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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題とその他諸々/第2節 マスグレイブ家族大集合!
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閑話 村の終幕

3話目。

 * * *



 アネリに幻想魔法をかけ終えたアニスは、ふっ、と息を漏らした。


 ――――あとは、アネリを逃がすだけだ。


 すると、どんっと勢いのある音がした。家のドアが破られたのだ。

 ここまでだな、とアニスは諦める。

 だが、アネリだけは。アネリだけは、無事に逃がさないといけない。


 アニスは止まりかけている頭を、フルで動かす。

 アニスは、もう限界だ。早朝に敵――――ゼーレ族の里を復活させたい者たちとディカイオシュネーの軍人たち――――が、村を襲ってきて、対応に追われていたのだ。


 この村は、ディカイオシュネーから逃げてきた人々の村であった。逃げてきた理由は様々。生きるために犯罪を犯した者、ディカイオシュネーの生活環境に耐えられなかった者。税金を払えなくなった者。


 ディカイオシュネーは、軍事の国。貴族の国・マカリオスより上下関係が厳しく、貧富の差も激しい。実力至上主義の国なのだ。

 成功する者は一握り。ほぼほぼの国民は皆、生きるのに必死なのだ。


 そんな彼らと利害が一致したアニスたちは、この村に住まう人々と協力して二つの組織を欺いてきたのだ。


 だが、ついに見つかってしまった。アニスのかけていた幻想魔法の効果が薄れていたのが問題であったが、まさか二つの組織が手を組むとは誰も予想がつかなかった。

 俗世にはあまり関わりたくないゼーレ族。誇り高きディカイオシュネー。

 どうして手を結んだのか、アニスにも予想がつかなかった。


「……やっと見つけましたぞ、アニス様」

「何用だ?」


 まず家に侵入してきたのは、ゼーレ族の年長者たちであった。


「聡い貴女様ならわかっているはずだ」

「関係ない人々を巻き込み、このような行いをするなど、貴様らは何も思わないのか?」

「だが、こうでもしない限り、貴女様は戻ってこないでしょう?」

「私は戻るつもりも、戻すつもりもないぞ」


 威厳のある声で、アニスは言い放つ。


「それなら仕方ありませぬ。後ろの娘を連れて帰るのみ」

「……私が許すと思うのか?」

「貴女様こそ、自分の置かれている状況を理解した方が良い」


 ゼーレ族の言い分に、何も反論ができないアニス。

 圧倒的に不利なのは、自分の方なのだ。

 手練れの戦士を連れている敵方からは、村の戦力は子供の遊びみたいなものだろう。


「ですから、実力行使になる前に大人しく付いてきてもらえませんか?」

「もう実力行使に及んでいるのに、それを言うのか?」

「外のお遊びは、あくまでディカイオシュネーの者共が勝手にやっているに過ぎません」

「戯言を」


 ぎり、とアニスはゼーレ族たちを睨みつける。

 そんな会話をしていると、こつこつと軽快な靴の音が聞こえてくる。


「お目当てのものは見つかったのかしら?」


 この場には似合わない、女性の声が聞こえた。


「はい、見つかりました。サルワ様。全て貴女様のおかげです」

「そう、それは良かったわ」


 サルワ、と呼ばれる黒髪の女性。闇のような暗い瞳に、アニスは吸い込まれそうになる。


「……何者だ」

「あら、魔力量がかなりあるわね。魔法のセンスも良さそうね」

「……私の質問に答えろ」

「アニス様、我らが救世主に無礼ですよ」


 アニスの厳しい物言いをゼーレ族の者がたしなめる。


「いいのよ、質問を無視した私が悪いのだから。でもまあ、名乗る時は自分から、というのも礼儀よね?」

「……私はアニスだ」


 知っているくせに、と思いながら、アニスは簡潔に自己紹介をした。


「ふふ。私は、サルワよ。よろしくね?」


 よくできました、と言わんばかりにサルワも自己紹介をする。


「何の用だ」

「アニスの思っている通りよ? ゼーレ族の皆さんとディカイオシュネーの軍人はね」

「……そんなのはわかり切っている。貴様の用事を聞いているのだ」

「私は、“サルワ”よ?」


 鋭い眼差しで、サルワはアニスを睨む。アニスの体はびくりと震え上がる。


 ――――こいつ、一体何者だ?


 密かに感じる違和感。それは、サルワが人間でないことをアニスに教えていた。


「あら、やっぱり優秀なのね、アニスは」


 くすくすと、楽しそうにサルワが笑いを漏らす。


「何がおかしいのだ」

「いや、何でもないわ。貴方たち、悪いけど外に出て行ってもらえるかしら? アニスと話がしたいの」


 サルワは、アニスに答えてから、ゼーレ族たちに話しかける。


「わかりました」


 彼らは逆らうことなく、その場を後にした。不気味なほどに、彼らは従順だった。


「それで、何だったかしら? ああ、私の目的についてだったわね」


 わざとらしく、サルワは告げる。そんなサルワをアニスは、睨んでいるだけだった。


「より良い()()()を探しているのよ」

「依り代……だと?」


 この世界で、依り代を必要とする種族はただひとつ。

 ――――悪魔である。しかも、上級悪魔に限られる。


「この体も良いのだけれど。やっぱりしっくりこないのよねぇ」

「……それで、さっさと目的を言え、悪魔」

「あらあら、気づいていたのね。お利口さんね」


 くすくすと笑っているが、目は笑っていない。獲物を狙っているような目で、サルワを見つめている。


「私を依り代にしたいのか?」

「いいえ。私はアニスを殺したいの」


 どくん、とアニスの心臓が大きく鳴る。生まれて初めて感じる、本当の死の恐怖。

 サルワは、本気だった。


「……殺したい、か」

「ええ、殺したいの」

「殺したいのは、私だけか?」

「というと?」

「私の娘までは殺さないか?」


 最後の抵抗として、アニスはサルワに尋ねた。


「あはは、面白いわね、アニス。気に入ったわ。貴女の望み通り娘ちゃんまでは殺さないでおいてあげるわ」

「本当か?」

「ええ。ゼーレ族の前で嘘を吐くなんて馬鹿な真似するわけないじゃない。それに、その子はまだ()()()()()


 サルワは、嘘を吐いていない。それがはっきりとアニスには、分かる。


「それなら、いい。私のことを好きにするがいい」


 サルワの言葉に、アニスはほっとする。アネリだけでも生きてくれれば、アニスは満足なのだ。


「潔いわね、アニス。嫌いじゃないわ」

「やるならさっさとやるがいい」

「それじゃ、遠慮なく」


 こうして、一つの命が散ったのだった。



 この後、サルワは眠ってるアネリを殺すことはせず、近くの森に置き去りにした。

 しばらくして、ヴェルズリがアネリを見つけるのだった。



三節は、ゼーレ族とシェミーの問題を解決していきます~!

今までよりもちょいと戦闘シーンが多めです。

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