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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題とその他諸々/第3節 ゼーレ族の問題(シェミー編とも言う)
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126 依頼達成のお知らせ

「と、いうわけで王家の秘宝、集め終わりました~!」


 ここは、冒険者省のいつもの部屋。私の目の前にはロワイエさん。


「早かったですね?」

「私の手にかかればちょちょいのちょいですよ」


 国王様と私の仲介をしてくれたロワイエさんに、他から情報は入っていると思うが、一応依頼を達成したことを知らせに来たのだ。


「それで? 結局、秘宝は誰が持って帰ったんです?」


 ロワイエさんは特に驚くことなく詳細を聞き出そうとする。

 というか、まず最初に聞くのそれかよ。


「実は」

「実は?」

「私が持ってるんですよ。王位継承権を示すネックレス」

「そうなんですか」

「やけにあっさりしてますね」


 もっと驚くかと思ったのに。


「まあ、妥当かなと」

「どうして?」

「他の方々が持っていたらややこしいことになるじゃないですか。一番丸く収まりそうなのはエイリーさんですし」

「それは……そうなのか」

「そうなんですよ」


 確かに、ファースやグリーが他の秘宝はともかく、ネックレスを持って帰ったら、ややこしい事態が起こるのは目に見えている。レノだって同様だ。

 あの兄弟に限って、血みどろなことは起こるわけないと思うが、精神的にきつい戦いが始まりそうだ。特にベルナを相手にすると思うと……、ぞっとする。


「ファースたちが私にネックレスを押し付けるのは、当たり前なのか」

「当たり前なんですよ」

「……でも当たり前でいいのかなぁ」


 庶民にほいほいと王家の秘宝、預けちゃダメでしょ。しかも盗まれてたのに。


「エイリーさんだからだと思いますよ」

「私だから?」


 こんな私にほいほい預ける理由とは?!

 自分でいうのも何なんだけど、私かなり抜けてるぞ? 信頼できる人間じゃないぞ?

 ……悲しくなってきた。やめよやめよ。


 そんな風に私がもんもんとしている顔を、ロワイエさんはじっと見てくる。


「……何を思ってるのかはあえて尋ねませんが」

「そうしてくれるとありがたい」

「エイリーさんは、英雄・踊る戦乙女(ヴァルキリー)でしょう?」

「まあ、そうだね」


 英雄っていうの、怪しいけどね。むしろ、『英雄』という言葉が一種の便利屋みたいになってて、色々雑用押しつけられてる気がするけどね?


「で、第二王子の婚約者なわけです」

「そんなこともあったね」


 お互いに(嫌すぎて)意識してなかったから、すっかり忘れてたよ。そういえば婚約してたね、私。


「まあ、なんていうか、気軽に手が出せないじゃないですか。というか、手を出そうとしたらこっちが殺されますよね」

「いや、殺しはしないけど。確かに私に勝てる人なんて、そんなにいないもんね」

「“そんなに”じゃなくて“皆無”です。間違えないでください」

「……気にしなくてよくない?」

「かなり差がありますよ、これ」


 ロワイエさんは譲る気がないらしく、鋭い目で私を見てくる。

 別にどっちでもいじゃない。


「……でも私、一応第二王子(クレト)の婚約者なわけですよ。こっそり渡しちゃうかもしれませんよ?」

「やるんですか?」

「やりませんけど」


 そんなめんどくさいことするか。

 そんなことしたら、私、王妃様になっちゃうじゃん。そんなの、無理無理、絶対無理。


「でしょう? だから適任なんですよ」

「……婚約者要素いりませんよね?」


 結局、私の強さと性格で完結してる気がするんだけど。


「そうですね」

「少しは否定してよっ?! じゃあ何で、婚約者要素出したのさ?!」

「真実を本人の口から確かめようかと」

「婚約を嘘だと思ってたの?」

「はい」

「どんくらい?」

「割と本気で」


 酷いっと世の中の女性たちはここで非難の声を上げるのだろうが、私は


「だよね~」


 と納得するしかなかった。というか、私も嘘だと信じたい。


「本当なんですね?」

「本当ですよ。嫌ですけど」

「第二王子も?」

「勿論。私たち、そんなに仲良くないんで」


 というか、マスグレイブ兄弟の中で、クレトとは一番仲が悪い気がする。

 あの性格、好きじゃないんだよねぇ。まあ、家族愛が異常だから、可愛いし、扱いやすいけど。


「喧嘩するほど仲が良いってやつではなく?」

「うん」


 断じて違う。


「なるほど。ところで、エイリーさん」

「改まって何ですか、ロワイエさん」


 ぴんと背筋が伸びた私を見て、ロワイエさんは心なしか嬉しそうにほほ笑んだ。


「国王陛下からお呼び出しです」

「……はあ?」

「ですから、お呼び出しです」

「なんでまた」

「秘宝探しの報酬を渡したいと」


 うわ~、何か裏があるとしか思えない。真っ黒だよね。

 頭の中、腹黒国王の笑みしか浮かばないんですけど?


「行かなきゃダメですか」

「だめに決まってるでしょう。明後日の午前十時集合だそうです。ですから、冒険者省には午前九時半に迎えに来るそうです」

「そりゃまた細かく指定してきたなぁ」

「よかったですね」

「よくないわ」


 はあ、と盛大な溜息を私は落とす。


「ということでよろしくお願いします」

「……わかりました。着ていく服あったかなぁ」


 そうつぶやいたのは、迂闊だった。

 その言葉にロワイエさんの瞳はギラリと光った。


「選んで差し上げましょう」

「いえ、結構です」

「そう遠慮しないでください。何ならついでに、マナーも見て差し上げます」

「いや、遠慮とかじゃなくてですね」


 そんな会話が続いた後、ロワイエさんの押しに負けてしまい、衣装を選んでもらい、マナーも叩き込まれた。

 こりゃ完全に私担当の教育係だ。

 それでいいのか、冒険者省省長、ロワイエ・ボーエルノ。

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