43 お姫様からの相談事
私はベルナのペースにのるのが嫌だったので、仕切り直しの始めとして、部屋にあるベッドに座った。
「それで、私に何の用ですか?」
私はじっとベルナを見つめる。
どうか、めんどくさいことではありませんように!
「単刀直入に言うが、其方、妾の仲間にならないか?」
「はあ?」
「まあ、驚くのも無理はない。妾に誘われているのだからな」
ドヤ顔のベルナはそんなことを言う。
仲間に、なる……? 何を言ってるんだ、このお姫様は?
「それって跡取り争いで、ベルナの派閥に入れってこと? ……ですか?」
危ない、危ない。驚きのあまり敬語忘れるところだった。セーフセーフ。
ベルナから、凄い殺気が向けられなかったら気づかなかった。
「そういうことじゃ。其方は、跡取り争いの方法がどんなものか知ってるしの?」
「あはは、ばれてましたか?」
くそ、情報を漏らしたのはデジレだな。こいつ、いつからベルナの派閥なんだ。
私は、ぎろりとデジレを睨む。勝手に喋るなよ!!
「勝手に情報売って、悪かったっす!」
慌てて謝り出した、デジレ。
「あんたからは、誠意が微塵も感じられないだけど」
「酷いっす! この口調は、治らないんで許してくださいっす!」
「へぇ? まあ、そこはどうでもいいけど。誰とまでは言わなくていいんだけど、こんな情報売った的な報告はあってよくない?」
プライバシーって言葉知ってるのか?、と問いかけても無駄だ。この世界に、プライバシーなんて、言葉ないんだから。もどかしいぜ。
「それは、無理っすね! 守秘義務ってやつっす!」
「あんたのそういうところが、誠意がないって言ってるんだけど?」
「仕方ないじゃないっすか! そんなんじゃ情報屋やっていけないっす!」
私とデジレが言い合いをしていると、
「痴話喧嘩は、あとでやってくれないかの! 妾の話を遮るではないっ!」
と、ベルナが怒鳴りだした。
てか、痴話喧嘩ってなんなの? 私とデジレはそういう仲じゃないっ!
でもこの場合、返事もせずに、ベルナをそっちのけで話していた私が悪いんだろう。
一瞬にして静かになった私とデジレを見て、満足そうに仕切り直す、ベルナ。
「で? どうなんじゃ、エイリー」
「えーと、お断りさせていただきます」
「そうかそうか! やっぱり、踊る戦乙女のエイリーなら、受けてくれると思ってたわい……、え? 其方、今なんと言った?」
「だから、断ると言いました」
「あり得んだろう?!」
「いや、あり得てますけど」
なんで、そんなに自信満々なんだ、この人。
「この妾からの誘いじゃぞ? 断る人なんているはずないじゃないか!」
いますけどね、ここに。現実を受け止めるべきだと思います、はい。
「何故じゃ!」
「何故って、聞かれても……。めんどくさいから?」
本当は、他にも秘宝探しを国王様から頼まれてとか、ファースたちが先約だとか、色々理由があるんだけど、言わない方がいいだろう。
それに、嘘はついてないし。面倒くさいことに変わりはないし。
「そんな理由で、妾の誘いを断るのか! 面白いのぉ……」
そんなことを言って、唐突に笑い出したベルナだが、すぐに真顔に戻り、私の顔を覗き込んだ。
「だが、それだけではないんだろう?」
「なんのこと?」
そう問いかけたのは、何かしらの確信が持てたからだろう。さっさと逃げた方が良さそうだ。
「しらばっくれるな。其方が今、嘘をついたのは分かっておる。めんどくさい、というのは、嘘ではないようだがな」
「……流石、ベルナディット・マスグレイブ。ゼーレ族の血を引いてるだけあるね」
このまま、ベルナのペースに飲み込まれるのはまずいと思った私は、先手を打つ。
「成る程。気づいておったか」
「気づくも何も、ばればれでしょ?」
ゼーレ族。少数民族の1つで、数十年前に里が滅び、消えた族である。特徴は、翡翠色の瞳を持ち、幻想魔法が効かない体質であり、嘘を見抜く力を有している。
私の天敵とも言える存在なので覚えていたが、もう忘れている人が多いのだ。
「流石、踊る戦乙女だな?」
「ありがとうこざいます?」
こういう駆け引きの会話は苦手なんだよなぁ。
しかも外交の天才と言われる、ベルナディット・マスグレイブが相手じゃね。私の勝ち目はないに等しい。
「其方が、大きな幻想魔法をここにかけてあるのは知っている。どんな魔法かは分からんけどな」
「脅してるんですか? ベルナが、私を?」
馬鹿馬鹿しくなってきて、笑える。
私には、ピンチになったら逃げるという最終手段があるんだから、同じ土俵で戦ってもねぇ。
まさか、逃げるは勝ちって言葉、ご存じない?
「そうとってもらっても構わん」
「幻想魔法がバレることはないから、大丈夫です。気づいてるのは、ベルナとこの国の王妃様くらいでしょ? そっちが虚言だと言われるよ、きっと」
この国の王妃様は、純血のゼーレ族だ。公にはされていないが、特徴的な翡翠色の瞳を見れば一発でわかる。
だから王妃様は、私のかけた幻想魔法の中身も分かっている可能性がある。でもまあ、会うことはないだろう。身分が違いすぎるし。
「……確かにそうじゃな! 面白いな、エイリー」
今までの真面目な雰囲気とは一転して、ベルナは、さっきの調子に戻る。
「ありがとうこざいます?」
やはり、疑問形になってしまうお礼。
「其方の勧誘は諦めないからな! 覚悟するがいい」
「はあ……」
「なんじゃ、その気の抜けた返事は!」
だって、なんて答えたらいいのか分からないんだもん。
「ねえ、デジレ。今日の用事はこれだけ?」
「あっ、はい!」
私たちの会話をぽかんとして聞いていたデジレは、慌てて返事をする。
「じゃあ、今の忘れてね!」
私は何の前ぶりもなく、デジレからさっきの会話の記憶を魔法で消した。
私ね、不意打ちってとっても大事だと思うの。
「恐ろしい女じゃな、エイリー」
驚きを隠せていない、ベルナがぼそりと呟いた。
「むしろこの位で、済むことを感謝すべきでしょ」
お仕置きは、これで勘弁しといてやろう!
ベルナ書くのはとっても楽しいです。
でも、メインじゃないです。




