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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題とその他諸々/第2節 マスグレイブ家族大集合!
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43 お姫様からの相談事

 私はベルナのペースにのるのが嫌だったので、仕切り直しの始めとして、部屋にあるベッドに座った。


「それで、私に何の用ですか?」


 私はじっとベルナを見つめる。

 どうか、めんどくさいことではありませんように!


「単刀直入に言うが、其方、妾の仲間にならないか?」

「はあ?」

「まあ、驚くのも無理はない。妾に誘われているのだからな」


 ドヤ顔のベルナはそんなことを言う。

 仲間に、なる……? 何を言ってるんだ、このお姫様は?


「それって跡取り争いで、ベルナの派閥に入れってこと? ……ですか?」


 危ない、危ない。驚きのあまり敬語忘れるところだった。セーフセーフ。

 ベルナから、凄い殺気が向けられなかったら気づかなかった。


「そういうことじゃ。其方は、跡取り争いの方法がどんなものか知ってるしの?」

「あはは、ばれてましたか?」


 くそ、情報を漏らしたのはデジレだな。こいつ、いつからベルナの派閥なんだ。

 私は、ぎろりとデジレを睨む。勝手に喋るなよ!!


「勝手に情報売って、悪かったっす!」


 慌てて謝り出した、デジレ。


「あんたからは、誠意が微塵も感じられないだけど」

「酷いっす! この口調は、治らないんで許してくださいっす!」

「へぇ? まあ、そこはどうでもいいけど。誰とまでは言わなくていいんだけど、こんな情報売った的な報告はあってよくない?」


 プライバシーって言葉知ってるのか?、と問いかけても無駄だ。この世界に、プライバシーなんて、言葉ないんだから。もどかしいぜ。


「それは、無理っすね! 守秘義務ってやつっす!」

「あんたのそういうところが、誠意がないって言ってるんだけど?」

「仕方ないじゃないっすか! そんなんじゃ情報屋やっていけないっす!」


 私とデジレが言い合いをしていると、


「痴話喧嘩は、あとでやってくれないかの! 妾の話を遮るではないっ!」


 と、ベルナが怒鳴りだした。

 てか、痴話喧嘩ってなんなの? 私とデジレはそういう仲じゃないっ! 


 でもこの場合、返事もせずに、ベルナをそっちのけで話していた私が悪いんだろう。

 一瞬にして静かになった私とデジレを見て、満足そうに仕切り直す、ベルナ。


「で? どうなんじゃ、エイリー」

「えーと、お断りさせていただきます」

「そうかそうか! やっぱり、踊る戦乙女(ヴァルキリー)のエイリーなら、受けてくれると思ってたわい……、え? 其方、今なんと言った?」

「だから、断ると言いました」

「あり得んだろう?!」

「いや、あり得てますけど」


 なんで、そんなに自信満々なんだ、この人。


「この妾からの誘いじゃぞ? 断る人なんているはずないじゃないか!」


 いますけどね、ここに。現実を受け止めるべきだと思います、はい。


「何故じゃ!」

「何故って、聞かれても……。めんどくさいから?」


 本当は、他にも秘宝探しを国王様から頼まれてとか、ファースたちが先約だとか、色々理由があるんだけど、言わない方がいいだろう。

 それに、嘘はついてないし。面倒くさいことに変わりはないし。


「そんな理由で、妾の誘いを断るのか! 面白いのぉ……」


 そんなことを言って、唐突に笑い出したベルナだが、すぐに真顔に戻り、私の顔を覗き込んだ。


「だが、それだけではないんだろう?」

「なんのこと?」


 そう問いかけたのは、何かしらの確信が持てたからだろう。さっさと逃げた方が良さそうだ。


「しらばっくれるな。其方が今、嘘をついたのは分かっておる。めんどくさい、というのは、嘘ではないようだがな」

「……流石、ベルナディット・マスグレイブ。ゼーレ族の血を引いてるだけあるね」


 このまま、ベルナのペースに飲み込まれるのはまずいと思った私は、先手を打つ。


「成る程。気づいておったか」

「気づくも何も、ばればれでしょ?」


 ゼーレ族。少数民族の1つで、数十年前に里が滅び、消えた族である。特徴は、()()()の瞳を持ち、幻想魔法が効かない体質であり、嘘を見抜く力を有している。

 私の天敵とも言える存在なので覚えていたが、もう忘れている人が多いのだ。


「流石、踊る戦乙女(ヴァルキリー)だな?」

「ありがとうこざいます?」


 こういう駆け引きの会話は苦手なんだよなぁ。

 しかも外交の天才と言われる、ベルナディット・マスグレイブが相手じゃね。私の勝ち目はないに等しい。


「其方が、大きな幻想魔法をここにかけてあるのは知っている。どんな魔法かは分からんけどな」

「脅してるんですか? ベルナが、私を?」


 馬鹿馬鹿しくなってきて、笑える。

 私には、ピンチになったら逃げるという最終手段があるんだから、同じ土俵で戦ってもねぇ。

 まさか、逃げるは勝ちって言葉、ご存じない?


「そうとってもらっても構わん」

「幻想魔法がバレることはないから、大丈夫です。気づいてるのは、ベルナとこの国の王妃様くらいでしょ? そっちが虚言だと言われるよ、きっと」


 この国の王妃様は、純血のゼーレ族だ。公にはされていないが、特徴的な翡翠色の瞳を見れば一発でわかる。

 だから王妃様は、私のかけた幻想魔法の中身も分かっている可能性がある。でもまあ、会うことはないだろう。身分が違いすぎるし。


「……確かにそうじゃな! 面白いな、エイリー」


 今までの真面目な雰囲気とは一転して、ベルナは、さっきの調子に戻る。


「ありがとうこざいます?」


 やはり、疑問形になってしまうお礼。


「其方の勧誘は諦めないからな! 覚悟するがいい」

「はあ……」

「なんじゃ、その気の抜けた返事は!」


 だって、なんて答えたらいいのか分からないんだもん。


「ねえ、デジレ。今日の用事はこれだけ?」

「あっ、はい!」


 私たちの会話をぽかんとして聞いていたデジレは、慌てて返事をする。


「じゃあ、今の忘れてね!」


 私は何の前ぶりもなく、デジレからさっきの会話の記憶を魔法で消した。

 私ね、不意打ちってとっても大事だと思うの。


「恐ろしい女じゃな、エイリー」


 驚きを隠せていない、ベルナがぼそりと呟いた。


「むしろこの位で、済むことを感謝すべきでしょ」


 お仕置きは、これで勘弁しといてやろう!

ベルナ書くのはとっても楽しいです。

でも、メインじゃないです。

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