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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題とその他諸々/第3節 ゼーレ族の問題(シェミー編とも言う)
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閑話 メリッサはあの日を忘れない

メリッサ視点の会話です。

これで、一章は終わりです!

 やっと、色々なことがひと段落し、ふう、と私・メリッサは息を漏らしました。

 ここは、王都にある一軒家。エイリーお抱えの情報屋になった私たちの新しい家です。2人で住むのにも広すぎるのに、今はひとりなので余計に広く感じます。チェルノはまだ治療を受けていて、家に帰ってきていないのです。


 私たちは一応、罪人であるのに、エイリーの待遇が良すぎて、かなり戸惑っています。住む場所も用意してくれたし、必要なものもエイリーがお金を出して買ってくれました。

 エイリーは、『前払いだから』とか『お金が有り余っているから』とか、言ってくれたけど、色々貰いすぎていて申し訳ないです。


 それに一番驚いたのは、私たちを拘束しなかったことです。普通、罪人には行動を制限できたり、生活を監視できたりする契約魔法がかけられます。私たちの罪の重さからすると、ほとんど自由がない生活を強いられてるのが当たり前なのです。


 エイリーは笑いながら、


『本当は契約魔法なんてかけたくないんだけど、かけないと国王様とかお偉いさんに睨まれちゃうから、一応かけるね。私の命令に背けないようにするのと、生活を監視できるやつ』


 と言いました。理由がしょうもないですが、それでもやっぱりかけるんだなと思いました。

 けれど、次に飛び出した言葉に、私は驚くことになります。


『まあ、私命令なんかしないから。するのは“お願い”。だから、嫌な時は断れるよ。あと、監視できるのは四六時中見てるわけじゃないから安心して。メリッサたちになんかあったときにすぐにわかると便利だから、かけとくだけだから』


 私たちを疑うなんて微塵も考えていない笑顔を、エイリーは見せました。こっちが拍子抜けしてしまいます。


『私たちが裏切るって考えないんですか?』


 なんだか怖くなってしまって、私は聞きました。


『なんで?』


 エイリーはきょとんとした顔をするのです。


『だって、メリッサたちは生きるために仕方なくやってたんでしょ? それに、厳しい制約はムーシュの方にかけたから大丈夫だよ』


 裏切るとしたらムーシュだと、エイリーは考えているんだろうなと思いました。それもまあ、馬鹿な考えだと言わんばかりに笑っていましたけど。


『でも万が一、万が一のためにかけさせて。私、これまで結構、悪魔にしてやられてるから……! お願い!』


 なんて苦い思い出が、ムーシュに制約をかける理由だそうです。

 本当、エイリーらしいなと思ってつい私は笑ってしまいました。そして、何があってもエイリーを裏切らないと、ひっそりと心に誓ったのです。



(確かに、エイリーらしかったよね)


 くすくすと、ムーシュが笑う声が聞こえました。


「ムーシュ、私の思い出した記憶、見てたんですか?!」

(見てたんじゃなくて、流れ込んできたの)


 ムーシュが反論をするけど、大差はないと思います。


(とにかく、やっと安心して生きていけるね、メリッサ)

「はい。こんなことになるとは思ってませんでした」


 生きるために仕方なく、上級悪魔・アエーシュマの言う通り行動していた私たち。悪魔の気まぐれで殺されるか、私たちの悪事がばれ罪人として一生を終えるか、そのどちらかだと思っていました。

 でも、まさか踊る戦乙女(ヴァルキリー)のエイリーと知り合い、こうして助けてもらえるなんて思ってもいなかったです。人攫いにさらわれた時も思いましたが、人生何が起こるかわかりません。良い意味でも悪い意味でも。


(出会いに感謝、ね)

「はい、そうですね。ムーシュに出会えなかったら、こうして私は生きていません」

(思わぬ流れ弾?!)

「なんでそんなに驚くんですか」

(エイリーとの出会いに感謝って意味じゃないの?!)

「勿論それもありますよ。でも、ムーシュに出会えたことも感謝したいんです」


 人攫いにさらわれ、過酷な生活を強いられていた私の前に、突如現れた救世主。悪魔だったけど、私に生きる術を教えてくれ、優しくしてくれました。今の私があるのはムーシュのおかげです。


(改めて言われると照れるなぁ。あたしだって、あたしの目的のためにメリッサを助けたんだし)

「でも、私は今も生きています。他の悪魔は依り代を殺すって聞きます」

(わざわざすぐに殺す必要もないじゃん。あたしたち悪魔の寿命は長いし。それに体をもらうんだもん、対価だって必要でしょ)

「そういう所が優しいんです、ムーシュは」

(今日のメリッサは直球だなぁ)

「いつも直球のつもりです」

(いつもに増してってこと)


 ムーシュは照れくさそうに言いました。照れてるムーシュってなんか新鮮です。


「感謝の言葉って、心機一転する時とかくらいしか、改めて言えないじゃないですか」

(それはそうだけど。まあ、受け取っておくね。普通に嬉しいし)

「そうしてください」


 窓から夕日が差しこんでくる。穏やかな時間が流れていきます。


(メリッサ、あたしからもありがとうって言っておくね)

「わかりました」


 ムーシュが感謝の言葉を何故述べたのかはわかりません。

 でも、きっと。

 出会いにありがとう、と言ったんだと、私はそう思いました。





メリッサ×ムーシュで二次創作書きたい方がいたらどうぞ……(笑)

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