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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第2章 魔王討伐をするようです。/第3節 敵国に潜入しちゃったのでめんどくさいこと全部蹴散らそうと思う
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68 脳筋な踊る戦乙女

「それで、これからどうするの?」


 これ以上踏み込んだ話をされる前に、私は先手を打った。

 いつも話の変え方が下手だのなんだの言われるけど、今回ばかりは仕方ないと思うんだよね。うん。


 みんなもこれ以上聞いてくる気はないらしく、ふざけた表情から真剣な表情へ変わる。これで一安心。

 私の話より、これからのことの方が大事だよね! そんな話後でも大丈夫だよね! まあ、後からもしないけどね!


「どうしようね?」


 困ったように言うのはニコレット。

 そうだよね。きっと、計画について一番考え、下準備してくれていたのは彼女だ。

 私には想像もつかないくらいの苦労をしたんだろう。


 そう思うと途端に申し訳なくなってくるな……。

 でも、だからと言って未然に防げることだったのかと言ったら、微妙なところだし……。

 私だって、こんなに早く来る予定なかったし。だらだらしているはずだったし。


「早いけど、進めるしかないんじゃない?」


 気楽に言うのはアエーシュマ。

 私もその意見に賛成。

 早く来たなら、早く仕事を終わらせて、早く我が家に帰りたい。そして、だらだらしたい。


 アエーシュマの意見に反対する人はいなく、みんなこくりとうなずく。

 まあ、大人しくしてる必要性ってあんまりないもんね。大人しく隠れてても、バレるときはバレるし。


「じゃあ、今後のことについて話し合おうか」

「偉い人がいるところに乗り込めばいいんじゃない~?」


 色々と遠回りするのって、安全だし確実だけど、長いんだよね。めんどくさいって言うか。

 このメンバーなら早々やられることないし、正面突破でいいんじゃないの? いいよね?


 でも、みんなはそう思わないらしく、「お前アホなの?」と言いたげにこちらを見てくる。

 アホで悪かったな!!!!

 こちとら戦うことしかできないんだよ!!!!


「あのさ、もっとよく考えてもらってもいいですか?」


 嫌味ったらしく、アエーシュマが言ってくる。

 う~、確かに脳筋発言だけれども。そこまで否定しなくてよくないかな?!


「一応考えたし!」

「へえ?」

「計画って考えるだけで疲れるしさ、あ、それにどこかで想定外のことが起こったら、軌道修正しないといけないじゃん? 一回立てた計画が無駄になっちゃったんだしさ、もう深く考えずに正面突破の方が楽なんじゃないかな~って」


 今思いついたことを適当に話しているので、どうにも早口になる。

 よく回るなぁ、私の口。


「うん。エイリーの考えたことはわかった。とりあえず、めんどくさいんだね?」

「そういうことだよ、シェミー」


 でも、簡潔にまとめてほしくなかったかな、シェミー。

 そう言うと、私が「めんどくさいから正面突破しようぜ!」って言ってるヤバい奴に聞こえるじゃん。

 間違ってないんだけどさ! 間違ってないんだけどさ!! 言葉にしないでほしかったかな!!


「……エイリーの考えは場合によっては使えるんだけどさ、今回はダメ」

「なんで?」


 でも、場合によっては使える作戦なのか! ただの脳筋の作戦じゃないんだね!

 相手が油断しているところを突くってことか~。無謀に聞こえるけど、攻め込むメンバーが強ければありな作戦だな。

 ふむふむ。私、結構できる子?


「なんでって……。今回、ディカイオシュネーに潜入した目的がなんだかわかってる?」

「偉い奴をぶっとばす」

「……いや、間違ってないんだけどさ、いや、間違ってるか?」

「どっちだよ」

「じゃあ、間違ってる」

「ええ、間違ってるの?!」


 ため息を吐きながら、アエーシュマは言ってくる。


 間違ってないもん!

 だって、私はベルナに、悪魔がいたら倒して、いなかったら偉い奴を捕らえてって言われたんだよ?

 まとめたら、偉い奴をぶっとばすじゃん! 間違ってないじゃん!


「目的は主に3つ。潜んでる悪魔を無力化すること。ディカイオシュネーの首脳部を捕らえ、戦争の被害を最小限にすること。そして、ノエルとデジレを捕らえること」

「最初のふたつは知ってるけど、最後のひとつは初耳だ」

「聞かなくてもわかっててほしいことだけど……。それに、エイリーだって、言われなくても捕まえる気満々でしょ?」

「勿論。デジレのことは一発ぶん殴らないと気が済まないしね」

「まあ、そういうことだよ」


 そうだよね。ベルナだって、他の人だって、ノエルちゃんのことは心配だよね。

 私がディカイオシュネーに来た一番の目的だって、ノエルちゃんとデジレがいるって聞いたからだし。


「その目的を達成するのに、正面突破は向かないのよ」


 ここで、グリーが口を開く。


「悪魔がいて、人間たちを操っているとして、悪魔から見たら人間は捨て駒でしょ? そんな状況で乗り込んだら、悪魔たちは人間を見捨てて逃げるに決まってるわ」

「根性ないね」

「仕方ないじゃない。上級悪魔を倒し、従えているエイリーがいて、何の準備もできてない不利な状態で、戦う悪魔がどれくらいいるのかって話よ」

「エイリーって奴、そう聞くと相当ヤバい奴だね」

「あら、ようやく自覚してくれた?」


 あまりにも嬉しそうにグリーが微笑むので、冗談だったとは言えなかった。

 私、そんなにヤバい奴……? 少しだけだと思ってたんだけどなぁ……。


「後ろにいる悪魔は場合によっては逃げないかもしれないけど、十中八九ノエルとデジレは逃げるはずよ。また、一から探すことになるわね。それはいらない手間だわ」

「まあ、それは確かに」

「だから、今回の場合は向かないってわけ。相手が整えた状況にあえてはまってあげないと、これらをまとめて片付けることはできないわ」

「なるほど。勉強になります」


 流石は王女様。色々と考えてるんだなぁ……。

 私にはそんなこと考えられないよ。

 グリーって本当に王女様なんだねぇ。


「それを踏まえた上で、今後どうするのか考えましょ」


 グリーの言葉に、みんな揃ってうなずいた。



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