76 英雄さん、依頼を受ける
2話目。
その後、私は依頼の内容を達成し、再び冒険者省に戻ってきた。
まだお昼を少し過ぎたくらいだ。今日は割と早く終わったなぁ……。
「あ、お疲れ様です、エイリー様」
「お疲れ様ー。依頼終わったよ」
そんな感じで、いつも通り受付嬢と挨拶を交わす。
「早かったですね」
「そうだね。今日はいつも以上にあっさり片付けたからね」
誰かさんからいただいたストレスを発散するために、力をセーブしなかったからなぁ……。ヴィクターに似てる魔物いたんだよねぇ。
そんな私の考えを読み取ったのか、受付嬢は苦笑いを返してくれる。
「こちらが依頼の報酬になります」
そう言って、受付嬢が銀貨を20枚差し出してくる。
「ありがとう……って多くない?」
確か、今回の依頼は銀貨10枚だったはずだ。なんで倍になってるんだ? ボーナスか? いやいや、冒険者にボーナスなんて制度は存在しない。
割とシビアな世界なんだよなぁ、冒険者って。
「これからエイリー様に冒険者省から依頼をします。引き受けてくださいますか?」
真剣な表情で、受付嬢が言ってくる。
そういうことね。そういうことは、割とあることだとわかってきたので、驚かない。
「内容は?」
銀貨10枚出してくるということは、割と大きめな仕事なんだろう。まあ、私が受けている依頼は銀貨10枚以上のもの多いけどね。余り物が押し付けられてるので、私。
「ヴィクターさんたちの補助です」
「はあ?」
思わず心の声をそのまま出す。
嫌とかじゃなくて(嫌だけど)、ヴィクターたちも性格はあれだけど、そこそこは強いのだ。私の補助なんていらないはずだ。
「それがですね、不相応な依頼を受けやがりまして」
「あー、余り物のクソ難易度高いやつ?」
冒険者省に押し付けられて、私がこつこつ消費してるやつ。
というか、受付嬢さん『受けやがりまして』って。口が悪くなってますよ~。
「そうです。なんか、ヴィクターさんたち、ムキになってしまいまして、受けるって聞かなかったんですよ。冒険者の意思はなるべく尊重したいので、承諾しましたが」
「粘れよ」
「不干渉を貫く、それが冒険者省ですので」
……私にはかなり干渉している気がしてるのだが。気のせいなんだろう、きっと。
「で? 死にそうなの?」
「はい。間違いなく」
受付嬢、即答。
まじかよ、もっと考えろよ、命大事にしろよ。なんだかんだ言って、命が一番大事なんだよ!
はあああ。と私は盛大な溜息を吐き、
「私は何をすればいいの? 先回りして、依頼完了させちゃえばいいの?」
と、尋ねる。人が死ぬのはあまり好きじゃないので、頑張るしかないじゃないか。
いくらうざったるいヴィクターたちでも、死んだら胸が痛む。
「それはダメです。あくまで先に依頼を受けたのはヴィクターさんたちなので」
「じゃあ私は何をしろって?」
「ヴィクターさんたちのパーティに紛れ込んで、ピンチの時に助けてあげてください。幸い、出発は明日のようなので」
「はあああああ?!」
「ヴィクターさんたちも助かり、エイリー様の凄さも見せつけられる、まさに一石二鳥ですね!」
「余計なお世話だっ!」
別に、ヴィクターに私の凄さなんて見せつけなくていいから。ああいうのは、勝手にやらせとけばいいんだから!
張り合ったら、私も同類になるじゃん。あんなのと同類になりたくない。
「まあまあ、というわけでよろしくお願いしますね」
「話を聞いてない?!」
「前払いですし?」
こうなると分かってて、先に報酬を渡したのか。汚いっ!
「……わかったよ。頑張るよ」
「はい、頑張ってください」
にこり、と受付嬢さんはいい笑顔を見せたのが、余計に悔しかった。
「それで、エイリー様の設定はですね、」
「そこまで指定されるのね……」
もうそこまで決まってるなら、尊敬の域だ。そして、かなり計画的犯行。
掌で転がされてるなぁ!
こうなったら、何でもやりますよ。やけですよ、やけっ!
「王都に憧れを持つ、田舎から出てきたそこそこ強い冒険者で、ヴィクターさんたちのギルドに加入希望なんです」
なんですって言われてもねぇ。全く興味ないんだけどねぇ?
「ちなみに魔法使いなので、剣とか弓とか出さないでくださいね。それっぽい武器を装備してください」
設定が細かいな。もうなんでもいいんだけど。
「髪の毛の色とか服とかもできれば変えてください」
できるでしょ、と言わんばかりに受付嬢が私を見てくる。
「できるよ。そんなのお茶の子さいさいだよ」
私もばれたくないしね。できれば最後までばれないで終わりたい。
「流石はエイリー様です」
にこにこ。嬉しそうに、受付嬢は笑った。
――――私は全く嬉しくないよ。
変装&潜入って一度やってみたかったんですよねぇ……。
というわけで、続きます。
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