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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題とその他諸々/第3節 ゼーレ族の問題(シェミー編とも言う)
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129 報酬はたっぷりといただきます

 笑いが収まり、皆が退出して、部屋に残ったのは私と腹黒国王だけになった。


「この度はご苦労であったな」

「本当に」


 最後の最後まで巻き込まれたよ。跡継ぎくらい、自分たちで決めろよ。


「それで、報酬なんだが」


 そう、それだよそれ。私はそれを求めてるんだよ。


「元から約束してた金貨はすでに冒険者省に預けてある」

「はあ? じゃあなんで呼んだんですか?!」


 まじで跡継ぎ決めるためだけに私呼ばれたの?! 悲しすぎないか?!


「そう急かすな」

「急かしますよ?!」


 あんた、人のことなんだと思ってるの?!

 私は報酬が欲しいんだよ、報酬が。


「今回は予想以上の働きをしてくれた。だから、約束してた報酬以外にも、お主の欲しいものを与えようと思ってな」

「はい?」

「なんでも好きなものを言うといい。我になんとかできるものなら、なんでも与えよう」

「本当ですか?」

「勿論だ」


 まじで? 本当になんでもいいの? 国王様になんとかできるなら?

 実は私、欲しいものというか、何とかしてほしいことはあるんだよね。


「じゃあお言葉に甘えて。ふたつほど」

「……こういうのって普通ひとつだよな?」

「ひとつだなんて言われてないです」

「せこいな」

「貴方に言われたくないです」


 腹黒国王が他人に『せこい』なんて言うとは。自分のこと、棚に上げすぎだろ。


「まあ、ひとつはそんなに難しいことじゃないんですけど」

「とりあえず、言ってみろ。どうするかどうかは我が決める」


 わーい。なんとかして、ふたつとも叶えてもらおう。


「簡単な方はですね、クレトとの婚約、破棄してくれません?」

「いいぞ」


 まさかの即答。こんなにあっさり承諾されるなんて。


「……なんのために婚約したんですか」

「心配するな、もう十分な効果は得られた」

「跡継ぎに選ばれたからですか?」

「それもあるが、もっと別の理由だ」

「別の?」

「簡単に言えば、ある奴に()()()()()()()()()()()()()()()だ」


 どう言うことだ?

 私が訳がわからんと言う顔をしていたからだろう。国王様は、


「……そういうことに気がつかないのは、いいことだと思うぞ」


 呆れ半分でそんなことを言ってくる。


「それ完璧に嫌味ですよね?」

「そう聞こえるならそうなんじゃないか?」

「質問に質問で答えるの、良くないと思います」

「そうだな」


 そうだな、で終わるな! 謝る気もないってことかよ!

 その神経の図太さ、尊敬しますよっ?!


「クレトとの婚約破棄はしよう。で、ふたつ目は?」


 思いのほかあっさり婚約が破棄されたので、拍子抜けである。

 まあ、私としてもこっちはおまけみたいなもので、これから言う要求が本当に叶えて欲しいものだ。


「秘宝盗みの犯人、私に任せてもらえませんか」

「任せる、とは?」

「できるなら、事情聴取から裁き、その後のことまで全部」

「理由は?」


 国王様の鋭い視線に、私はごくりと唾を飲む。流石国王、と言う威圧的なオーラで私を怯ませる。

 でも、ここでひくわけにはいかないし、ここで大人しく引き下がる私じゃない!


「彼女たちには、なんらかの深い事情があり、止むを得ず秘宝盗みをしていたようです。私は彼女たちを信じたいんです」

「それだけか?」


 冷淡に国王様は言葉を返してくる。

 王家の秘宝を盗んだ罪人をやすやすと庶民の手に渡すわけには行かないだろう。その事情はわかる。でも、その言い草はムカつく。


「それだけって何です?」

「質問に質問で返すな」

「あんたさっきやってたでしょうが!」


 腹が立ちすぎて、思わずそう言ってしまう。


「あんた……?」


 気がついた時には、もう遅し。国王様は少し目を見開いていた。

 ああもう! こうなったらやけだよ、やけ。


「あんたが、できることなら何でも叶えるって言ったんじゃん! これは確実になんとかできるでしょ。なんとかしてよ。しなさいよ。

 それとも何? 嘘吐いたって言うの? 国民に? 国王が?」


 反論の隙を与えないように、早口で話す。

 言い切った時には、疲れていたけど満足感があった。そして、ワンテンポ遅れてやっちまった感が襲ってきた。

 やべえ、言い過ぎた。これ、不敬罪だよ、不敬罪。


 国王様は重くるしい雰囲気で俯いていた。

 あーあ、これ相当やばいかも。

 ま、いざとなったら報酬を使って無罪にしてもらうしか……! 流石に牢屋生活とか、死刑とかは嫌だ。

 そんなんなら逃亡する。人生2回目の逃亡する!


 でも、私のそんな不安とは裏腹に。


「あは、あはは、あっはっはっ!」


 なんて、国王様は死にそうな勢いで笑い出した。ひとりでとても楽しそうだ。


「……どうしたんですか」

「こんなに言われたのは、久しぶりでな。面白くてつい」

「ついってレベルじゃないでしょうが?!」


 あの笑いようは異常だぞ? 呼吸困難で死にそうだったぞ? 気が狂ったのかと思ったぞ?


「確かにエイリーの言う通りだな。我にとって“それだけ”でも、お主にとっては“それだけ”じゃないこともあるわな。それになんとかできるものはなんとかしようと言ったのは我だしな」

「じゃあ」

「ああ、今回は特別だぞ」

「ありがとうござます!」

「ただし、騙されるなよ?」

「騙されそうに見えます?」

「見えるな」


 おいっ! そこは、見えないって言うところでしょ!


「あとは、正当な処罰を下せ。情に流されるな」

「わかってます」

「あと、簡単でいいから報告しろ。もしくは報告書を出せ」

「え〜」

「当たり前だろう?」

「それはそうですけど……」


 めんどくさー。割と注意すること多いし。細かいことなんて気にしなければいいのにねー。


「とにかく、秘宝盗みの犯人の裁きは全てお主に任命する。これで終わりか?」

「え、もっと言ったら叶えてくれるんですか」

「そんなわけないだろう。十分すぎるほどの報酬は出しただろう」


 それはそうだけどさ。若干少ない気もするんだよね。色々と余計なことに付き合わされたし。


「じゃあ、頼んだぞ」

「任せてください」


 こうして、私は無事に欲しいものを手に入れたのだった。

……この主人公やべえええ。

国王様にため口で叱りつけてるよ……。

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