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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第2章 魔王討伐をするようです。/第2節 それぞれの思惑が明らかになるようで……?
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38 たいしたことじゃないじゃんっ!

「さあて、何から話そうか?」

「……雰囲気の切り替えが怖いんですけれども?」


 鬼畜国王は、私たちをからかっていたふざけた雰囲気から、一瞬で威圧的な雰囲気になった。


 これ、ただの報告会だよね? 何でこんなにピリピリした雰囲気出してるの?

 私、何かまずいことしたっけ? 


 ……う~ん、してないこともないけど、たいしたことじゃないよね?


 やっぱり、パーティーでの挨拶がまずかったのかなぁ。でも、慣れてないんだから、仕方ないよねぇ。


「とりあえず、ご苦労だったな、エイリー」

「あ、ありがとうございます?」

「もっとお礼を言うなら、ちゃんと嬉しそうに言ったらどうだ」

「……善処します」


 無理無理無理無理、絶対無理!

 この状況で、にっこりするなんて絶対無理!


 ねぎらうんだったら、ちゃんとねぎらってくれないかな?!

 そんな威圧的な雰囲気放ちながら言われたら、こっちだってちゃんとお礼言えないだろうがっ!


「エイリーの働きについては、ファースから聞いているし、マカリオスからも連絡精霊(アンゲロス)が来たので、概ね把握している。想像以上の成果を上げてくれたようだ」

「……褒めてます?」


 褒めてるように全然聞こえないんだけど?


「だが」

「無視ですか」

「ひとつだけ、苦情があった」

「苦情?」


 はて、と首をかしげると、ファースが呆れたようにため息を漏らす。


「心当たりが全くありませんって顔しないでくれ」

「全くないわけじゃないけど、そんなにたいしたことしてないよ?」

「……俺はその苦情を聞いたとき、頭を抑えたけどな」

「え、じゃあ、ファースが帰った後の話なの?」


 ファースが知らないってことは、ファースがいないときの話だよね?

 となると、タローマティ関連?

 リュリュの体を取り返せなかったのが、いけなかったのかな。それとも、魔王と勝手にドンパチやっちゃったこと?

 あ、逃がさないで、倒しちゃった方が良かったのかな?! さっさと倒しちゃった方がいいもんね!


「うん、わかったよ!」

「……今までわからなかったことが問題だけど、うん。まずは確認しよう。エイリーは何がいけなかったと思ったんだ?」


 こうして確認してくるあたり、ファースはまるで私を信用していない。

 そんなに信用ないかな、私?!


 いいだろう! 私の華麗なる名推理で、ファースの信用を勝ち取ってみせようじゃないか!!


「魔王を倒さなくて、ごめんなさいっ!」

「「……は?」」


 私がばっと頭を下げると、国王様とファースが同時に声を漏らした。何言ってるんだこいつって感じだった。


 …………あれ? 思ってたような反応と違うんですけど?


 間違ってた? いやいや、そんなわけないだろう。だって、他にたいしたことやらかしてないし。


「……あ、うん。エイリーの考えはよくわかった。確認して正解だった」

「そんなに信用ないかな?!」

「うん。そういうぶっ飛んだ発想をするところが」

「そんなにぶっ飛んでないけど?!」

「……魔王を“倒せなかった”ならともかく、魔王を“倒さなかった”ことで謝るのは、この世界でエイリーくらいだと思うぞ」

「そんなことないと思うけどなぁ」


 だって、世界は広いじゃん。こんな考えを持った人が他にいても可笑しくないでしょ!


「そんなことあるぞ。

 ……まあ、ともかく、それは違う。マカリオスの国王陛下は、魔王を撃退してくれたことには、感謝を述べていたしな」

「そうなんだ。じゃあ、何?」


 となると、タローマティ関連も違うよなぁ。

 全く心当たりがなくなったぞ。私、悪いことしてなくない?


「エイリー、お主、帰ってくるときどうやって帰ってきた?」

「え? 魔王を追い払ったので、そのまま召喚獣に乗って帰ってきましたけど?」


 それが何か問題でも?


「……問題だらけだろうが」

「ひえっ」


 鬼畜国王が氷点下を感じさせる声を出す。背中に悪寒が走った。怖い。


「わ、私はやることをやって、帰って来ただけですよ?!」


 だけど、そんなのに負ける私じゃない。

 反論してやる! 口喧嘩弱いけど、度胸はあるのだ!!


「国王やお主の家族に挨拶もなしにか?」

「ブライアンに『後はよろしく』っては伝えてきましたっ!」

「それで済むと思ったのか?」

「はいっ!」


 というか、それで済ませたかったんだよ!

 マカリオスの国王に会うのは、なんか気まずかったし(最初の謁見でやらかした感があったから)、ネルソン公爵家は帰ったら面倒くさいことは目に見えてたし!

 というか、そもそも貴族のしきたり自体がめんどくさい! 

 いいじゃん、私、ただの冒険者なんだし! 好きなときに帰っていいじゃん!


「……済むわけないだろうが」


 冷静に入る、ファースのツッコミ。


「マカリオスの国王は幸い、お主に対して怒りは感じていないようだ」


 国王様は諦めたのか、声から棘が抜けていた。

 なんか知らんが、私、勝った?! 国王様を折らせた?! やっほ~い。


「じゃあ、なんで苦情が?」

「ネルソン公爵家が一騒動起こしたそうだ。なんとか収めたようだが、かなり苦労させられたようだ。それに対する苦情が入っている」

「……なんかごめんなさい」


 私が悪いわけじゃないのに、ちょっと申し訳なくなった。

 ネルソン公爵家の異常さは、身を持って感じているからね。うん。抱きしめ地獄は、ちょっとうん。思い出したくないね。


「悪いとは思ってるんだな?」

「多少は」

「多少は?」


 ぎろりと国王様の目が光る。

 ひいいい、そんな目で睨まないでよ! 殺されそう!

 だって、私だけが悪いわけじゃないじゃん! 問題起こしてるの、父さんたちじゃん!


 …………まあ、鬼畜国王の前で、そんなこと言えないけど。


「申し訳ないと思ってます! 国王陛下にそうお伝えください!!」

「最初からそう言え」

「はいっ!」


 ファースが呆れたように、「俺がずっとついてないと駄目なのかな……」なんて零してたのは、聞かなかったことにしようと思う。


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