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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第2章 魔王討伐をするようです。/第3節 敵国に潜入しちゃったのでめんどくさいこと全部蹴散らそうと思う
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70 初めまして、傭兵ギルド

 翌日、私たちはさっそく傭兵ギルドを訪れていた。

 善は急げって言うし、細かいことを考えても仕方がない。そもそも、考えることは私の仕事じゃないし。


 傭兵ギルドに入ると、中にいた傭兵が皆、私たちの方を見る。

 私たちっていうか、()()()()()()()()()()()私たちってところだろう。

「ニコレットだ」「ニコレットが見たことない奴といるぞ」「見込みがある奴なのか?」

 ひそひそと会話している声が聞こえてくる。ひそひそ話の意味が全くない。

 聞かれたくないなら、もっと徹底してやりなよね。


 ニコレットはそんなことも気にせずさっさと歩いて行く。

 そんな姿に、ここで何をしてるんだよ、と思わずにはいられない。

 これだけ注目を集めるんだから、相当なことをしたんだろうなぁ……。


「こんにちは。ちょっと相談があるんだけど、いい?」

「こんにちは、ニコレット様。ここで話しても良い内容ですか?」

「あ、うん。たいしたことないから」


 受付嬢も慣れているのか、笑顔を浮かべて対応している。

 まあ、他の受付嬢の顔は、引きつってたり目が泳いでいたりと微妙な感じだから、この人だけだけど。

 ニコレット担当受付嬢ってところか。


「私、徴兵の件、断ったでしょ?」

「ええ、事情があるんですよね」

「うん。ちょっとした事情がね」


 こいつ、あえて事情の内容を告げないことで、周りに勝手に想像させてるな?

 この様子を見ると、ニコレットは強者の立場にいる。

 そんな実力のある彼女が参加しないとなると、色々と想像が膨らむ。

 軍部が潜り込ませたスパイだったり、監視者であったり、他国のスパイであったり。

 どんな事情にせよ、深く追求すれば消されるだろうから、皆不用意に口には出さないのだろう。


 策士だなぁ~。

 別に怪しまれても、ニコレットは陽動担当みたいだから、痛くもかゆくもない。むしろ好都合って感じか。


「私的にも申し訳ないって思ってるから、代わりになる子たちを連れてきたよ。もしかしたら、私よりも強いかもね」

「そこまで言われるのですか! 相当な実力者なんですね」

「それは保障するよ。だから、一番近い模擬戦に飛び入り参加させてくれない? きっと面白いものが見れるよ」


 半信半疑で私たちの方を見る受付嬢。

 こんな小娘が実力者だと信じるのは無理な話だ。

 それはわかる。グリーとか、シェミーとかは特に戦うようには見えないもんねぇ。


 でも、みんな異常なくらい強いんだよね。

 私とグリー以外は悪魔に関わる能力持ってるし。

 グリーだって、お姫様のくせに剣の腕ヤバいし。

 このメンバー、最強過ぎないか?


「信じられないなら、戦って実力を証明して差し上げましょうか?」


 わずかに声を弾ませながら、グリーが言った。

 あーあ。完全にスイッチ入っちゃったみたいだ。

 かろうじてお嬢様言葉が残っているけど、目はギラギラしてて、がさつなグリーが現れるのがわかる。


「そりゃいいねぇ。ニコレットが連れてきた小娘たちの実力、見てみたいもんだ」


 そんなグリーの言葉に反応したのは、がらの悪そうな男たちだった。


「俺たちも丁度5人組だし、チーム戦でもやらねか?」

「それは良い考えだね。君たちに勝てば彼女たちの実力もはっきりするしね」


 ふむ。この男たちはかなりの実力者っぽい。

 ニコレットもあっさりと提案を受け入れた。

 う~ん。でも私的に、ひとつ引っかかることがあるんだよなぁ……。


「ニコレット、ちょっと時間頂戴?」

「いいけど、何か問題あった?」

「ひとつだけ」


 ちょいちょいと手招きし、5人で輪になる。作戦タイムだ。

「おいおい、怖じ気づいたか?」なんて、下品な声が聞こえるけど、気にしない気にしない。よくあることだ。


「こうして相談しようってなったことは、やっぱりエイリーもそう思った?」


 にやりと笑ったのは、アエーシュマだ。

 他の3人もそれらしい表情を浮かべているので、考えていることはみんな同じだろう。


「うん。ぶっちゃけ、ひとりでも余裕で勝てるよね?」

「そうだね。その通りだよ。つまんないね」


 私の質問にアエーシュマがうんうんと激しくうなずく。

 この上級悪魔め。お前に敵う人なんて、滅多にいるはずないじゃないか。


「私はひとりで5人相手するのは自信ないけど、他の4人なら余裕だと思う」

「シェミーの能力は戦闘向きじゃないもんね」


 戦闘向きじゃないとは言っても、シェミーの中にはザリチュの記憶がある。魔法は相当な腕前のはずだし、戦闘技術だってあるだろう。

 5人相手するのも、いけると思うけどなぁ……。

 まあ、こんな可愛いシェミーにそんな危険なこと、させませんけど。


「ひとりで5人の相手をするか、それぞれがひとりずつ相手をして、瞬殺するか、どっちがいいかって話ですよね?」


 メリッサの質問は本当にその通りだ。

 つまり、どちらの方が印象に残るかっていう話なのだ。


 そんな悩ましい問いに答えるべく、真っ先に口を開いたのはグリーだった。

 嫌な予感……。


「わたくしが5人の相手をするわ! いいかしら? いいわよね? 久しぶりに剣を振るえるんだもの! 盛大にやりたいわ! 5人じゃ少し物足りないけど、仕方ないわよね。だって、前哨戦だもの! ああ、楽しみだわ!!」


 あの~。グリーさん? とりあえず、落ち着いてください?

 色々とツッコミどころがあるんだけど、まず落ち着け。

 流石に引くわ。


 声をかけてみるが、止まる気配はない。当たり前だ。もう半分以上、がさつなグリーなのだ。

 しかも、様子から察するに、最近は満足がいくまで剣が振れていないのだろう。

 そのせいで、余計に酷くなっている気がする。


 私も他のみんなも止めるのを諦めたらしく、流れに流されることにした。


「相談は終わりましたわ」


 満面の笑みでグリーは剣を抜いた。


「アタシがまとめて相手をしてやるよ」





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