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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題とその他諸々/第2節 マスグレイブ家族大集合!
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67 下2人が1番怖い

 私、ファース、タパニは中庭に着くと、すぐさまノエルちゃんの捜索を始めた。

 といっても、真面目に探してるのはファースとタパニである。

 私は、


「ノエルちゃーん。美味しいお菓子があるから出ておいで〜」


 と言いながら、馬鹿みたいに広い中庭を歩っていた。中々出てこないので、意外に我慢強いのかもしれない。

 というか、王族なのだ。美味しいお菓子になんて、釣られないだろうなぁ。なんか良い誘い文句はないかなぁ。


「ノエルちゃーん、出ておいで〜」

「はぁい! 誰かノエルを呼んだ?」


 と、近くの草の中から、灰色の髪をツインテールにした、小さな女の子が出てきた。

 服も顔も全て可愛いんだけど、草と土にまみれている。お姫様がしていい格好ではない。


 思ったより、あっさり見つかったな。てか、なんのためらいもなく出てきやがったぞ。

 これでいいのか。


「ねね、お姉ちゃんはだぁれ? ノエルはノエルだよ!」

「私は、エイリー。踊る戦乙女(ヴァルキリー)って呼ばれるときあるけど」

「ええ! お姉ちゃんが、おどるゔぁるきりーなの? ノエル、会えて嬉しい! 握手して!!」

「い、いいよ」


 ノエルちゃんの勢いに押されて、私は手を出してしまう。ノエルちゃんは目をキラキラさせて、私の手をとり、ぶんぶんとふる。


「ありがとう! おどるゔぁるきりーさま!」

「エイリーでいいよ」

「わかった! エイリーお姉ちゃん! ありがとう!!」


 可愛なぁ。本当可愛い。可愛いの一言に尽きる。

 さっき、ショタ萌えを知ったばかりだったけど、もうロリ萌えも知ってしまった。マスグレイブ兄弟は無駄に皆顔が整っているので、余計にだ。


「ねね、ところでエイリーお姉ちゃん」

「どうしたの?」

「幻想魔法、使ってる?」


 ノエルちゃんが翡翠色の瞳で私を無邪気に見るが、内容は衝撃的なものだった。

 もう随分世界に馴染んでいるので、そうそうにバレないはずなのだ。だから私は、かまをかけることにした。


「えー、そんなことないよぉ」

「嘘はいけないって、お母様が言ってたよ」


 ノエルちゃんは、にこにこと笑いかけてくるが、逆に不気味さを演出していた。


 だが、これで決まりだ。彼女は、ゼーレ族の血を兄弟の中で1番強くひいている。力の強さは純血のゼーレ族にかなり近いだろう。ノエルちゃんが兄弟分のゼーレ族の力を分捕っていたのか。ファースたちが、ゼーレ族の力を持たないのは、納得だわ。


「あーあ、バレちゃった?」

「バレバレだよぉ〜」

「嘘ついてごめんね、ノエルちゃん。ただ、このことは内緒にしてくれるかな? 踊る戦乙女(ヴァルキリー)とノエルちゃんとの約束」

「別にいいよ!」


 本当にノエルちゃんは、純粋で素直ないい子だ。ずっとこのままでいてほしい。

 ……成長すると、絶対怖い人になる。食えない大人になるよ、この子。


「あ、エイリー、見つかったか?」


 丁度いいタイミングで、ファースとタパニが登場する。


「うん。この子でしょ?」

「そうそう」

「ありがとうこざいます、エイリー」


 タパニはそうお礼を言うと、ノエルちゃんのところに駆け寄った。


「ノエル、みーつけた」

「あはは、見つかっちゃった!」


 可愛い。可愛いぞ。ここは天国なのか?!


「ファースにあんな弟と妹がいたのね……。可愛いわ」

「……そうか?」


 私とは違い、ファースは可愛いと感じていないようだ。

 おかしくないか? こんなに可愛いのに?!


「……思ってることが顔に出てるぞ、エイリー」


 呆れた声音でファースが言う。どうやら、もろに顔に出てしまったようだ。いけないいけない。


「どうして、可愛くないの?」

「いや、可愛いぞ? タパニもノエルも可愛い。可愛いんだが……」

「ファース兄様、どうかしましたか?」


 絶妙なタイミングで、タパニが会話に入ってくる。同じ調子で言ってるのに、どうしてだろう……、なんか怖い。


「お前たちが怖いって話をしてたんだよ」


 隠すことなく堂々と、ファースが告げる。


「酷いですね、ファース兄様」

「ノエル、怖くないもんっ!」


 タパニは笑顔を浮かべて、ノエルちゃんは頬を膨らませて、ファースに文句を言う。


「お前たちが1番、マスグレイブ兄弟で怖いかもしれない……」

「何を言うんですか、ファース兄様。そんなわけ、あるわけないじゃないですか。……まあ、褒め言葉として受け取っておきます」

「そうしてくれ」

「え、ファースお兄様、ノエルのこと褒めてたの?! ありがとう! ファースお兄様は嘘をつかないから、私好き!!」

「ありがとう、ノエル」


 ……うん、まあ、なんとなくわかった気がする。この2人の怖さ。


「ねえ、タパニ」

「はい、なんですか?」

「君のそれ、演技だよね? 演技というか、猫かぶりというか」

「ふふふ。何のことでしょう?」

「あー、タパニお兄様、嘘ついた! だめだよ、嘘ついちゃ」

「時には必要な嘘もあるんだよ」

「う〜ん、それでも嘘はだめ! ノエルが悲しい!」


 私が2人の会話を呆然として聞いていると、ファースが、な?と言わんばかりの目を向けてくる。


 確かに、怖い。この幼さで、完璧な猫かぶりをしてしまうタパニ、嘘を見抜いて無邪気に指摘をしてくるノエルちゃん。

 この2人が大きくなったら、と思うと背筋がぞわっとする。


 やっぱり、親や兄姉の型にはまらない性格を見て育ったから、こんな風になちゃったのかなぁ。


「うん、怖いわ。可愛いけど、怖いわ」

「だよな?」

「うん、私が間違ってた」


 私とファースは意見を共有した。


「えー、エイリーお姉ちゃんもファースお兄様もひどい! ノエルは可愛いだけだもんっ! 怖くなんかないもんっ!」


 と、拗ねるノエルちゃん。可愛い。


「心外です。僕は猫なんてかぶってませんよ?」


 と、怪しげに笑うタパニ。おいお前、猫かぶってるだろ、とツッコミを入れたいが、彼の笑顔せいで、できない。


「まあ、もうやめよ、こんな話題。つまんないし」

「つまんないって言うなよ」


 ファースの鋭いツッコミを無視して、私はタパニの方を向く。


「タパニ。あんたは、猫かぶるのやめて。知らないうちは別に気にしないんだけどさ、猫かぶってるって分かると気持ち悪くなるんだよね。本音で話しましょ」

「本音、ですか?」

「そうだよ! タパニお兄様! タパニお兄様は家族以外に、嘘をつきすぎ! そんなのだめ!」


 ノエルがタパニを叱るが、対して怖くもなく、むしろ可愛い。やばい、私可愛いしか言ってないかもしれない。語彙力崩壊してる。


「本音、かぁ?」


 タパニは迷っている。きっと、彼の中で私には分からない葛藤があるのだろう。

 幼いくせに生意気な奴だ。もっと自由に生きろよ。


「タパニ、別に猫を被ることを私は悪いことだとは思わないから、これからも続けてくれていいんだけどさ、私には猫を被らないでね? それだけだからさ」

「……わかったよ、エイリー。エイリーにも、猫かぶるのやめる」


 タパニがしばらく考えた末に、こう結論を出した。


「そうそう、それがいい」


 わたしはうんうんと得意げに頷く。ファースやノエルもタパニの決意を笑顔で受け止めている。


「最初から思ってたんだけどさ、エイリー、馴れ馴れしいよね」

「酷い?!」

「僕、これでも王族なのね? 分かってる?」

「わかってる」

「もっとさ、敬意を払うべきじゃない? 普通」

「だが、断るっ!」


 一度は言ってみたかった、このセリフ。かっこよく決まった気がするぜ!


「不敬罪に問われてもいいの?」

「それはぁ、困るなぁ」

「でしょ? だったら、敬意を払うべきだと思うんだよね。それがこの国のルールなんだから。勿論、ファース兄様や、ノエルにもだよ?」


 タパニの容赦ない物言いに、私は笑いを堪えきれず、笑い出してしまった。


「エイリーってほんと失礼だよね」


 呆れた顔で、タパニが見てくる。


「ごめん、ごめん。これが私だからさ。……すみませんでした、タパニ様?」

「別に、取り付けたように敬語を使わなくていいよ。それが、エイリーなんでしょ? わかってるよ」


 タパニが諦めの境地に入ったようだ。勝ったな。私の完全勝利である!


「ありがとう、タパニ。これからもよろしくね?」

「……こちらこそ、エイリー」


 私の差し出した手を握って、タパニは照れたように言った。




下の子たち怖いです。

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