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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第2章 魔王討伐をするようです。/第1節 踊る戦乙女の里帰り
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22 適材適所って大事です。

 さあて、始まりました。パーティーと言う名の地獄の時間。


 あのあと、ミリッツェアやリュリュと話したり、ファースやブライアンと事前打ち合わせをしたり、そんなこんなであっという間にパーティーが始まった。始まっちゃった。


「……ねえ、ファース。本当に参加しなきゃダメ?」


 会場のドアの前で、私は最後のだだをこねる。


「ドレスも着たし打ち合わせもしたのに、結局それか」

「……嫌なものは嫌なんだよ」


 なんかちゃっかり、私挨拶することになってるし。

 そんなの全く聞いてないし。挨拶の言葉も考えてないし。


 ファース曰く、「いつも通りで大丈夫だ」らしい。

 自分で言うのもあれだけど、いつも通りでいいはずがない。でもだからといって、しっかりした挨拶ができるかと聞かれたら、答えはNOだ。


「挨拶が緊張してるのか?」

「いやそれは全く」


 緊張ってよりは、めんどくさいが勝っている。

 そもそも、参加するのも嫌なパーティーに緊張もくそもあるか。


「そこを即答するとは流石だな」

「……褒めてる?」

「半々っていったところかな」

「なにそれ」


 そんな返し方されたのは始めてだ。

 思わず口元が緩んでしまう。


「まあ、ミリッツェア嬢がしっかりとした挨拶をしてくれるだろうから、エイリーは『魔王討伐、皆で協力して頑張ろう!』って鼓舞する感じでいいと思うぞ」

「あ、それならできそう」

「だろう?」


 ファースがにこりと笑って、手を握ってくる。流れるような動きだった。


 ……エスコートは慣れてるんだな、こいつ。

 なんだかちょっと胸がもやっとした。


「どうかしたか?」

「……なんでもない」


 そうこうしているうちに、私たちの名前が呼ばれ、豪華なドアが開いた。



 * * *



 パーティー会場の壇上で、ミリッツェアがぺらぺらと素晴らしいお言葉を並べている。まあ、難しくて私には理解できないけど。

 なんというか、堅苦しい。私にはこんな挨拶、無理だわぁ。

 ミリッツェアすげえ。


 なんて思っていると、


「では、ここで踊る戦乙女(ヴァルキリー)として名高い、エイリー様よりお言葉をいただきます」


 と、挨拶をしていたミリッツェアに名前を呼ばれてしまった。しかも、とっても堅苦しかった。


 私は例のごとく、ぼうっとしながら話を聞いていたので、反応が遅れる。

 あれ、今もしかして、私の名前呼ばれた?、みたいな感じ。


 ミリッツェアに目で確認すると、ミリッツェアも「ええ呼びました」と言う目で私を見つめ返してくる。


 なんだ、本当に呼ばれてたのか。呼ばれなきゃよかったのに。永遠に呼ばれなきゃよかったのに……。

 なんて、未練がましいことを思いながら、壇上に上がった。


 …………ドレス動きにくい。


 私が壇上に上がると、ざわざわと少し会場が騒がしくなった。

 なんでだろう、と疑問に思ったが、すぐに原因ははっきりした。


『どうして、ルシール・ネルソンが壇上に上がったんだ?』

『まさか本当に、ルシール様だなんて……』


 あ~、はいはい。そういうことね。完全に理解した。

 悪名高きルシール・ネルソンが、まさかこんな英雄になって戻ってくるなんて、信じられるわけないよね。私も信じられないわ。

 でも、残念ながら事実なんだよねぇ。


 散々言われてるのでこういうのにはもう慣れたが、逆に言われすぎているのでうっとうしい。

 別にいいじゃん! 悪役令嬢が英雄やったって!


 …………いや、それは普通に考えておかしいな。


 黙っていても仕方なので、拡張魔法(マイクみたいな性能を持つ)を使い、私の声が広い会場に響き渡るようにして、話し始める。


「え~、テステス。聞こえてる?」


 私の声に会場が一気に静まる。

 静かにしてくれたのはありがたいんだけど、こんな一瞬で静かになられても困る。怖い。


「あ~、聞こえてるみたいだね。じゃあ、簡単に挨拶させてもらいます。

 どうも、私は踊る戦乙女(ヴァルキリー)こと、エイリー。気軽にエイリーって呼んで。とういうか、そうして。

 私の外見が気になるのはわかるけど、説明は長くなるので省略ね。簡単に言うと、私とルシール・ネルソンは別人。これだけは、覚えておいて」


 フリーダムに話す私を見て、皆ぽかんとしている。

 けらけら笑いながら見てるのは。ファースとグリーとレノだけだ。

 隣にいるミリッツェアさえも、戸惑いの表情を浮べている。


 この挨拶、こんなにおかしいかな?

 いやまあ、普通じゃないけど。そこまで? ぽかんとするほど?


「え~と、堅苦しくて長ったらしい挨拶が苦手なので、簡潔に言うね。

 つべこべ言わずに私に任せて。私が魔王をぼっこぼこにするんで。不安や心配になったりしないでいいので、サポートよろしくお願いします。

 なんとかなるって。所詮、(人の睡眠を妨害する)魔王なんだし。力を合わせればなんとかなります。

 皆で頑張ろう! というか、魔王倒すのは私なので、手を出さないでください」


 一気に言いたいことを言い、私はふうと息を漏した。

 こんなもんでいいのかな? 全く挨拶になった気がしないんですけど。


 そもそもおひとり様で冒険者やってるんで、鼓舞するために言葉をかけたことなんてなかったわ。

 できそうだと思ってたけど、無理だわ。自分をちょっと過信しすぎてたわ。


 これにこりたら、二度と私に挨拶をさせないことだな。

 この微妙な空気感だと、挨拶まわってこなそう。


「こんな感じで良いですか?」

「あ、はい。ありがとうございました」


 呆然としていたミリッツェアが、慌てて言葉を発する。


「私たちにはこんなにも頼もしい、戦乙女がついています。大丈夫です。私たちは勝利を掴むことができます。皆様、ご協力のほどお願いいたします」


 良い感じにミリッツェアが話をまとめると、ぺこりとお辞儀をした。

 私も空気を読んでお辞儀をしておく。



 …………やっぱりさ、こういうのって適材適所だと思うんですよ。



カクヨムというサイトで、カクヨムコンテストという書籍化のチャンスがあるコンテストがあるんですけど、それに悪役令嬢ものの新作を投稿しています。

読者選考というものがありまして、読者様からの評価が多いと最終選考に残れる、というものです。

カクヨムのアカウントを持っている方も、持っていない方も(たぶんPV回るだけでもランキングに関係すると思うので)、応援よろしくお願いします。


『悪役令嬢は今日も今日とて恋愛相談を待っている。』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054905501029

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