表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第2章 魔王討伐をするようです。/第1節 踊る戦乙女の里帰り
176/232

28 いちゃラブ回、挟みます(糖度増し増し!)

 ファースのせいで、空気が凍った避難部屋。

 当の本人はそんなことを気にすることなく、ブライアンたちの姿を探した。


 え、この状況、真顔でスルーしちゃうの?!

 慣れてない?! めっちゃ慣れてない?!

 え、ファースが怒るとこれって当たり前のことなの?!


「うわー、ファースがマジギレするの久々に見た」


 マジで怖え、と呟いているが、レノは呑気そうだった。


「……その様子だと何回も見たことあるって感じだね?」

「ああ。でも、両手で数えられるほどだ。ファースがあそこまで怒ることは滅多にないからな」

「だよね。私、初めて見たもん」


 穏やかな人ほど怒ると怖いって言うけど、迷信じゃなかったんだね……。

 絶対ファースを怒らせないようにしよう、と本日何度目かの決意をする。


 だって、本当に怖いんだもん!

 怒鳴るんじゃなくて、静かにじりじりと追い詰めて行くんだもん!

 冷笑を浮べてるんだもん!


 私の知ってるファースじゃなくて、なんだか寂しくなった。


「マジギレしちゃうくらい、ファースお兄様はエイリーのことが好きなのよ」


 ふふふ、とグリーは楽しそうに笑う。その言葉に、レノも「だな」と言って賛同した。


 ぼっと顔が熱を帯びる。


「ちょ、ちょ?! ふたりとも何言っちゃってるの?!」


 恥ずかしいんだけど?! 不意打ちやめてくれない?!


「あら、これくらいで照れる必要なくない?」

「ある! 私には大いにある! 私の恋愛経験舐めるなよ」

「そうよね。エイリーが経験豊富なわけないわよね」


 …………確かにその通りだけど、あっさりと認められるとそれはそれでムカつくなぁ。


 そんな感じで、空気が凍りきった部屋で、わいわいと騒ぐ私たち。

 この状況を気にしてないファースもファースだったけど、私たちもかなり神経が図太かった。


「声が大きいぞ? 部屋中に響き渡ってるぞ?」

「だろうね」


 誰も喋るどころか、息をするのにも気を遣ってる感じがするもんね。

 誰のせいって言ったら、戻って来たファースのせいなんだけどね。あと、ちょっと私のせいもあるかもしれない。


「ブライアン殿とミリッツェア嬢は、少々トラブルがあったらしくて、別室にいるらしい」


 この部屋の責任者にでも話を聞きに行っていたのだろう、ファースはそんなことを言った。

 この方、さっきまであんなに激おこだったのに、冷静すぎませんかね?


「部屋の場所は教えてもらったから行こう」


 私の手を自然にとりながら、ファースは部屋の出口へ向かった。


「……へっ?!」


 あまりに自然すぎたので、私は反応に遅れてしまう。


 ちょっと待って?! この流れでなんで手を繋がれないと行けないの?!

 私、逃げも隠れもしないし、歩くのだってファースより速い自信あるよ?!

 なのにどうして?!


 前を歩いているファースを見るけれど、やっぱりまだ腹が立っているのか、雰囲気が冷たい。

 だから、なんとなく聞きづらくて、後ろからついてきているグリーとレノに目で訴えかける。


 すると、グリーがため息を吐きながら、


「ああ見えて、ファースお兄様、まだ頭に血が上っているのよ。だから、大好きなエイリーの手でも繋いで落ち着きたかったんじゃない?」


 なんて、言ってきた。


「はああああ?!」


 なんだそれ、なんだそれ、なんだそれ!!!

 体中が熱を帯びてくる。きっと、私の顔は真っ赤なんだろう。


「男なら、抱きしめろよな」

「本当よね。たまには強引なことも必要だと思うわ」

「まあ、あいつはヘタレだからしょうがないだろう」


 君たち、何好き勝手言ってるんですかねぇ?!

 だ、抱きしめられるなんて、ハードル高くない?! 体密着するよねぇ?!


「それの上を行くエイリーも流石だと思うけどね」

「エイリーの場合、ヘタレって言うか、鈍感なだけだろう。あと、恋愛事情に疎すぎる」

「エイリーに恋愛をリードすることなんて、まず無理よねぇ」


 君たち、いい加減にしてくれませんかね?!

 私は手を繋いでるだけで、パニックなんだけど?! この状況が意味わからなすぎるんだけど?!


 幸せそうにからかってくる婚約者同士(グリーとレノ)に文句のひとつやふたつ言ってやりたいが、そんなことも言えないくらい、心臓がうるさい。

 ファースにつかまれた手が、熱い。


 ――――私は、おかしくなってしまったのだろうか?


 こんな、手を繋いでるくらいで、動揺しちゃうだなんて。らしくない。


 どうすることが正解なのかわからないから、相変わらずグリーとレノの方を見ていると、私の心情を読み取ったようにグリーが口を開いた。


「ふふふ、お兄様をよろしくね?」


 からかうように、グリーは笑った。だけど、その笑いには兄を思う愛情が確かに含まれていた。

 そんなものを見てしまっては、無視することなんてできない。

 私は視線を、ファースの背中に移した。広い、男の人の背中だ。



 …………もうどうしろって言うのさっ! 意味がわからないんだけどっ!



 でも、ファースの様子がおかしいのは事実だ。さっきの私の驚いた声にも反応しなかったし、グリーたちの会話も聞こえてないみたいだった。

 ……まあ? 手を繋ぐくらいでファースが落ち着くなら、手くらい繋いでおいてもいいんだけど?


 ドキドキする心臓を無視しながら、私はファースの手を強く握り返した。


「……ファース、私の代わりに怒ってくれて、ありがとうね」


 おまけに、小声でそんなことを呟いた。

 返事も返って来なかったし、それらしい反応もしなかったので、多分聞こえてないんだと思う。

 まあ、私がお礼を言いたかっただけだからいいんだけど。



 …………ファースの耳がほんのり赤に染まったことは、照れくさかったから気づかないふりをした。



なんだこの純粋すぎるカップルは……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ