15 全く話が進みません
ルシール・ネルソンと私の似ているところ(見た目は含まれない)を語る会は、まだ続いている。参加メンバーは、コンスタント・ネルソン、マーシー・ネルソン、ルーク・ネルソン。
永遠に続きそうだし、私もなんだかこっぱずかしいので、そろそろお暇しようと思って、席を立ったときだった。
「あ、エイリー。まだ話があるから、まだ残ってくれるかい」
「マジですか」
嬉々として魅力を語っていたコンスタントさんに、止められた。
嘘だろ、まだ話があるのかよ。
この状況で? もう大事な話がないから、こうしてルシールの話をしていたんじゃないの?!
そうじゃなかったの?! 終わったような感じしたよね?!
「割と重要な話だから、今話しておきたいんだ」
「ルシールの魅力語るのと、どっちが大切ですか」
「そんなもの、ルシールたんの魅力を語るのが大事に決まってるだろう」
「……やっぱり部屋に戻っていいですか」
余談だが、マカリオスに滞在する間は、ネルソン公爵家でお世話になることが決まってる。
つまり、私はルシールの部屋に寝泊まりするわけで、尚且つ度の過ぎた溺愛を受けることになるのだ。
本音で言うと、今すぐ逃げたいが、私はルシール・ネルソンみたいなものなので、仕方がないのだ。
「今から話したいこともそこそこ大事でね」
「でも、ルシールの話より大事じゃないんでしょう?」
「ルシールたんより大事な話があるわけないじゃないか!」
コンスタントさんは、何を馬鹿なことを言っているんだ?、と言わんばかりに、そう告げた。
賛同するように、マーシーさんやルークさんも頷く。
あ、はい。私の聞き方が間違っていました。
駄目だよ、ルシールと比べるような発言をしちゃあ。こいつらは、躊躇うことなく、ルシールのことを選ぶに決まっている。
こいつら、ルシールに関しては普通の感性を持ち合わせていないのは、今に始まったことじゃない。
いい加減学ぼうぜ、エイリー。こいつらは、可笑しい。かなり可笑しい。
というか、どうしたら優秀な人間が、こんなにポンコツ似成り果てるんだ?
ルシール・ネルソンにそんなに魅力があるのか? うん、断じてない(即答)
不思議で不思議でたまらない。
「あの、コンスタントさん」
「コンスタントさん、なんて他人行儀な呼び方しないでくれよ。是非、『お父様』……、いいや、この際『パパ』と呼んでくれ!」
「じゃあ、私も『ママ』と呼んでもらおうかしら?」
「じゃあ、俺は『おにいちゃま』がいいな!」
……こいつら、私のこと何歳児だと思ってるんだ? 私、幼稚園生じゃないんだぞ? これでも一応、16歳なんだぞ?
「私の感覚的に、本当の家族ってよりは、親戚?、みたいなものですし?」
本音を言うなら、ただの変な奴らだな。自分から関わろうとはしない奴らだ。むしろ関わらないでくれ。
「そんな悲しいこと言わないでくれ」
「そうよ、本当の家族と思ってくれていいのよ」
「実際、血は繋がってるんだ」
何か言うたびに、トリプルパンチはきつい。ちなみに、皆様押しが強いので、対応しきれない。
普通に疲れるわ、これ。
「……わかりました。わかりましたからっ! でも、流石にパパ、ママ、おにいちゃまは恥ずかしいので、『父さん』『母さん』『兄さん』でいいですか! いいですよね?!」
さっさと妥協点を見つけたかった私は、こんなことを提案した。反対されるとめんどくさいので、圧力強めだ。
すると…………。
「父さん! 父さんか! これは新しいな!!」
「ええ、貴族の間では、そんな気軽に呼びませんもの!」
「こっちの方が親近感あっていいな!」
と、皆さんそろって目をキラキラさせて喜ぶ。不満はなさそうなので良かったが、こんなに喜ばれるのもちょっと……。
確かに、貴族の間だと、『お父様』『父様』『父上』なんかが主流で、『父さん』なんて呼ばないからなぁ。特に令嬢さんは。
チョイスを間違えたかも?
でも前世だと、こういう呼び方だったので、しっくりくるのだ。
仕方ない仕方ない、と自分に言い聞かせる。
異様にテンションの高い人たちを見て、仕方ないとはどうしても思えないけど、仕方ないのだ……。
というか、なかなか話が進まないな。
さっさと本題、本題に入ろうよ! 私、結構疲れたんですけど?!
「それで、父さん」
「父さんきたぁぁぁぁぁぁ」
「…………」
そんなんで、喜ばれても困るんですけど。
どうリアクションしていいのかわからないんですけど。
「ねえねえ、エイリーちゃん。『母さん』とも呼んでちょうだい」
「俺のことも、『兄さん』と」
「…………」
なんでこんなにハイテンションなの、この人たち。
ルシールに会えなかった寂しさとかはわからなくもないが、でもそんなにテンションあがる?! 異常だよね?!
ここで断っても、仕方ないので、私は諦めて、「母さん、兄さん」と呼んだ。
例のごとく、2人も変なテンションで喜んだ。
…………駄目だこりゃ。
この人たちは、しばらく喜んでた。
大事な話とやらは次回に持ち越しです。




