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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題/第1節 出会っちゃったよ!
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40 今度こそ、お開き!

嘘です。

あともう一話投稿します。


 クラウソラスの手入れが終わり、ゼノビィアと少し雑談をしてから、私たちはギヨさんの鍛冶屋を出た。

 すっかり空は夕焼けの色よりも夜の色が支配していて、想像以上に長居をしてしまったことを物語っていた。

見てた感じ、3人とも楽しそうだったから、問題ないだろう。


「今日は楽しかったわ、エイリー」


 満足そうに、グリーはお礼を言う。


「いえいえー」


 まだ出会って1日も経たないのに、すっかり打ち解けてしまったなぁ。ファースたちのコミュ力が恐ろしいぜ。


「本当はこの後、エイリーの家に行きたかったんだが、時間が時間だしな。今日は諦めるか」

「え。……ファース、そんなこと考えてたの?!」

「ああ」


 真面目な顔で、そう返事をするので、私は内心ホッとしている反面、ひやひやしていた。

王族様の余計な好奇心を、こんなところで発揮しないでくれ。


 私の家は、ザ・庶民の家であり、少々散らかっている。王族様を招待する準備は、残念ながら整ってないし、そもそも友達を招待できるかも怪しいのだ。


 片付けを手伝ってくれたゼノビィア曰く、『汚部屋以上ゴミ屋敷未満。こんなところで良く暮らせるね』、シェミー曰く、『エイリーが快適ならそれでいいけど、もうちょっと片付けた方がいいんじゃないかなぁ。一応、エイリーだって人間なんだし?』だそうだ。

 2人の物言いは、酷いが正論なので何も言えない。悔しいので、片付けをしようとするが、3分で飽きる。というか、まず片付けをしようと決意をする時点で諦める。

だから散らかるだけ散らかって、片付く気配は一向にない。


 そんな私の家に、王族様をあがらせるわけにはいかないので、今後の対策を立てる必要がありそうだ。


「なんで、私の家に来たいわけ? 踊る戦乙女(ヴァルキリー)なんて呼ばれてるけど、名家の出身でもない、庶民だし。家も狭い平屋だよ?」


 まあ、一人暮らしには、贅沢なものなんだけど。お金の使い道がないからしょうがないのだ。


「へえ、なんか意外だな」


 レノが少し、驚きを見せる。


「そう? ……だって、家が広すぎるとお金がかかるじゃん。家政婦さんとか雇いたくないし。独り暮らしなのに、部屋がいっぱいあっても困るだけだし。片付けとか面倒くさいじゃん」


家が広かったら、本当に私の家はゴミ屋敷になっちゃうよ!!


「金なんて、稼いでるんじゃないのか?」

「まあ、そこそこ稼いでるけど。今後のために貯金してんの」


 今後、何が起きるかわからないし、貯めておくのが無難である。金があれば、到底のことは解決できるだろう。

まあ、そんなのは建前で、有意義な使い道がないから、貯金してることにしているのだ。そっちの方がかっこいい。


 私が、そんな真面目(?)なことを言うと、3人は目と口を開けて驚いていた。


「あんたたちって、ほんと失礼だよね」


 はあ、とため息を吐く。

私だって、これでも真面目に生きてるんだよ!


「意外なんだもの。エイリーって、お金の使い方は荒くないのね」


お金の有意義な使い道がないからだけどね。

元オタクとしては、貢ぐ先がなくて困ってるのだ。


「他は荒い、みたいに聞こえるんだけど?」


 これは、心外だ。私だって、これでも女の子なのだ。


「それはそうだろ」


 ファースから、冷静なツッコミをうけ、余計にショックだ。こいつら本当に、ズケズケ言うなぁ。


「私のこと、なんだと思ってるわけ?!」

「「「踊る戦乙女(ヴァルキリー)」」」

「本心は?」

「「「エイリーって本当に人間?」」」


 声を揃えて言いやがった。神業だ。 


「何? あんたたち、私に怨みでもあるの?!」


 はあ、とため息をつきながら――――私は今日何回ため息をついているんだろう、幸せが逃げるどころの話じゃない――――言うと、


「そんなものは、ないに決まってるだろう? エイリーは俺たちを救ってくれたんだからな」

「お兄様の言う通りよ。私は、命の恩人で、それ以上にエイリーの人柄は好きなの。怨みなんかあるわけないじゃない」

「ああ。エイリーは本当に感謝してもしきれないよ。」


 なんて、ファースもグリーもレノも真剣に言ってきた。


 冗談で言ったのに、こんな本音を返されるのんて、思ってもいなかった。胸のあたりをむずむずしたものが襲う。

 私、こういうのは慣れてないんだけどっ!


「……ありがと」


 私が感謝を述べたことに、ファースたちはきょとんとしている。


「どうしたんだ、エイリー?」

「ただ、なんとなくお礼が言いたくなっただけ!」


 私はきっと、顔が赤くなっているのだろう。ファースたちは、にやにやと気色悪い笑みを浮かべている。


「ああ、もう! 今日は解散! とっとと帰れ!」

「エイリー、顔を真っ赤にさせちゃって。可愛いわねぇ」


 ふふふ、とグリーが笑うので、


「うるさい! じゃあね!」


 と、私は早足で帰路に向かった。



 今日は、なんだか色々あったな。数ヶ月分の出来事(イベント)が一気に押し寄せて来たみたいだ。

 疲れたけど、楽しかった……のかなぁ?

次はファース目線の閑話です。

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