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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題とその他諸々/第2節 マスグレイブ家族大集合!
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70 マスグレイブ兄弟大集合!

本日2回目の更新です。

 かくれんぼが終わると、一旦タパニ達と別れた。タパニ達がパーティー用の衣装に着替えるためだ。

 私とファースも別室で、服装を整えた。かくれんぼをして、汚れていたので、魔法で綺麗にしたのだ。


 もういっそ、このまま時間が止まってしまえばいい、もしくは何か事件が起きればいい、と心底願ったのだが、何も起きずにパーティーの時間になってしまった。

 パーティー会場に向かう途中、ファースにある質問をした。


「ねえ、そういえば、ベルナ達には私とファース達の関係ってどんな風に言ってるの?」


 ふと、アナクレト王子の言葉を思い出したからだ。


『姉上も、兄上も、君に会ったというのに、どうして僕だけが会わないんだ? そっちの方がおかしいだろう?』的なやつ。

 ほんと、かまってちゃんだよなぁ、あの王子。


「どうって、友達だが? それと、ベルナ姉上のことを呼び捨てにするなんて、エイリーはどんだけなんだよ……」

「ベルナはいいって言ってくれたよ? いや、そうじゃなくて」

「何が?」

「友達ってやつ。違くて、出会った時のこととか、どうやって誤魔化したの?」


 ベルナたちは、ファースたちが秘宝を探してるなんて、知らないのだ。私が探してることは知っている人もいるみたいだが。


「ああ、ちょっと森に行った時に助けてもらったって言っただけだぞ?」


 まあ、嘘はついてないのか。


「ベルナに勘付かれなかったの?」


 だが、ベルナをやり過ごせたとは思えない。


「いや、姉上は勘付かれていたような気もするが、何も言ってこなかった」

「へえ……。それならいいんだけど」


 大方、無理矢理やらされていることを分かっていたからだろう。それにすぐに追求しても面白くないなんて、そんなことを思っていそうだ、ベルナなら。


 というか、これからベルナに会うのか。しんどいなぁ、と思いつつ、地獄のパーティー会場に向かうのだった。



 * * *



「あ、やっときたの。久しぶりじゃな、エイリー」


 ファースにエスコートされ、パーティー会場に入ると、まずベルナが話かけてきた。


「久しぶり、ベルナ。元気そうで何よりだよ」

「お主、もう妾に敬語を使う気ないじゃろう?」

「嫌だなぁ、ベルナ。誤解だよ。私は敬語を使うのが苦手なだけなんだよ」

「もうなんでもいいわい。好きにするがいい」


 なんかよくわからないけど、ベルナにタメ口をきいていいみたいだ。良かった良かった。

 何故だかは知らないけど、ベルナに敬語使えなんだよね。どうしただろうね?


「というか、本当にファースと知り合いだったんじゃの」


 ベルナが隣に立っているファースを見ながら言う。


「マスグレイブ兄弟の中で一番最初に出会ったよ、ファースとグリー」

「そうか、そうか」


 そんな感じで、私とベルナが話をしていると、


「お、エイリーじゃないか!」


 聞き覚えのある、戦闘狂の王子の声がした。いや、気のせいだろう。


「ご機嫌いかがかな、エイリー? ところでまた、決闘をしてくれないか?」


 気のせいであるはずがなかった。こんな奴だって、王族なのだ。


「普通に元気だよ、コラン。コランは元気が有り余ってるみたいだね」

「おう、俺も剣の腕あがったんだぜ? ちょっと今からでも、決闘しないか?」

「……断りたいところだけど、パーティーから抜け出せるなら、やってやろうじゃないの!」


 動機が不純であるが、別にいいだろう。私は一刻も早く、帰りたいのだ。


「おい、やめてくれ、エイリー。コラン兄上も今はやめてください」


 ファースが間に入って止める。


「そうだな。今はパーティーの最中だしな」


 あっさりとコランは納得する。おい、粘りが足らんよ、コラン!


「やっと見つけましたわ! エイリー! 久しぶりね!」


 続いて、グリー(上品な方)がやってくる。


「お、グリーじゃん。久しぶり。剣の訓練は楽しかった?」

「ええ。とても楽しかったわ。まあ、人格に多少の問題はあるけども、バレなければ問題ないわよね!」

「流石だね、グリー」

「褒めてないわよね?」

「何のことかなぁ〜?」


 てか、どうしてこんなに私の周りに王族がいるんだ。これで4人だぞ。あと3人、これに加わるのか? ……加わるだろうなぁ。


「あ、エイリーお姉ちゃん! みぃつけた!」

「こら、ノエル。落ち着け」


 そんなことを考えていると、ジャストタイミングで、タパニとノエル(ショタ&ロリ)がやってくる。相変わらず、この2人を見ていると癒される。怖いとか、中身とかは別にして。


「おお、2人ともさっきと衣装が違うね。似合ってるよ」

「ありがとう、エイリーお姉ちゃんも可愛いよ」


 君の方が可愛いよ、ノエルちゃん。


「そうか?」


 私の褒め言葉に、タパニは首を傾げた。そんなタパニに、


「タパニお兄ちゃん、嘘はダメだよ」

「そうじゃよ、タパニ。褒められるのが嬉しいからって照れ隠しはいかんの」


 ノエルちゃんは純粋な表情で、ベルナはにやにやしながらツッコミを入れる。ゼーレ族の力、おそるべし。


「なんのことです?」


 顔色を変えずに、タパニは言う。この状況で、よく仮面をかぶれるものだ。凄い、の一言だ。


「あ、また嘘だよ、お兄ちゃん」

「くくく、面白いの。正直になればいいじゃろ? 其方はまだ子供なのじゃし」


 ベルナに遊ばれてるのに、それに応戦するタパニは本当に凄いと思う。でも、このままだと、負けるのは目に見えている。


「だから、なんのことです?」

「偉大なるお姉様に嘘はいかんの、タパニ」


 そんな感じで、タパニとベルナの交戦は続いた。ノエルちゃんは飽きたのか、参加するのをやめている。

 二人とも、飽きないのか譲れないのかは知らないが、かなりバトルが激しくなっていく。


 それを、私たちは呑気に見ていた。誰も止めようとはしなかった。

 だから、


「やめてください。みっともない」


 と、止める言葉がかかったときは一斉にその人の方を向いた。


「あ、クレト」

「踊る戦乙女(ヴァルキリー)、君にいつ、愛称で呼ぶ許可を僕は出したか? 出してないよな?」

「えー、でも良くない? クレトだけなんだよ、許してくれないの」

「そうなのか?」


 ぴくり、とクレトの眉が少し動く。やっぱ、取り残されてるの気にしてる。もう一押しだ。


「そうそう。あと、踊る戦乙女(ヴァルキリー)って呼ばないでよね。皆、私のこと、エイリーって呼んでるんだよ?」

「皆?」

「そそ、ベルナもコランもファースもグリーもタパニもノエルちゃんもみ~んな」


 ぴくぴくと、クレトの眉毛が動く動く。面白いなぁ、この人。


「だから、どうしたと言うんだ?」

「一人だけ、取り残されてていいの?」

「何のことだ?」


 最早、誤魔化しきれていない。

 視界の端に、ベルナが必死に笑いを堪えてるのが映る。ベルナって、本当にいい性格してるよね。


「そんな拒むことじゃないだろ、クレト。エイリーのこと、エイリーって呼んでやれよ」


 口を挟んできたのは、意外にもコランだった。


「なんで僕が……」

「クレトお兄様、何がやなの?」


 純情な瞳で、ノエルちゃんがクレトを見る。

 おお、強力な後押しコンボだ。

 むむ、と言う顔をしながら、クレトは黙り込む。


「いいじゃん、いいじゃん。私のこと、エイリーって呼んでいいからさ? ね?」

「ああもう、わかった。エイリーって、呼べばいいんだろ?」

「最初からそうすればよかったんだよ、クレト」

「僕のことを呼び捨てにするな」

「クレト王子様?」

「……もう好きなようにしろ」


 はああ、と盛大なため息を吐いて、クレトは了承してくれた。

 タパニと同じ方法が通じたぜ。この二人、似てるところがあるよなぁ。やっぱ、兄弟なんだなぁ。


「ふふふ、問題が解決してよかったわね。それで、エイリー。挨拶はしてきたの?」


 私たちのやりとりが終わったのを見兼ねて、グリーがそんなツッコミを入れてくる。

 気まずくなって、私はグリーから目をそらした。


 行きたくない。行きたくないんだよおおお。パーティーの間、マスグレイブ兄弟に囲まれているだけでいいよ。


「その様子だと、行ってないみたいね。周りの方々の視線が痛いわ。さっさと行ってきて」

「グリーの薄情者っ!」

「皆さま、エイリーに会いにきたのよ? 会話しないで終わったら、クレームが殺到するわ」

「それもそうじゃな。引き止めて悪かったの、エイリー。心置きなく行ってくるが良い」


 気持ちの良い笑顔で、ベルナはそんなことを言う。


「……本当いい性格してるわ、ベルナ」

「そんなに妾が気に入ったのなら、いつでも大歓迎じゃぞ?」

「それは遠慮しておくっ!」

「遠慮なんて、しなくて良い!」


 にこにこと詰め寄ってくるベルナ。兄弟揃ってる中で派閥に勧誘するなっ!

 そんな風にジリジリとやっていると、ベルナと私の間に、ファースが入ってきて、


「そう言うわけなので。挨拶に行ってきますね、ベルナ姉上」


 そうして、ファースは私の手を取って、逃げ出したのだった。


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