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5 少しミスった

「こんにちは。冒険者登録をしたいのですが」


 受付にいる優しそうな若いお姉さんにそう声をかける。

 昼前ということもあり、冒険者省の建物の中にはあまり人がいなかった。


「はい、分かりました。少々お待ちください」


 営業スマイルを見せる受付嬢。流れるようにできて全く違和感ないけど、少しうさんくさい。

 どうでもいいことを考えながら、ぼーとしていると、受付嬢が少し大きめのタブレットみたいな機械を持って戻ってきた。


「では、これに右手をかざしてください」


 丁度、手が置けるというかはまる場所が機械にあり、私は言われた通りにやる。

 3秒くらいして、


「ありがとうございました。これで登録完了です」


 と、受付嬢が優しい声で言い、私は手を離した。

 おお、すごいな。これで登録できちゃうのか〜!


 機械で読み取った私のステータスを見ながら、受付嬢は確認作業に入る。


「お名前は、エイリー様でよろしいでしょうか?」

「……はい」


 受付嬢の確認に、一度私は戸惑う。そうだ。“今”の私は、海住恵衣でもなければ、ルシール・ネルソンでもない。“エイリー”なのだ。他人からそう呼ばれて、私は初めて自覚した。


「えーと、……?!」


 次の質問に移ろうとした受付嬢が、いきなり目を大きく見開いた。ひどく驚いているのが私にも伝わってきた。


 どうしたんだろう……?

 何か問題でも発生した?

 トラブルって大変だねぇ。


 機械で私のステータスを、まじまじと見ている受付嬢を見て、私は気がついてしまった。

 

 あ。もしかして。

 いや、もしかしなくてもだよ!


 やばい、やばい。ステータス()()()()だ。

 狂ったようにおかしいステータスのままだ。

 すっかり忘れてた。


 そういえば、300レベルなんて、未だこの世界に存在していないはずだ。人類には決して超えられない300の壁。かつて英雄だとか、勇者だとか、呼ばれた人でさえも300には達していない。せいぜい200後半である。


 普通の人は100を超えるか超えないかのレベルで一生を終えるのだ。

 やってしまった。これは騒ぎになるぞ。めんどくさいなぁ。

 ステータスに細工をし忘れた自分を恨む。


「ちょ、ちょ、しょ、少々お待ちください!!!」


 かなり取り乱した受付嬢は、スタッフオンリーのブースに姿を消した。

 どうなるんだろ、私。


 冒険者じゃなくて、国の軍とか騎士団とかに、やとわれちゃうのかなぁ?そういうのは極力避けたい。ほんと勘弁。逃亡したことがバレる。

 めんどくなりそうだ。


 後悔に浸りながら、受付嬢が戻ってくるのを待つ。しかし、中々戻ってこない。

 対策でも考えるか。冒険者として生活するためには。



 ……幻想魔法を使いまくる。



 それしか思いつかない。平和じゃないな。もっと平和的思考で行こうぜ!


 でも仕方ないか。別に悪いことするわけじゃないんだし。ちょいとばかり記憶に細工するだけだし。


 まあ、最終手段ということで。まずは話し合いをしよう。

 まあ、話し合いで上手くいく気なんてさらさらしないのだけども。


「お、お待たせしました!」


 やっとの事でやってきた受付嬢は、いかにも“お偉いさん”という人を連れてきた。

 うわぁ。めんどくさぁ。

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