大事にしろよ。なんだかんだ言って、命が一番大事なんだよ!

 はあああ。と私は盛大な溜息を吐き、


「私は何をすればいいの? 先回りして、依頼完了させちゃえばいいの?」


 と、尋ねる。人が死ぬのはあまり好きじゃないので、頑張るしかないじゃないか。

 いくらうざったるいヴィクターたちでも、死んだら胸が痛む。


「それはダメです。あくまで先に依頼を受けたのはヴィクターさんたちなので」

「じゃあ私は何をしろって?」

「ヴィクターさんたちのパーティに紛れ込んで、ピンチの時に助けてあげてください。幸い、出発は明日のようなので」

「はあああああ?!」

「ヴィクターさんたちも助かり、エイリー様の凄さも見せつけられる、まさに一石二鳥ですね!」

「余計なお世話だっ!」


 別に、ヴィクターに私の凄さなんて見せつけなくていいから。ああいうのは、勝手にやらせとけばいいんだから!

 張り合ったら、私も同類になるじゃん。あんなのと同類になりたくない。


「まあまあ、というわけでよろしくお願いしますね」

「話を聞いてない?!」

「前払いですし?」


 こうなると分かってて、先に報酬を渡したのか。汚いっ!


「……わかったよ。頑張るよ」

「はい、頑張ってください」


 にこり、と受付嬢さんはいい笑顔を見せたのが、余計に悔しかった。


「それで、エイリー様の設定はですね、」

「そこまで指定されるのね……」


 もうそこまで決まってるなら、尊敬の域だ。そして、かなり計画的犯行。

 掌で転がされてるなぁ!


 こうなったら、何でもやりますよ。やけですよ、やけっ!


「王都に憧れを持つ、田舎から出てきたそこそこ強い冒険者で、ヴィクターさんたちのギルドに加入希望なんです」


 なんですって言われてもねぇ。全く興味ないんだけどねぇ?


「ちなみに魔法使いなので、剣とか弓とか出さないでくださいね。それっぽい武器を装備してください」


 設定が細かいな。もうなんでもいいんだけど。


「髪の毛の色とか服とかもできれば変えてください」


 できるでしょ、と言わんばかりに受付嬢が私を見てくる。


「できるよ。そんなのお茶の子さいさいだよ」


 私もばれたくないしね。できれば最後までばれないで終わりたい。


「流石はエイリー様です」


 にこにこ。嬉しそうに、受付嬢は笑った。



 ――――私は全く嬉しくないよ。

変装&潜入って一度やってみたかったんですよねぇ……。

というわけで、続きます。

19時に予約投稿してあります。

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