126 依頼達成のお知らせ
「と、いうわけで王家の秘宝、集め終わりました~!」
ここは、冒険者省のいつもの部屋。私の目の前にはロワイエさん。
「早かったですね?」
「私の手にかかればちょちょいのちょいですよ」
国王様と私の仲介をしてくれたロワイエさんに、他から情報は入っていると思うが、一応依頼を達成したことを知らせに来たのだ。
「それで? 結局、秘宝は誰が持って帰ったんです?」
ロワイエさんは特に驚くことなく詳細を聞き出そうとする。
というか、まず最初に聞くのそれかよ。
「実は」
「実は?」
「私が持ってるんですよ。王位継承権を示すネックレス」
「そうなんですか」
「やけにあっさりしてますね」
もっと驚くかと思ったのに。
「まあ、妥当かなと」
「どうして?」
「他の方々が持っていたらややこしいことになるじゃないですか。一番丸く収まりそうなのはエイリーさんですし」
「それは……そうなのか」
「そうなんですよ」
確かに、ファースやグリーが他の秘宝はともかく、ネックレスを持って帰ったら、ややこしい事態が起こるのは目に見えている。レノだって同様だ。
あの兄弟に限って、血みどろなことは起こるわけないと思うが、精神的にきつい戦いが始まりそうだ。特にベルナを相手にすると思うと……、ぞっとする。
「ファースたちが私にネックレスを押し付けるのは、当たり前なのか」
「当たり前なんですよ」
「……でも当たり前でいいのかなぁ」
庶民にほいほいと王家の秘宝、預けちゃダメでしょ。しかも盗まれてたのに。
「エイリーさんだからだと思いますよ」
「私だから?」
こんな私にほいほい預ける理由とは?!
自分でいうのも何なんだけど、私かなり抜けてるぞ? 信頼できる人間じゃないぞ?
……悲しくなってきた。やめよやめよ。
そんな風に私がもんもんとしている顔を、ロワイエさんはじっと見てくる。
「……何を思ってるのかはあえて尋ねませんが」
「そうしてくれるとありがたい」
「エイリーさんは、英雄・踊る戦乙女でしょう?」
「まあ、そうだね」
英雄っていうの、怪しいけどね。むしろ、『英雄』という言葉が一種の便利屋みたいになってて、色々雑用押しつけられてる気がするけどね?
「で、第二王子の婚約者なわけです」
「そんなこともあったね」
お互いに(嫌すぎて)意識してなかったから、すっかり忘れてたよ。そういえば婚約してたね、私。
「まあ、なんていうか、気軽に手が出せないじゃないですか。というか、手を出そうとしたらこっちが殺されますよね」
「いや、殺しはしないけど。確かに私に勝てる人なんて、そんなにいないもんね」
「“そんなに”じゃなくて“皆無”です。間違えないでください」
「……気にしなくてよくない?」
「かなり差がありますよ、これ」
ロワイエさんは譲る気がないらしく、鋭い目で私を見てくる。
別にどっちでもいじゃない。
「……でも私、一応第二王子の婚約者なわけですよ。こっそり渡しちゃうかもしれませんよ?」
「やるんですか?」
「やりませんけど」
そんなめんどくさいことするか。
そんなことしたら、私、王妃様になっちゃうじゃん。そんなの、無理無理、絶対無理。
「でしょう? だから適任なんですよ」
「……婚約者要素いりませんよね?」
結局、私の強さと性格で完結してる気がするんだけど。
「そうですね」
「少しは否定してよっ?! じゃあ何で、婚約者要素出したのさ?!」
「真実を本人の口から確かめようかと」
「婚約を嘘だと思ってたの?」
「はい」
「どんくらい?」
「割と本気で」
酷いっと世の中の女性たちはここで非難の声を上げるのだろうが、私は
「だよね~」
と納得するしかなかった。というか、私も嘘だと信じたい。
「本当なんですね?」
「本当ですよ。嫌ですけど」
「第二王子も?」
「勿論。私たち、そんなに仲良くないんで」
というか、マスグレイブ兄弟の中で、クレトとは一番仲が悪い気がする。
あの性格、好きじゃないんだよねぇ。まあ、家族愛が異常だから、可愛いし、扱いやすいけど。
「喧嘩するほど仲が良いってやつではなく?」
「うん」
断じて違う。
「なるほど。ところで、エイリーさん」
「改まって何ですか、ロワイエさん」
ぴんと背筋が伸びた私を見て、ロワイエさんは心なしか嬉しそうにほほ笑んだ。
「国王陛下からお呼び出しです」
「……はあ?」
「ですから、お呼び出しです」
「なんでまた」
「秘宝探しの報酬を渡したいと」
うわ~、何か裏があるとしか思えない。真っ黒だよね。
頭の中、腹黒国王の笑みしか浮かばないんですけど?
「行かなきゃダメですか」
「だめに決まってるでしょう。明後日の午前十時集合だそうです。ですから、冒険者省には午前九時半に迎えに来るそうです」
「そりゃまた細かく指定してきたなぁ」
「よかったですね」
「よくないわ」
はあ、と盛大な溜息を私は落とす。
「ということでよろしくお願いします」
「……わかりました。着ていく服あったかなぁ」
そうつぶやいたのは、迂闊だった。
その言葉にロワイエさんの瞳はギラリと光った。
「選んで差し上げましょう」
「いえ、結構です」
「そう遠慮しないでください。何ならついでに、マナーも見て差し上げます」
「いや、遠慮とかじゃなくてですね」
そんな会話が続いた後、ロワイエさんの押しに負けてしまい、衣装を選んでもらい、マナーも叩き込まれた。
こりゃ完全に私担当の教育係だ。
それでいいのか、冒険者省省長、ロワイエ・ボーエルノ。




