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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題とその他諸々/第2節 マスグレイブ家族大集合!
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66 マスグレイブ兄弟で1番まともな子(?)

「ああ、ごめんね。大丈夫?」


 私はオレンジがかった金髪に、緑色の瞳を持つその男の子に向かって、手を差し伸べる。


「あ、大丈夫です。ありがとうございます」


 私の手を取り立ち上がりながら、お礼を言うと、


「こちらの方こそ、すみません。よそ見をしていました」


 と謝罪までしてくる。

 わーお。めっちゃ丁寧な言葉使いだ。

 人ができてるなぁ。まだめっちゃ小さいのに。


「僕は、タパニ・マスグレイブと言います。ファース兄様といるところ見ると、貴女はもしかして、踊る戦乙女(ヴァルキリー)様ですか?」


 さらりと流れるように自己紹介出来ちゃうってすごい。

 しかも私の正体まで、推測してるし。見た目を詐欺ってるよね、絶対。


「そうだよー。私は、エイリー。踊る戦乙女(ヴァルキリー)じゃなくて、エイリーって呼んでね」

「わかりました、エイリー様」

「様なんてつけなくていいよ。エイリーで、いいよ、エイリーで」


 どっちが、偉いのかわからんな、これ。


「わかりました、エイリー」

「敬語も使わなくて、いいのに。むしろ、私が使うべきなんだよね?」

「何故、疑問形なんだ。わかってて言ってるだろ」


 と、鋭いツッコミがファースから入る。


「ねえ、これ本当にマスグレイブ兄弟のひとりなの?」


 百歩譲って、ファースの弟だということはまだ納得できる。ファースは意外に真面目なのだ。

 だけど、ベルナやコランの弟だとは、どうしても思えないのだ。タパニの丁寧な対応を、少し彼女たちにも分けてあげるべきだと思う。


「紛れもなくそうだ。言いたいことは分からなくもないがな」

「同じ教育を受けたんでしょ?」

「勿論」

「なんでこんなに違っちゃったわけ? どこで道を間違えたの?」

「俺に聞くなよ……」


 ファースも悲しそうな顔をして、そんなことを言う。これ、ベルナたちに聞かれてたら、殺されるやつだよね。私は知らないけど。

 まあ、小説でよくあるみたいに、ベルナたちは出てこなかった。ファースは命拾いをしたわけだ。


「で? タパニは何してたの?」


 僅かに、周りを見ているタパニの様子に気づき、私はそんなことを聞いた。


「あ、いえ。妹とかくれんぼをしていまして」


 顔を赤くしながら、タパニは答えた。

 かくれんぼ?! 可愛いかよ。

 懐かしいなぁ。前世の私も小さい時やったわ。現世では、公爵令嬢だったので、流石にやってないので、余計に懐かしく感じる。

 それに、かくれんぼなんてしなくても、シスコンの兄が構ってくれたしな。


 いやいや、そういう問題じゃない。このクソ広い城で、よくかくれんぼなんてする気になるな。子供ってすげえ。

 いやいや、そういう問題でもないな。王族の子供が王城でかくれんぼなんてしていいのか? この私でも、自重したんだぞ?


「また、やってたのか」


 また?! ファース、今またっていったよね?!

 え、その言い方だと、数回ですむもんじゃないよね? 結構やってるよね? えええ?!

 羨ましい、とかそういうんじゃない。決してそうではない。よくやるなぁ、なんて思うだけだ。


「ノエルがやりたいと言うので」


 困りながら笑うが、タパニは満更でもなさそうだ。


「ノエル?」


 というか、そもそもノエルって誰だって話だ。婚約者? それとも……?


「ああ、末の妹だよ。ノエル・マスグレイブ。かくれんぼが好きなんだよ」


 やっぱり。話の流れからして、妹だよね。

 いやぁ、万が一婚約者だったら、からかってやろうと思ったのに。


「かくれんぼが好きって……、超活発な子なの?」

「いや。ノエルは、かくれんぼが好きなだけだよ。奇抜な行動力は、全て上3人に持ってかれたよ」

「そんなことないと思うけど」


 確かに、上3人の行動力は収まるところを知らないけど、下の子たちも負けてないはずだ。

 ファースだって、なんだかんだで跡継ぎ争いに足を突っ込んでるし、グリーだって、がさつな方は上3人といい勝負の行動力だ。タパニ、ノエルだって、王城でかくれんぼしちゃうし。

 きっとこれは、教育方針なんだろうなぁ。腹黒王様の。


「そうか?」

「そうそう。ファースだってかなり行動力あると思うよ」


 まあ、あんな行動力の塊みたいな兄・姉がいるので、感覚が麻痺しちゃうのは仕方のないことだ。


「そうなの、か?」

「私よりあるんじゃない?」

「それはないな」


 即答である。少しは考えてよ! 考えないで即答するの、どうかと思うよ!

 そんな私の心情を察したのか、


「それより、タパニ。ノエルは見つかったのか?」


 ファースはタパニに話しかけた。いい逃げ道があったもんだ。


「いいえ。ノエルは小さいので、どこにも隠れられるので探すのに一苦労です」


 いやいや、タパニ君、それ以前の問題に王城は広すぎるんだよ。


「そうか。じゃあ、エイリーに手伝ってもらいなよ」

「え、私?!」

「踊る戦乙女(ヴァルキリー)の力を見せてやれよ」


 何、その言い分。ただ単に、押し付けたいだけでしょ。


「お願いしてもいいですか?」


 上目遣いで、タパニにもお願いされたので、


「勿論! お姉さんに任せなさい!」


 と、返事をしてしまった。

 ショタおそるべし! こうやって世の中の大人は子供を甘やかすんだな。


「本当ですか?! ありがとうこざいます。本当は、僕一人で探さないといけないんですが……。かれこれ1時間くらい探してまして」

「は?!」


 1時間?!

 何してるの、こいつら。暇かよ。いや、暇なんだろけどさ。

 やばくね? 1ターン1時間って、やばくね? 

 よく飽きないね。子供ってやっぱすげぇ。


「どうかしましたか?」


 きらきらと純粋な瞳を向けてくる、タパニ。1時間、という単語には全く違和感を感じていないようだ。


 ファースの方を見ると、彼は驚いた顔をしていなかった。つまりは慣れた、ということである。ということはだ。

 結構な回数、1ターンに1時間以上時間をかけているということになる。

 わーお、と言うしかない。


「いや……、何でもないよ。ノエルちゃんを探せばいいんだね?」

「はい! お願いします!」


 タパニに最後の一押しをされたので、私はマップを躊躇なく開く。

 ノエルちゃんはどこにいるのかなぁ? あ、いたいた。


「中庭にいるよ」

「おい」


 場所を報告すると、ファースがそんな声を発した。


「どうしたの?」

「マップを使うなよ」

「何で?」

「かくれんぼにマップ使ったら面白くないだろ」

「何で?」

「何でってな。所詮遊びだぞ?」

「遊びこそ本気を出すものでしょ?」

「はあ……。大人気(おとなげ)ない」

「大人気なくて結構! 私はいついかなる時も手を抜くなんてことはしない! できない!!」


 私が胸を張ってそう言うと、ファースは特大級のため息を吐いた。


「私が間違ってるの?」


 遊びって本気で遊ぶから、遊びなんじゃないの?!私、間違ってないよね?!


「ああ、間違ってるよ……」

「嘘! タパニはどう思う?」

「え、僕に振るんですか?!」


 ファースが間違ってるに決まってる。私は期待を込めた目で、タパニを見る。


「エイリーの主張も分かりますが……、かくれんぼにマップを使うのは、邪道だと思います」

「嘘っ!」


 信じられない! 使えるものは使うべきだよ!


「いや、マップを使うのはずるいだろ。特にエイリーは」

「まあ……」


 面白さは半減するわな。でも、私はスムースに見つけられて面白いから、何の問題もないのだ!

 ……と言ったら、流石に自己中だから言わないでおこう。心の中に潜めておこう。


「そんなことより、中庭に行って探そうか。ノエルも見つけられるの待ってるだろ。エイリーはマップしまえよな」

「……はいはい」


 多数決の結果、マップを使うのは邪道となったので、私は大人しくマップをしまう。


 そうして、私たちはノエルちゃんの隠れている中庭に向かうのだった。王城の中庭なので、大層広いんだろう。頑張って、探そう。




次回、ノエルちゃんが登場して、マスグレイブファミリー皆登場します。

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