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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第2章 魔王討伐をするようです。/第2節 それぞれの思惑が明らかになるようで……?
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48 突然始まるのが女子会

「さて、エイリー。私からも話があるんだけどいいかしら?」


 ブライアンが部屋から出ていくと、私の方を見て、にっこりと微笑むミリッツェア。笑顔が真っ黒い。

 怖い、怖い。怖いんだけど、ミリッツェア?!


「……私は話したいことないかなっ!」


 そろそろ帰りたいなー的なニュアンスで言ったのに、ミリッツェアに、


「なら、次は私の番ね?」


 と、一蹴されてしまう。

 恐るべし、ヒロイン。流石、魔王に口喧嘩で勝っただけある。


「話ってナンデスカ」

「なんで片言なのかしら?」

「ミリッツェアが怖いからだよ?!」


 自覚を持とうよ、自覚を!

 貴女、自分が思ってるより怖いんだからね?!

「心外ね」とか言っちゃってますけどね、事実だからね?! 


「……ねえ、エイリー」

「ひえええええええ」

「……貴女にそんなに怖がられるのって、なんか複雑だわ。貴女の方がよっぽど怖い」

「異議あり! ミリッツェアの方が断然怖い!」


 真顔で冗談のようなことを言ってくるもんだから(私は冗談だと信じたい)、私は即座に否定する。


「シェミーもそう思うよね?!」


 そして、すかさず次の手を放つ!


「この流れで私に同意を求めてくるの……?」


 シェミーは何やらぶつぶつと呟いているようだけど、そんなの気にしない!

 シェミーだって、絶対、ミリッツェアのことを怖いと思ってるはずだ。私とミリッツェアじゃ、過ごしてる時間が違うし!

 これは勝ったな! 勝っちゃったな!


「シェミー、流されちゃだめよ。エイリーの方が怖いと思ってるんでしょ?」

「ええ、ミリッツェアも乗ってくるの?」


 ミリッツェアも私の攻撃を真似してくるが、痛くもかゆくもない。

 だって、シェミーは私の味方だからだ!


「シェミー、正直に言ってごらん?」

「そうよ、遠慮することないわ」



「「どっちなの?!」



 不覚にもミリッツェアとハモってしまうが、聞きたいことが一緒だったので仕方ない。


「ふたりとも、勢いがすごいよ……」


 と、シェミーはため息を吐くと一言。


「正直に言うと、どっちもどっちかな」

「「なんで?!」」

「そういうところだよ……」


 遂には、はははと乾いた笑いを浮べている。

 おのれ、ミリッツェアめ……!


「そんなことより、話が脱線してるけど」

「あ、そうだったわね。エイリーと話してると、どうも話が遠回りするのよね」


 シェミーの指摘に、ミリッツェアがはっとした表情を浮べる。


「全部私のせい?!」

「ごめん、エイリー。これは否定できない」

「なんですと?!」


 話が脱線するのは、私のせいなの?!

 確かに話を脱線させてるような気もしなくもないけど、全部が全部私のせいってわけじゃあないでしょ! 失礼な!


「……話を戻すわね。こういうくだらない話をしてたら、本題までどうでもよく思えてきちゃうじゃない」

「じゃあ、話さなくてよくない? お開きにしましょ?」

「ダメよ」


 流れで終わりにしてやろうと思ったのに、ミリッツェアはひっかからなかった。手強いな……。

 普通に忘れてくれて、いいんだけど。そっちの方が私的にありがたいんだけど。


「……話って?」


 できれば聞きたくないけど、今だって聞きたくないけど、ミリッツェアは引き下がることはないので、仕方なく私から聞く。

 手っ取り早く終わらせてくださいっ!


「エイリー。ブライアン様が浮気相手ってどういうことかしら?」

「はへ?」

「さっき、言ってたじゃない。ブライアン様と浮気するって」

「あの~、ミリッツェアさん?」


 若干、話がねじ曲げられてるような……。


「エイリー、貴女、ブライアン様に恋心は抱いていないんじゃなかったの?!」

「これっぽっちも抱いてないけど?! むしろ、嫌いだけど?!」

「じゃあ、なんでブライアン様を浮気相手に選ぶのかしら?!」

「男の人で知り合いが、ブライアンくらいしか思いつかなかったからだけど?!」


 言わせんなよ。こっちが悲しくなってくるでしょ。

 どうせボッチですよーだ。いいもんね、ボッチそれなりに楽しいんだから! くそっ!


 というか、どうして、こんなに面倒くさい女になってしまったんだ?

 これっぽちもそんな仕草見せなかったじゃん。

 いきなりすぎて、ついていけないんですけど……?


「……ぷ、ふふふ、ははははははっ! あー、可笑しい」


 私が頭の中にクエスチョンマークを浮べていると、ミリッツェアがいきなり笑い出した。遂に狂ったか。


「ごめんなさいっ! 笑うつもり、なかったんだけど、ははは、エイリーがあまりにも必死なもんだったから、つい……」

「あらぬ疑いを晴らそうとして、何が悪いかな?」

「ごめんなさい。本当にごめんなさい。可笑しくて、可笑しくてっ!」


 そう言いながら、今度は涙を流し始めた。

 ……情緒不安定? ヒロイン、ヤンデレ属性持ってたっけ?


「とりあえず、笑うか、泣くか、怒るか、謝るか、どれかにしたら?」

「はは、本当にそう思うわ……」

「落ち着くまで、待ってるから」

「……っ! 本当、そういうところよ」

「何が?」

「エイリー、そういうところだよ」

「本人、全くわかってないんだけど??」


 ミリッツェアが意味不明な発言をしたが、その言葉の意味をシェミーはわかっているようだった。


 わかってないの、私だけ? なんで?



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