22 適材適所って大事です。
さあて、始まりました。パーティーと言う名の地獄の時間。
あのあと、ミリッツェアやリュリュと話したり、ファースやブライアンと事前打ち合わせをしたり、そんなこんなであっという間にパーティーが始まった。始まっちゃった。
「……ねえ、ファース。本当に参加しなきゃダメ?」
会場のドアの前で、私は最後のだだをこねる。
「ドレスも着たし打ち合わせもしたのに、結局それか」
「……嫌なものは嫌なんだよ」
なんかちゃっかり、私挨拶することになってるし。
そんなの全く聞いてないし。挨拶の言葉も考えてないし。
ファース曰く、「いつも通りで大丈夫だ」らしい。
自分で言うのもあれだけど、いつも通りでいいはずがない。でもだからといって、しっかりした挨拶ができるかと聞かれたら、答えはNOだ。
「挨拶が緊張してるのか?」
「いやそれは全く」
緊張ってよりは、めんどくさいが勝っている。
そもそも、参加するのも嫌なパーティーに緊張もくそもあるか。
「そこを即答するとは流石だな」
「……褒めてる?」
「半々っていったところかな」
「なにそれ」
そんな返し方されたのは始めてだ。
思わず口元が緩んでしまう。
「まあ、ミリッツェア嬢がしっかりとした挨拶をしてくれるだろうから、エイリーは『魔王討伐、皆で協力して頑張ろう!』って鼓舞する感じでいいと思うぞ」
「あ、それならできそう」
「だろう?」
ファースがにこりと笑って、手を握ってくる。流れるような動きだった。
……エスコートは慣れてるんだな、こいつ。
なんだかちょっと胸がもやっとした。
「どうかしたか?」
「……なんでもない」
そうこうしているうちに、私たちの名前が呼ばれ、豪華なドアが開いた。
* * *
パーティー会場の壇上で、ミリッツェアがぺらぺらと素晴らしいお言葉を並べている。まあ、難しくて私には理解できないけど。
なんというか、堅苦しい。私にはこんな挨拶、無理だわぁ。
ミリッツェアすげえ。
なんて思っていると、
「では、ここで踊る戦乙女として名高い、エイリー様よりお言葉をいただきます」
と、挨拶をしていたミリッツェアに名前を呼ばれてしまった。しかも、とっても堅苦しかった。
私は例のごとく、ぼうっとしながら話を聞いていたので、反応が遅れる。
あれ、今もしかして、私の名前呼ばれた?、みたいな感じ。
ミリッツェアに目で確認すると、ミリッツェアも「ええ呼びました」と言う目で私を見つめ返してくる。
なんだ、本当に呼ばれてたのか。呼ばれなきゃよかったのに。永遠に呼ばれなきゃよかったのに……。
なんて、未練がましいことを思いながら、壇上に上がった。
…………ドレス動きにくい。
私が壇上に上がると、ざわざわと少し会場が騒がしくなった。
なんでだろう、と疑問に思ったが、すぐに原因ははっきりした。
『どうして、ルシール・ネルソンが壇上に上がったんだ?』
『まさか本当に、ルシール様だなんて……』
あ~、はいはい。そういうことね。完全に理解した。
悪名高きルシール・ネルソンが、まさかこんな英雄になって戻ってくるなんて、信じられるわけないよね。私も信じられないわ。
でも、残念ながら事実なんだよねぇ。
散々言われてるのでこういうのにはもう慣れたが、逆に言われすぎているのでうっとうしい。
別にいいじゃん! 悪役令嬢が英雄やったって!
…………いや、それは普通に考えておかしいな。
黙っていても仕方なので、拡張魔法(マイクみたいな性能を持つ)を使い、私の声が広い会場に響き渡るようにして、話し始める。
「え~、テステス。聞こえてる?」
私の声に会場が一気に静まる。
静かにしてくれたのはありがたいんだけど、こんな一瞬で静かになられても困る。怖い。
「あ~、聞こえてるみたいだね。じゃあ、簡単に挨拶させてもらいます。
どうも、私は踊る戦乙女こと、エイリー。気軽にエイリーって呼んで。とういうか、そうして。
私の外見が気になるのはわかるけど、説明は長くなるので省略ね。簡単に言うと、私とルシール・ネルソンは別人。これだけは、覚えておいて」
フリーダムに話す私を見て、皆ぽかんとしている。
けらけら笑いながら見てるのは。ファースとグリーとレノだけだ。
隣にいるミリッツェアさえも、戸惑いの表情を浮べている。
この挨拶、こんなにおかしいかな?
いやまあ、普通じゃないけど。そこまで? ぽかんとするほど?
「え~と、堅苦しくて長ったらしい挨拶が苦手なので、簡潔に言うね。
つべこべ言わずに私に任せて。私が魔王をぼっこぼこにするんで。不安や心配になったりしないでいいので、サポートよろしくお願いします。
なんとかなるって。所詮、(人の睡眠を妨害する)魔王なんだし。力を合わせればなんとかなります。
皆で頑張ろう! というか、魔王倒すのは私なので、手を出さないでください」
一気に言いたいことを言い、私はふうと息を漏した。
こんなもんでいいのかな? 全く挨拶になった気がしないんですけど。
そもそもおひとり様で冒険者やってるんで、鼓舞するために言葉をかけたことなんてなかったわ。
できそうだと思ってたけど、無理だわ。自分をちょっと過信しすぎてたわ。
これにこりたら、二度と私に挨拶をさせないことだな。
この微妙な空気感だと、挨拶まわってこなそう。
「こんな感じで良いですか?」
「あ、はい。ありがとうございました」
呆然としていたミリッツェアが、慌てて言葉を発する。
「私たちにはこんなにも頼もしい、戦乙女がついています。大丈夫です。私たちは勝利を掴むことができます。皆様、ご協力のほどお願いいたします」
良い感じにミリッツェアが話をまとめると、ぺこりとお辞儀をした。
私も空気を読んでお辞儀をしておく。
…………やっぱりさ、こういうのって適材適所だと思うんですよ。
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