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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題/第1節 出会っちゃったよ!
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25 流石は踊る戦乙女

 私がグリーのところに着いた時、グリーはもうとっくに魔物に囲まれていた。なんとか応戦しているものの、HPの残りが少ない。

 というか、よくもまあひとりで、応戦できたな……。並大抵の冒険者なら、とっくに死んでるぞ。

 本当にこいつ強いな。


 そんなことを思いながら、私は少し離れたところに着地する。

 このまま流れで魔法を使ってもいいが、グリーを巻き込みかねない。巻き込んで、怪我でもされたらたまったもんじゃない。


 仕方ないなぁ。少し苦手だが、剣を使うしかなさそう。

 できれば、剣、使いたくないんだよなぁ。

 でも、文句を言っている場合じゃない。


 私は、クラウソラスを抜き、構える。

 ふ、と深呼吸をして、心を落ち着かせる。

 よし、いける!


 気合いを入れて、私は駆け出す。

 この3ヶ月間、気が向いた時に剣の練習をしていたので、なんとか剣術のレベルに見合う動きができるようにはなった。


「たあっ!」


 私はグリーの周りを囲んでいる魔物を、剣一振りで倒していく。


「グリー、大丈夫?」

「……っ、エイリー!」


 かなり命の危機を感じてたらしく、グリーは少し泣きそうだった。少し、上品なグリーが見えた気がする。

 いやまあ、中身は全く違くても、同じ顔だからな。表情が似るのは当たり前か。


「ちょっくら倒しちゃうから、最低限、自分の身は守って」

「お、応!」


 グリーの元気な返事(?)を聞いて、安心したので、心置きなく暴れることにした。


 剣一振りで、二、三匹の魔物をいっぺんに倒していく。返り血がつくけど、それは仕方ない。

 でも、この臭いがきつい返り血が苦手なんだよなぁ……。だから私は、剣を使わないのだ。


 魔物に反撃されることもあるが、レベル300を超えている私のHPは、そう簡単には減らない。痛みにも耐性があるので、ちょっとやそっとの攻撃じゃ痛くはない。

 だからあっという間に、魔物は減っていく。


 伊達に踊る戦乙女(ヴァルキリー)なんて呼ばれてないし! えっへん。……調子に乗るのはやめよう。とっても痛々しい。見せられるもんじゃない。


 そうして、大した苦労もせず、最後の一匹のとどめを刺す。

 ふう、と一息を吐いて、私はマップで魔物が残ってないかどうか確認する。


 うん、大丈夫そうだ。魔物は一匹も残っていない。

 もうすぐでファース達も追いつきそうだし、このまま先に進めそう。


 さてと。慣れない剣を使って、少しばかり疲れたが、まだやることは残っている。

 次にするのは、傷だらけのグリーの回復だ。


 クラウソラスを持ち直し、私はステップを踏む。


「神の癒し、土地の癒し、空気の癒し。糧となれ、一部となれ、素材となれ。集え、纏まれ、癒せ!」


 呪文を唄い、癒しの魔法を発動させる。淡い光がグリーの周りを囲み、傷が消えてゆく。

 うん、何の問題もなく魔法は発動したようだ。痛々しい傷が、グリーから消えた。


 女の子、しかも王族が、体に傷なんて残ったら大変だもんね。ちゃんと治せてよかったよ。


「どう? 元に戻った?」

「……」


 自分の手を握ったり開いたりしながら、あんぐりと口を開けて、何も言わないグリー。

 おーい、上品のかけらもないぞー。


「おーい、グリー?」

「……」


 グリーは相変わらず放心状態で、何も言葉を発しない。動きすら止まってる。

 ……まさか、死んでる? 嘘でしょ?! 成功したと思ったのに?!


「エイリー、グリー、大丈夫か?」


 そんなことをしているうちに、ファースとレノが追いついた。かすかに息を切らしているので、走ってきたのだろう。ゆっくりでいいって言ったのに……。


「あ、うん。大丈夫だよ」


 取り敢えず、そう返事をしておく。


「そうか、良かった」


 ほっとした笑みを見せるファース。心底安心したようだ。

 イケメンがやると様になるななぁ。不覚にもドキッとしそうになったぞ。


「なんか、グリーが動かないんだけど。回復魔法は成功したはずなんだけどなぁ?」


 私がそんなことを漏らすと、ファースもレノも驚いた顔をした。

 なんだ、なんだ、なんだ?

 おかしなこと言ったか、私。やっぱりグリーが死んだかどうか、心配なのか?


「……エイリー、回復魔法–––––つまり聖魔法が使えるのか? いや、まあ、光の魔法を使ったから、薄々は気づいていたけども」


 驚いている中、レノが最初に口を開いた。


「ああ、なんだそんなこと。使えるけど。というか、全属性の魔法が使えるけども」


 まあ、前世の記憶を思い出した時のおまけなんだけど。


 ゲームでは、どんな魔法もレベルをあげ放題だったので、私はどんな魔法が使えるのだ。

 本来のルシールには使えないはずの魔法も。


「まあ、そんなことはどうでもいいでしょ。先に進もう」

「そんなことって……」


 もうファースは呆れているようである。

 別に私がどんな魔法使えようが、使えまいが、あんた達には関係ないじゃん。


「さ、行こう。時間なくなっちゃう」


 相変わらず、放心状態のグリーを無理矢理立ち上がらせながら、私は言う。


「あと数分あれば魔物の駆除は終わるんじゃないか?」


 ぼそっ、とレノが漏らした言葉については深く考えないことにした。

 ……まあ、一瞬で終わらせることもできるけどね? でも、優秀な人たちがいるのに、私が働く意味ないじゃん。私は楽がしたいんですぅ。


 そんな反論を心の中でしながら、私はグリーを引きずって、遺跡の奥へ入っていった。



 グリーの扱い、雑になってるなぁ。上品なお姫様グリーが少し恋しい。

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