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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題とその他諸々/第3節 ゼーレ族の問題(シェミー編とも言う)
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109 説明を求む!!

 グリーの頑張りもあり、片付けは昼過ぎには終わった。

 あんな足の踏み場もない部屋を、1日どころか半日もかけないで片付けてしまうのは、すごい。本当にすごい。

 魔法万歳、グリー万歳ってところだ。


 そういうわけで、私たちは綺麗になった部屋で、グリーの持ってきてくれた紅茶とお菓子をつまみながら(この気遣いも流石である)、本題に入るのだった。


「それでエイリー、どういうことか説明を求めていいかしら?」

「話が見えないんだけど」

「わかってるくせに! クレトお兄様と婚約したってどういうこと?」

「どういうことって言われても……。流れで? というか、はめられて?」

「はあ?」


 グリーが何言ってるのこいつ、と言う視線を向けてくるが、私だって知らない。あの腹黒国王が全部勝手に決めたんだよっ! あんたのお父さんが勝手に決めたんですぅ。


「強いて言うなら、政略結婚ってやつ?」

「はあ?」

「ほら私、国家機密いっぱい知ってるじゃん、ただの庶民なのに」

「まあ、不可抗力な部分が強いと思うけど」

「だよね!? グリーもそう思うよね!?」

「う、うん」


 私の勢いに押されてなのか、グリーはひき気味に頷く。でも私は気にせずに、勢いに乗って突っ走る。勢いって大事だと思う、うん。


「やっぱり、国王様が間違ってるんだよね。そりゃ、私は国家機密を知ってる。でもそれは半分以上、国王様が教えてきたもんなんだよ。それを理由に、婚約とか意味がわからないよね。王族になんてなりたくないし、そもそも私にだって、()()()()はあるんだよっ!!」

「選ぶ権利……?」


 私が愚痴を聞き流していたグリーが、ある言葉に反応した。

 そして、段々とグリーはあからさまに嬉しそうな表情を浮かべた。にこにこを通り越している笑顔が逆に怖い……。


「選ぶ権利って言ったかしら?!」

「え、言ったけど。……それがどうかした?」

「エイリー、これは真剣な質問をするので、真剣に答えて頂戴。仮にマズグレイブ兄弟と結婚するなら、誰としたいかしら?」

「は?」

「真面目に考えてね?」

「え、いきなりどうしたの?」

「いいから答えて頂戴っ!」


 口は笑っているものの、目が笑ってないよ、グリー……。

 どうしてそこまで真剣なんだ、と聞くこともできないくらいのオーラが、グリーから漂っている。


 真面目に答えるとしても、そもそも王家に嫁ぎたくない私は皆、嫌だ。結婚したくない。

 でもそんなこと言ったら、グリーに怒られるだろう。今のグリー怖いもん。

 こういう時は、グリーの求めてる答えを言ってあげるのがベストなんだよね。できる子・エイリーちゃんは違うのだ☆


 と、冗談はさて置き。

 私はグリーの求めているだろう答えを言う。


「うーん、グリーかな」

「あら、嬉しい。でも、わたくしには愛する婚約者がいるのよ。だから……ごめんなさいっ!!

 ……なーんて、なるとでも思ったかしら?」

「うん」


 華麗なノリツッコミを披露してくれたグリーさんの質問に、私は素直に元気良く頷いた。

 真剣に聞いてきた割には、ふざけているので、やっぱりこの質問は冗談の類だったのでは?!


「真剣に答えてって言ったわよね? ふざけてるの?」

「うん」

「だと思ったわ。わたくしは真面目に答えてって言ったわよね?」

「うん」


 私が頷くことしかしなかったので、グリーは呆れてため息を吐いた。

 だって本当に、ふざけてるとしか思えないんだもん。


「遠回しに聞いたわたくしも悪かったわ」

「え?」

「単刀直入に聞くわ。婚約するなら、クレトお兄様とファースお兄様どちらかしら?」

「は?」

「選ばないってのは無しよ」


 どういうことだ? どうしてそこでファースの名前が出てくる?


「そりゃ、どっちかと言われたら、ファースだけど」

「本当に?!」

「う、うん」


 目をキラキラさせて、グリーは私に詰め寄ってくる。

 え、今の答えそんなに良かった……?


「お兄様にもまだまだチャンスはあるってことね!」

「は?」

「ファースお兄様、エイリーがクレトお兄様と婚約したことに、かなりショックを受けていたのよ」

「へー」


 そうかー、ショックを受けてたのかー、へー、ふーん。


「…………え? 今なんて言った?! は?! 嘘?! あ、わかった冗談だ。冗談なんでしょ。あはは、グリーってば、そんなにマジな口調で、冗談言わないでよ~。え? 冗談、だよね??」

「……そんなに驚くこと?」

「は、いや、だって、え?」

「ファースお兄様がエイリーに気があるのは、一目瞭然じゃない」

「いや、それはなんとなくわかってたけど、そんなに? そんなに明確にわかるものなの? 嘘だぁ」

「これだから鈍感ちゃんは」

「だって、私だよ?! 自分で言うのもなんだけど、こんな私だよ?! 女子力皆無だよ?! 部屋が汚い女だよ?!」

「それは思うわ。お兄様、女の趣味悪すぎよねぇ」

「おい」


 その通りなんだけどさ?! 本人目の前にして言わないでよ。否定してよ。

 というか、ファースに失礼だろそれ。


「お兄様、あからさまに沈んでてめんどくさいのよ。だから、エイリーっ!」

「はいっ!」


 グリーに勢いよく名前を呼ばれたので、私は思わず良い返事をしてしまう。。


「5日後の休日、丁度お兄様は空いているわ。その日、ふたりでマスグレイブの秘宝を探しに行きなさい」

「は?」

「いい、ふたりでよ。ふたりきりでよ」

「…………わかった。わかりましたよっ!」

「よろしい」


 満足気に頷くグリー。よくもまあ、お兄ちゃんのためにここまでできるもんだ。いい妹だな。お節介な妹かもしれないけど。


 そのあと軽く雑談をして、グリーは帰って行った。


 ――――というか、あれ? ファースってまじで私のこと好きなの? 確定条件……?


 そう思うと、少しだけ顔が熱くなった、気がする。



グリーはできる人です。

どこかのポンコツ主人公とは違います。


……てか、本当に、ファース、女の趣味悪いなぁ(笑)

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