24 迷子のグリーさん
一回改稿したデータが飛んだので、死ぬかと思いました……。
なんとか更新しました。
遺跡に着くまで、私たちは一度も魔物と遭遇することはなかった。どうやら近くにいた魔物は大方狩り尽くしたらしい。
ここまで来るのに私は何もしてないけどね! ほとんどの魔物を、レノと豹変したグリーが倒してしまった。こいつら本当に強い。
何もしなさすぎて、経験値奪っているのは、むしろ私の方だ。
少し罪悪感を抱くものの、やっぱり楽な方がいい。戦わないって素晴らしい!
私から、経験値をぶんどっていった奴らの気持ちがわかる気がする。他人の金で食べる飯は、美味しいもんね……。
気持ちはわかったけど、許す気にはなれない。これとそれとじゃ話は別だ。今までと変わらずに、一生根に持ってやる。
そういうわけだから、この調子でいくとと、今日は私の出番はなさそう。うんうん、いいことだ。私にもっと楽をさせてくれ。
「ここだよな? 秘宝があるのは」
「マップを信じるなら多分そう」
最終確認をしてくるファースに私は飄々と答えた。
飄々としているのは私だけで、ファースは今にも心臓の音が聞こえてきそうな顔をしている。そんなに緊張しなくても大丈夫だって。
ファースだって、そこらの冒険者より強いし、何より私がついてるじゃないか!
ちなみに、グリーはなんかとても楽しそうにしていて、レノは真剣な、いかにも『騎士団長様』って顔をしている。
……なんだかなぁ。まとまりがないぞ、このパーティ。
私が言えたことじゃないけど。
「早く中に入ろう! お宝お宝♪」
本当に楽しそうで、鼻歌まで歌い始めてしまったグリー。
……本当に剣を離したら人格は元に戻るのか? 上品な感じのグリーに?
この乱雑な感じのグリーに見慣れすぎてしまって、さっきまでの上品なグリーが偽物の気がしてきた。
いかんいかん。
これでは上品な方のグリーが可哀想だ。
「1人で先行かないでっ。危ないから!」
「お宝お宝♪」
グリーは私の注意を聞かないで、どんどん先に行ってしまう。
というか、あれは絶対聞こえてない。
「待てってば!」
私の制止も聞かず、グリーは走り出す。元々、身体能力が高いので、かなりスピードが出ている。しかも、彼女は楽々と走っているあたり、まだ本気じゃないんだろう。
私もなかなか追いつけない。
ハイテンションすぎて、周りが目に入っていないグリー。
それを私は追いかける。その後を、ファースとレノも慌ててついてきた。
* * *
行動が、というか動きが速い。
グリーはあっという間に視界から消えてしまった。
マップでグリーの居場所を確認しながら、進んで行くが、なんせ遺跡である。道がややこしいったらありゃしない。
どうしてこんなに複雑につくってるんだよ?! もっと簡単でいいじゃん! 今の私の身にもなってよ?!
いや、理屈はわかるんだけどさ?! ああもう!
「グリー?! ああもう、どこにいるのさ?!」
私はやけになりながら、叫ぶ。
「こっちの人格のグリーは、楽しくなると周りが見えなくなるんだよ」
ファースも呆れ半分で言ってくる。
「それ、命取りなんだけど」
はあああと深いため息をつく私を見て、ファースもレノも苦笑いをする。
「お、そろそろグリーに近づいて来たんじゃないか?」
レノがきょろきょろと辺りを見回す。確かにマップでは、グリーはこの辺りにいることになっている。
本当にどこにいるのさ?!
イライラしてきて、私は落ちている小石を蹴る。かん、という音がただ響くだけ。虚しい。
はあ、と本日何度目か分からないため息を吐いてマップを見直す。今日だけで、どれだけ幸せが逃げてるんだって感じだ。
そしてまた、はあああとため息を吐く。ため息吐かないと、やってけない。
「あー、また進んでる」
進むスピードが異様に早い。
「どれだけのスピードで走ってるんだ?」
「結構なスピードなんじゃ……あ」
「どうした?」
私が急に驚いたので、ファースが不思議そうな顔をする。
「魔物に追いかけられてる……」
さっき見たときは魔物が近くにいなかったので、ついさっきから、追いかけられているのだろう。
何かの罠にでもかかったのだろうか? だから気をつけろって言ったんだ。
「どうする? 今からでも追いつけるか?」
レノが少し冷静さを欠いた声で尋ねてくる。婚約者がピンチなんだから当たり前だろう。
相当な数の魔物がグリーの近くにいるので、今から行って間に合うかどうかはわからない。
私たちが追いつく前に、やられてしまうかもしれない。
……ああ、もう! 本当に、手がかかるんだから!
「私が先に行くから。あんた達はゆっくり来て! ゆっくりでいいから! そのかわり、絶対に危険な目に遭わないでよね!」
ファース達に反論の余地を与えずに、私は踊りながら呪文を詠う。
「飛べ飛べ、鳥のごとく。舞え舞え、風のごとく。美しく、可憐に、羽ばたけ!」
ぶわっと、私の体が宙に浮く。
「じゃあ!」
手短に別れの挨拶を済ませて、私は空中を猛スピードで飛び、グリーのところへ向かった。




