27 踊る戦乙女という存在に慣れてきたお三方
久しぶりの更新です。すみません……。
下級悪魔たちを倒して、私は一応、マップでタローマティの姿を探した。だけど、見つからず、この辺にはいないことがわかった。
まあ、いたら直接私のことを倒しに来るだろうし。
様子見ってとこなのかな。ムカつく。
とりあえず、ファースたちと合流しようっと。
ファースたちを探し、街の片隅で一息吐いている彼らを見つけた。
あの様子だと粗方終わったみたいだね。
想像以上のペースなんだけど。流石すぎませんかね?
「おーい。終わった〜?」
声をかけながら、ファースたちの前に着陸する。
「ああ。もう残ってないと思うぞ」
私が空から降りてくるのになれたのか、ファースたちは驚くことをせず、当たり前のように受け入れていた。
……驚いてくれないの、それはそれでつまらないんだけど。
ここで、むうっとしたらからかわれそうだったから、ふてくされるのは心の中だけにしておこう。
「そっか。早かったね」
「街で戦っていた冒険者たちが優秀だったんだよ」
「へえ。それはちょっとびっくり」
アイオーンよりマカリオスは魔物の発生率は低いから、冒険者の数は圧倒的に少ない。魔物を狩れなきゃレベルも上がらないから、冒険者の質はそんなによくないのかなと勝手に思ってたけど、そこはそうでもないみたいだ。
冒険者が少ない分、獲物の競争が激しくないから、経験値がたくさんもらえるってことなのかなぁ……?
「それで、エイリーの方はどうだったんだ?」
聞くまでもないけどな、と笑いながら、ファースが聞いてくる。
「喋る邪竜一匹と下級悪魔二匹を、あっさり倒してきたよ。手応えなくて、つまらなかった」
「……そんな状況で、手応えなくてつまらないって言うのは、エイリーだけだと思うぞ?」
驚きというよりは、呆れた顔をしてファースが言う。
その言葉に、グリーもレノもうんうんと頷いた。
なんか、慣れてきてない?
このパターン、お決まりになってきてない?
しかも、心の底からやってるんじゃなくて、面白がってやってない?
とりあえず、こう反応しておけばって感じじゃない?
なんとなく、というか、私の直感というか、勘というか……。全感覚が私に訴えてくる。
――――こいつら、私が何をしようが驚かないし、心底呆れることもないぞ。
つまりはそう、ファースもグリーもレノも、私のことを大変よくわかるようになったということだ。
なんか、嬉しいけど、嬉しくない。複雑な気分……。
多分、私は微妙な顔をしていたんだと思う。
どうしたの、と3人が口を揃えて聞いてくる。
「3人とも、私のことよく理解しているなぁと」
「当たり前じゃない。最初の方は常識が通用しなくて驚いたけれど、それがエイリーだってわかるようになってからは、簡単よ?」
「はいぃぃ?」
「エイリーはわかりやすいもの」
「はいぃぃ?」
グリーがドヤァとしながら言い切ると、ファースもレノも同意した。
ほんとお前ら、仲良しだなっ!
息ぴったりすぎて、腹が立つんだけどっ!
「ほらほら、今だって顔に出てるぞ? ははは、お前本当に面白いな」
「何がおもしろいんだか、私にはさっぱりなんだけど!」
そんな私のことは放っておいて、レノがケラケラと笑い出す。
なんなんだこいつ! 笑いのツボおかしいんじゃないの?!
「とりあえず、帰ろうか。後のことは、勝手を知った冒険者に任せた方が良さそうだし」
私とレノが言い争いを始める前に、ファースが口を挟んだ。
すげえ、絶妙なタイミングなんだけど? 何この人、超怖い。
「それもそうだね。私、お腹空いたよ」
というわけで、私たちは城に戻ることにした。
* * *
「ただいま戻りましたぁ!」
パーティーに集まっていた貴族たちが避難していた一室の扉をどーんと遠慮なく私は開ける。
中は想像以上にシーンとしていて、私の声がよく通った。
そして、私たちの姿を見るとざわざわとしだした。
何故だか皆さん、不安そうな表情だったり、困惑した表情だったりしている。
あれぇ? この空気なんかおかしくない?
普通、泣いて叫んで喜ぶところじゃないの?
どういうこと?
そう伝えるように、後ろに立ってるファースたちを見ると、3人とも困ったように頭を抱えていた。
ますます、どういうこと???ってなるんだけど。
なんか私が悪いみたいだから、そういう反応やめてほしい。
「え? 何? 私、悪いことでもした?」
「あー、うん。エイリーは何も喋らないで」
「はい? 意味がわからないんだけど?」
「いいからお願いだから!」
そんな風に切実に頼まれちゃあ、仕方がない。
私はおとなしく黙って、前に出てきたファースの後ろに隠れていることにした。
「皆様、魔物の脅威は去りました。安心してください」
ファースが社交スマイルを浮かべる。
そんなファースの言葉を受けて、またざわざわと室内がうるさくなる。
耳をすませて、言葉を拾ってみると。
「いくらなんでも早すぎないか?」
「邪竜に、下級悪魔がいたんでしょう? 本当に倒したのかしら?」
「逃げ帰ってきたんじゃないの?」
すげえ失礼な言葉だらけだった。
こんなことなら、聞くんじゃなかった。
頭にきた。
お前らを守るために戦ったっていうのに、何その言われよう。
貴族だかなんだか知らんが、容赦はしないぞ、おい。
私がブチギレようとすると、ファースが口を押さえてきた。
「邪魔しないでよっ!」
「俺がなんとかするから、お願いだから黙ってて?」
「こっちは言われたい放題で、腹が立ってるんだけど?」
「そんなのは俺もだよ。だから、俺に任せて?」
にっこりと笑うファースだったが、うん。笑ってないね。
すげえ、怖いんだけど。人を凍死させられるんじゃないの?
激おこだ。激おこファースだ。
……ファースを怒らせないようにこれから気をつけよう。
そう誓って、私は引き下がることにした。
そんな私を見て、満足そうに頷いたファースは、口を開いた。
「ご心配には及びませんよ。敵は殲滅しました。踊る戦乙女が瞬殺しましたよ」
ファースの声音が低くて冷たいからだろうか。室内が驚くほど静かになる。
流石、王族さまさまだ。
「信じられませんか? まあ、常識の範疇を優に超えているので無理もないかもしれませんね。だったら試してみますか?」
その言葉に、誰かが、え、と声を漏らした。
もちろん私も心の中で、え、と漏らしたよ。
おいおいファースさん、あんた何言ってんの?!
私にそんなめんどくさいことさせようとしてるの?!
「もっとも、アイオーンの国王に認められるほどの、そしてマカリオスと協力体制を結ぶほどの実力を持っている踊る戦乙女に、10秒持つ者がこの中にいるとは思えませんけどね」
そこで、ファースさんは嘲笑を浮かべた。
怖い、怖いよ、ファースさん。
「皆様は踊る戦乙女を舐めすぎです。やろうと思えば彼女ひとりの力で、この国を滅ぼすこともできるんですよ」
やろうと思えばできそうだけど、そんな物騒なことは微塵も興味ないよ。
一応、母国だしね。
「それにもし仮にそうなったとして、私たちアイオーンは、踊る戦乙女の味方につきますよ」
おいおい、そんなこと言っちゃっていいのかい。
そんなこと勝手に言って、鬼畜国王だとか変人兄姉に怒られても私知らないからね。
「不用心な発言は控えた方が身のためですよ。いつ、踊る戦乙女の逆鱗に触れてしまうかわからないですし」
ふっと嗤うと、ファースは口を閉じた。
部屋の空気が一気に下がった。
怖ええ、ファースさん、まじ怖ええ。
この人、絶対に敵に回さないようにしよう。
命の危険はないかもしれないけど、精神が死ぬ可能性は大いにありえる。
激おこファース君なのでした。怒らせないようにしよう……。




