70 マスグレイブ兄弟大集合!
本日2回目の更新です。
かくれんぼが終わると、一旦タパニ達と別れた。タパニ達がパーティー用の衣装に着替えるためだ。
私とファースも別室で、服装を整えた。かくれんぼをして、汚れていたので、魔法で綺麗にしたのだ。
もういっそ、このまま時間が止まってしまえばいい、もしくは何か事件が起きればいい、と心底願ったのだが、何も起きずにパーティーの時間になってしまった。
パーティー会場に向かう途中、ファースにある質問をした。
「ねえ、そういえば、ベルナ達には私とファース達の関係ってどんな風に言ってるの?」
ふと、アナクレト王子の言葉を思い出したからだ。
『姉上も、兄上も、君に会ったというのに、どうして僕だけが会わないんだ? そっちの方がおかしいだろう?』的なやつ。
ほんと、かまってちゃんだよなぁ、あの王子。
「どうって、友達だが? それと、ベルナ姉上のことを呼び捨てにするなんて、エイリーはどんだけなんだよ……」
「ベルナはいいって言ってくれたよ? いや、そうじゃなくて」
「何が?」
「友達ってやつ。違くて、出会った時のこととか、どうやって誤魔化したの?」
ベルナたちは、ファースたちが秘宝を探してるなんて、知らないのだ。私が探してることは知っている人もいるみたいだが。
「ああ、ちょっと森に行った時に助けてもらったって言っただけだぞ?」
まあ、嘘はついてないのか。
「ベルナに勘付かれなかったの?」
だが、ベルナをやり過ごせたとは思えない。
「いや、姉上は勘付かれていたような気もするが、何も言ってこなかった」
「へえ……。それならいいんだけど」
大方、無理矢理やらされていることを分かっていたからだろう。それにすぐに追求しても面白くないなんて、そんなことを思っていそうだ、ベルナなら。
というか、これからベルナに会うのか。しんどいなぁ、と思いつつ、地獄のパーティー会場に向かうのだった。
* * *
「あ、やっときたの。久しぶりじゃな、エイリー」
ファースにエスコートされ、パーティー会場に入ると、まずベルナが話かけてきた。
「久しぶり、ベルナ。元気そうで何よりだよ」
「お主、もう妾に敬語を使う気ないじゃろう?」
「嫌だなぁ、ベルナ。誤解だよ。私は敬語を使うのが苦手なだけなんだよ」
「もうなんでもいいわい。好きにするがいい」
なんかよくわからないけど、ベルナにタメ口をきいていいみたいだ。良かった良かった。
何故だかは知らないけど、ベルナに敬語使えなんだよね。どうしただろうね?
「というか、本当にファースと知り合いだったんじゃの」
ベルナが隣に立っているファースを見ながら言う。
「マスグレイブ兄弟の中で一番最初に出会ったよ、ファースとグリー」
「そうか、そうか」
そんな感じで、私とベルナが話をしていると、
「お、エイリーじゃないか!」
聞き覚えのある、戦闘狂の王子の声がした。いや、気のせいだろう。
「ご機嫌いかがかな、エイリー? ところでまた、決闘をしてくれないか?」
気のせいであるはずがなかった。こんな奴だって、王族なのだ。
「普通に元気だよ、コラン。コランは元気が有り余ってるみたいだね」
「おう、俺も剣の腕あがったんだぜ? ちょっと今からでも、決闘しないか?」
「……断りたいところだけど、パーティーから抜け出せるなら、やってやろうじゃないの!」
動機が不純であるが、別にいいだろう。私は一刻も早く、帰りたいのだ。
「おい、やめてくれ、エイリー。コラン兄上も今はやめてください」
ファースが間に入って止める。
「そうだな。今はパーティーの最中だしな」
あっさりとコランは納得する。おい、粘りが足らんよ、コラン!
「やっと見つけましたわ! エイリー! 久しぶりね!」
続いて、グリー(上品な方)がやってくる。
「お、グリーじゃん。久しぶり。剣の訓練は楽しかった?」
「ええ。とても楽しかったわ。まあ、人格に多少の問題はあるけども、バレなければ問題ないわよね!」
「流石だね、グリー」
「褒めてないわよね?」
「何のことかなぁ〜?」
てか、どうしてこんなに私の周りに王族がいるんだ。これで4人だぞ。あと3人、これに加わるのか? ……加わるだろうなぁ。
「あ、エイリーお姉ちゃん! みぃつけた!」
「こら、ノエル。落ち着け」
そんなことを考えていると、ジャストタイミングで、タパニとノエルがやってくる。相変わらず、この2人を見ていると癒される。怖いとか、中身とかは別にして。
「おお、2人ともさっきと衣装が違うね。似合ってるよ」
「ありがとう、エイリーお姉ちゃんも可愛いよ」
君の方が可愛いよ、ノエルちゃん。
「そうか?」
私の褒め言葉に、タパニは首を傾げた。そんなタパニに、
「タパニお兄ちゃん、嘘はダメだよ」
「そうじゃよ、タパニ。褒められるのが嬉しいからって照れ隠しはいかんの」
ノエルちゃんは純粋な表情で、ベルナはにやにやしながらツッコミを入れる。ゼーレ族の力、おそるべし。
「なんのことです?」
顔色を変えずに、タパニは言う。この状況で、よく仮面をかぶれるものだ。凄い、の一言だ。
「あ、また嘘だよ、お兄ちゃん」
「くくく、面白いの。正直になればいいじゃろ? 其方はまだ子供なのじゃし」
ベルナに遊ばれてるのに、それに応戦するタパニは本当に凄いと思う。でも、このままだと、負けるのは目に見えている。
「だから、なんのことです?」
「偉大なるお姉様に嘘はいかんの、タパニ」
そんな感じで、タパニとベルナの交戦は続いた。ノエルちゃんは飽きたのか、参加するのをやめている。
二人とも、飽きないのか譲れないのかは知らないが、かなりバトルが激しくなっていく。
それを、私たちは呑気に見ていた。誰も止めようとはしなかった。
だから、
「やめてください。みっともない」
と、止める言葉がかかったときは一斉にその人の方を向いた。
「あ、クレト」
「踊る戦乙女、君にいつ、愛称で呼ぶ許可を僕は出したか? 出してないよな?」
「えー、でも良くない? クレトだけなんだよ、許してくれないの」
「そうなのか?」
ぴくり、とクレトの眉が少し動く。やっぱ、取り残されてるの気にしてる。もう一押しだ。
「そうそう。あと、踊る戦乙女って呼ばないでよね。皆、私のこと、エイリーって呼んでるんだよ?」
「皆?」
「そそ、ベルナもコランもファースもグリーもタパニもノエルちゃんもみ~んな」
ぴくぴくと、クレトの眉毛が動く動く。面白いなぁ、この人。
「だから、どうしたと言うんだ?」
「一人だけ、取り残されてていいの?」
「何のことだ?」
最早、誤魔化しきれていない。
視界の端に、ベルナが必死に笑いを堪えてるのが映る。ベルナって、本当にいい性格してるよね。
「そんな拒むことじゃないだろ、クレト。エイリーのこと、エイリーって呼んでやれよ」
口を挟んできたのは、意外にもコランだった。
「なんで僕が……」
「クレトお兄様、何がやなの?」
純情な瞳で、ノエルちゃんがクレトを見る。
おお、強力な後押しコンボだ。
むむ、と言う顔をしながら、クレトは黙り込む。
「いいじゃん、いいじゃん。私のこと、エイリーって呼んでいいからさ? ね?」
「ああもう、わかった。エイリーって、呼べばいいんだろ?」
「最初からそうすればよかったんだよ、クレト」
「僕のことを呼び捨てにするな」
「クレト王子様?」
「……もう好きなようにしろ」
はああ、と盛大なため息を吐いて、クレトは了承してくれた。
タパニと同じ方法が通じたぜ。この二人、似てるところがあるよなぁ。やっぱ、兄弟なんだなぁ。
「ふふふ、問題が解決してよかったわね。それで、エイリー。挨拶はしてきたの?」
私たちのやりとりが終わったのを見兼ねて、グリーがそんなツッコミを入れてくる。
気まずくなって、私はグリーから目をそらした。
行きたくない。行きたくないんだよおおお。パーティーの間、マスグレイブ兄弟に囲まれているだけでいいよ。
「その様子だと、行ってないみたいね。周りの方々の視線が痛いわ。さっさと行ってきて」
「グリーの薄情者っ!」
「皆さま、エイリーに会いにきたのよ? 会話しないで終わったら、クレームが殺到するわ」
「それもそうじゃな。引き止めて悪かったの、エイリー。心置きなく行ってくるが良い」
気持ちの良い笑顔で、ベルナはそんなことを言う。
「……本当いい性格してるわ、ベルナ」
「そんなに妾が気に入ったのなら、いつでも大歓迎じゃぞ?」
「それは遠慮しておくっ!」
「遠慮なんて、しなくて良い!」
にこにこと詰め寄ってくるベルナ。兄弟揃ってる中で派閥に勧誘するなっ!
そんな風にジリジリとやっていると、ベルナと私の間に、ファースが入ってきて、
「そう言うわけなので。挨拶に行ってきますね、ベルナ姉上」
そうして、ファースは私の手を取って、逃げ出したのだった。




