12 あれから三ヶ月過ぎた
ちょいちょいなろうでも投稿していくので、お付き合い頂けたら嬉しいです。
マカリオスから逃亡してきて、早3ヶ月。
マカリオスでは、ネルソン家を筆頭に必死になって、ルシール・ネルソンを探してるらしい。ご苦労様~。
今の私は幻想魔法を駆使して、正体がバレないようにしているので、私まで辿り着くことは、ほぼ不可能に近い。私の顔を直接見るようなことがあれば、ばれるだろうが、そこまでたどり着くのが困難なのだ。そういう魔法をかけている。
だから、辿り着けるようになるのは、私が死んだ後、つまり魔法がとけてからの可能性が高い。諦めることをおすすめするけど、ルシールの家族は諦めないだろうなぁ……。
そんなこんなで、大分ここでの生活にも慣れてきて、私は無事、冒険者をやっている。友達もちょっとはできた。
毎日が充実している。冒険者は割と時間を自由に使えるので、好きなだけ寝れるっていうね。控え目に言って、最高。
ただ、困っていることが一つある。この3ヶ月間悪魔を倒したり魔物の大軍をひとりでやっつけたり、色々なことをやらかしたので、私は英雄となってしまった。
……下手すると、国外にも名前が広がっていそうだ。そのくらいの勢いで、やらかしてした。
“踊る戦乙女”厨二チックな通り名まで付いてしまった。
呼ばれるのは恥ずかしいけど、かっこいいよね。オタクとしては、くすぐられる何かがあるっていうか、なんていうか。
まあ、レベル300超えだし、基本ひとりで色々こなしちゃうから、「すげええ」って思われるのは、わからなくもないんだけどね。
でも、流石にうざったるいことがあるわけ。
――――私が町を歩くたびに、噂話をすることとか。
私の住む王都では特に、道を通るだけでひそひそとあることないこと、噂話をされる。芸能人みたいだけど、芸能人じゃないからやめてくれ。
なんでもいいけど、事実を誇張して捻じ曲げて人から人へ話して、なんでもかんで英雄譚にするのはやめてほしい。
完璧な英雄像ができてしまって、私の居心地が悪くなる! 私そんなに、聖人じゃないです!!
今も街を歩いているのだが、私に向けられる視線が多すぎる。悪いことできないじゃん! いやしないけどさ! そんなに見ないでよ、見られる方は恥ずかしいんだから!
これでも、大分慣れてきた方なのだ。初めの方は、家に引きこもることまで考えた。でも、自炊ができないからすぐやめた。
…………進歩しているぞ、私! 偉いぞ、私!
見て見ぬ振りを覚えた私は、それらを気にしないふりをして、やっとのことで目的地に着く。
『アデルフェー』と看板の掲げられた、煉瓦造りの一軒家。私の通っている食堂だ。食堂にしてはお洒落な名前なんだけど、私的には気に入っている。
からんからん、と鈴の音とともにドアを開ける。
「いらっしゃいませ!あ、エイリーじゃない」
林檎のように綺麗な赤髪を三つ編みでまとめた、鮮やかな翡翠色の瞳を持つ、穏やかな少女・シェミーが、私を出迎えた。
彼女は、この食堂の看板娘であり、店を手伝っている。私のことを“踊る戦乙女”と呼ばない、私の数少ないお友達だ。
「こんにちは、シェミー。いつものお願い」
「分かった。好きなところに座っていいわよ」
そう言われたので、私は空いている席に腰を下ろす。なるべく目立たない場所に、だ。
“踊る戦乙女”がこの食堂に通っていることは、すでにバレている。
『お陰で儲かっているわ』、とシェミーにお礼を言われたこともある。私の集客効果もあるんだろうけど、常連客が多いのはシェミーが可愛いからだと思う。料理もメニューが豊富だし、美味しいし。何より、シェミー可愛いし。
今も若干、視線を感じる。これでもアデルフェーでの視線はかなり減った方。だって、私、ほぼ毎日ここにいるし。珍しくともなんともない。
だけど、美味しく料理を食べるために、私はある魔法を使う。
「気づかないで、気づかないで。私はここにいないわよ」
存在を薄くする魔法。「ああ、お前いたの。気づかなかったわ」的なポジションの人になるための魔法だ。
この3ヶ月で、魔法の使い方を完璧にマスターした。魔法をコントロールしやすい呪文の唱え方も分かった。
“うたって踊ること”
『うたう』は、歌うでも、唄うでも、詠うでも、謡うでも構わない。
踊りというか、簡単な舞をつけるのが、ベストな魔法のコントロールの仕方なのだ。
だから、私は『踊る』戦乙女と呼ばれているのだ。単純な名付けなんだよなぁ。もっと捻って欲しかったなぁ。自分でつけたわけじゃないので、文句言い放題だ。
しばらくして、シェミーが料理を運んできた。
「おまたせしました」
シェミーは探すことなく、私を見つける。
何故、シェミーはいとも簡単に私のことが見つけられたのか。
それは、幻想魔法が効きにくい体質を、シェミーはしているからだ。私の100パーセントの力を出さないと、彼女に幻想魔法は効かないだろう。
だから、この店で食事が楽しむことができるのだ。
まあ、ここの料理はどれも美味しいし、シェミーに会いたいから、通っているというのもあるけど。むしろこっちがメインだけど。
「ありがとう、シェミー。今日も美味しそう」
「ふふ、ありがとう、エイリー。ごゆっくりどうぞ」
私はシェミーのささやかな笑顔に、癒された。
可愛いなぁ……。




