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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題/第1節 出会っちゃったよ!
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20 事情なんて聞き出すもんでしょ

 晴れて、アイオーンの3番目の王子と2番目の姫と騎士団長に、友達認定をされた私。


 いえーい?

 これ、喜んでいいのか? なんか素直に喜べないんだけど。


 そんな不思議な気分に浸っていると、私は()()()大切なことを思い出した。

 彼らの流れに流されて、すっかり忘れていた……。彼らの勢いは凄すぎる。


「ねえ、何でこんなところにいるのさ?」


 一番初めに思った疑問。

 騎士団長はまだしも、一国の王子と姫が簡単にこんなところにいちゃ駄目だろ。この森は、最近危険度が急上昇中なのだから。


「えーと、その」


 ぎくり、とわかりやすく顔に出す、ファースたち。目線をそらしてるし、かなり怪しい。怪しい以外の何物でもない。

 まあ、お忍びだろうし、何か事情があるのは重々承知だ。


 でも聞きたい。だから聞きたい。

 それが私だ。


「あのね、この森は今、魔物が謎に大量発生してて、危険度が増してるの。もしかしなくても、知らなかった?」


 え、と彼らは驚きの色を見せた。やっぱり知らなかったんだ。だよね、そうじゃないとこんなところに来ないよね。

 外の情報、というか、冒険者間で出回ってる情報に、彼らが疎いのは当たり前と言ったら当たり前なんだけど。

 だってこの世界、インターネットもスマホもないし。


 王族と騎士団長、それぞれ忙しいし、なかなか情報も入ってこないよね。

 それに、危険度が増したのは本当に最近のことだし。


 もともとこの森は、安全な方で、初心者にはもってこいの魔物狩りのスポットだった。だけど、最近ここには、本来いないはずの中級の魔物が出現し始めた。

 初心者の冒険者が被害にあって、そのことが発覚した。死人も出てるらしい。

 可哀想だと思うが、そうは言ってられない。冒険者をやる以上、命の危険はまとわりつく。


 そんなことがあって、冒険者省は早急に対策をするために、私に依頼した。というか、押し付けられた。

 本当に、私はいいように使われてる気がするんだよなぁ。まあ、こんなの放っておけないしね。


「だから私としては、あんたたちがここにいることが不思議なわけ。理由があるんでしょ? 教えてよ」


 秘密だろうが、何だろうが話は聞き出す。これが私のスタイルだ。

 事情は知ってるけど、そんなの関係ない。だって、私は知りたいんだ。


「……わかったわ。でも、広めないでくれると嬉しいわ」

「善処する」


 私が折れないことを感じ取ったのか、グリーは話す決意をしたようだ。それは、ファースもレノも同じみたい。

 いい判断するね。好感が持てるよ。


「ここに、()()()()()()()()()()()()()があると聞いたのよ。それを探しに、私たちはこの森に来たの」


 秘宝だからあまり多くの人に知られたらまずいでしょう? と、グリーは困った顔で言った。


 …………ちょいと待て。


 なんだって?ここにあるのは、マスグレイブ家に伝わる秘宝だと?!

 マスグレイブ家に伝わる秘宝、そう言ったよね?! 王権を巡って探されてる、あの?! てことは、ファースやグリーも、実は王権を狙ってたわけ?!

 なんか凄いわ、この国の王族さん達。


「てことは、ファースもグリーも、実は王様になりたい願望があるわけ?」


 隠しても仕方ない。私は端的に質問をした。


「断じて違うっ! 兄上達の争いを見ていて、俺はお腹がいっぱいだ!」

「そうよ! なりたいと言ったら、お兄様やお姉様に殺されるわっ!」


 その質問に対し、物凄い勢いで首を横に振りながら、ファースとグリーは否定してきた。 首が千切れそうな勢いだ。


 うわー、必死だなぁと思いながらも、あの3人ならやりかねないなぁ、なんて思った。


「というか、なんで()()()()()エイリーが知っているんだ?」


 唯一、焦りを感じないレノは、そんな疑問を冷静に抱いたようだ。そういえば、とファースもグリーも気がついたようだ。

 良かった、それスルーされたらどうしようかと思ったよ……。


「私、国王様から依頼を受けたの。王家に伝わる宝石を探せ、ってね。まあ、今回ここに来たのは無関係なんだけど。というか、ここにあるって知らなかったし」

「そういうことか」


 そういうことだ。


 ていうか、もしもここに秘宝があったらラッキーじゃん! 冒険者省で受けた依頼も、国王様から受けた依頼もどっちもいっぺんに片付けられる。

 ……まあ、そう簡単にいかないのが現実なんだけど。


「ま、ファースもグリーも王権を狙ってるわけじゃなさそうだし、友達として、友達として、協力しない?」


 “友達”という単語を、これでもかってほどに強調する私。

 それにどうせ、彼らは巻き込まれただけなのだろう、王権を巡った戦いに。

 国王の実の子供なのだから仕方ないんだけどさ。理不尽だよね、可哀想。


「……いいのか?」

「私なんも情報持ってないから、協力して欲しいし」


 ファースの質問に、私は本心で答えた。

 そもそも私は、情報収集がうまくいってないのだ。1番情報を持ってそうな友人()がいるのだから、使わない手はないだろう。


「よろしく頼む」

「よろしくね」


 うまくのって来てくれた彼らに、私は笑顔で、


「こちらこそ」


 と答えるのだった。

 よし、これでがっぽがっぽだ!

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