94 邪魔が多すぎて困る
本日一話目の投稿です。
これから2時間おきに最新話を更新していきます(最終更新は22時)
外見が日本の古民家風なだけあって、中もほぼほぼの床が畳だった。靴を脱ぎたくなってしまうが、何があるかわからない。靴を脱ぐべきではないだろう。
元日本人としての屈辱だ。だけど、ごちゃごちゃ言っている場合でもない。うう、もどかしいっ!
「こういう家には、至る所に仕掛けが隠してあるから絶対気、抜かないでね」
忍者屋敷に似てる。絶対、床が抜けたり壁から人が出てきたりするって。そうであってほしい。
「じゃ、面倒な奴らが出てきたらよろしく」
前衛組と後衛組に声をかけて、歩みを進める。
* * *
「……どうして残ってるのが、私たち3人なの?」
「皆、他の奴らを相手にしているからじゃ」
「そんなのは知ってるよ?!」
家に突入してから、私たちはことごとくディカイオシュネーの軍人と元ゼーレ族たちから襲撃にあっていて、あっという間に突破組しかいなくなった。
当初の予定ではそうだったから何の問題もないんだけど、なんともまあ人数のいることだ。
「文句ばかり言ってないで進むぞ」
レノにそう言って、先頭を歩く。
シェミーは屋敷の奥に閉じ込められている。屋敷が広いし、入り組んでいるので、そこまで行くのに一苦労だ。
「こんな屋敷吹き飛ばしたら一発なんだけどなぁ」
「やめてくれよ?! シェミーに怪我をさせたらどうするつもりなんだ」
「だからやってないんじゃん。シェミーがいなければ吹き飛ばしたんだけどなぁ」
「豪快じゃの、エイリー」
私の言葉にレノは焦り、ベルナは楽しそうに笑う。私が言うのも何だが、緊張している様子は誰ひとりとしてない。
まあ、レノは騎士団長としてこういう場は何回も経験してるんだろうし、ベルナも王族として、マスグレイブ兄弟長女として、色々な場面をくぐり抜けているからだろう。
こんな場馴れしたふたりがいて、とても安心だ。安心して、集団行動を乱すことができる。
私たちは急ぎつつも、いつも通りの状態で進んでいた。
だが、そんなスムーズに行くはずもない。
何の前触れもなく、ひゅっと音がしてナイフが飛んでくる。
「……っ!」
すれすれで避けられたが、私の髪に少しかすってしまった。
危なっ。急に刃物を投げてくるなよ殺す気か?! ……殺す気だったね。
殺気がまるで感じられなかったので、かなり手練れなんだなぁ、凄いなぁ。
「流石です、踊る戦乙女。私は心臓を狙った筈なんですけどね」
そう言って、天井、壁、床などなど。至る所から、ディカイオシュネーの軍服を着た人たちが現れる。やっぱり出てきたっ!
10人か。もっと隠れてる奴らいるんだろうなぁ。
「随分手荒なお出迎えをありがとう? そこを通してくれる?」
「……頷くと思いますか?」
「思わない」
だよね !知ってたよ! あっさり通してくれるなんて、微塵も思ってなかったよ!!
「貴女たちには、ここで死んでいただきます」
「ほう? 妾を殺す、と。それはディカイオシュネーの総意なのかの?」
「…………」
ベルナの問いにディカイオシュネーの軍人は黙る。
だよね。ここで認めても認めなくても国際問題だもんね。答えられるわけないよね。
ベルナは他国の王族だ。しかも、次期女王になるかもしれない。そんな彼女を殺したとしたら……。面倒なことがいっぱい発生するな。
でも、そんなことははっきり言ってどうでもいいのだ。
私はシェミーを無事に助けて、サルワをぶっ飛ばすことができればそれでいい。
「……エイリー、ベルナディット様。ここは俺に任せて先に行ってください」
「そう言ってくれると思ってた! ということで行こう、ベルナ!」
「わかっておる!」
「やけにあっさりしてますね?!」
レノと私とベルナの会話のテンポの良さに、ついつい軍人さんもツッコミを入れてしまったらしい。
そうだよね。普通こういうのってもっと盛り上がるところだよね。「俺を置いて先に行け!」「そんなことできないよ!」「私も一緒に……」的な感じで。
うん、知ってる。その流れは知ってる。だけど、無視する。
想像以上に軍人が呆然としてくれたので、私たちはその隙をついて、軍人の囲みの中から脱出した。
こういう時って小柄な女子ってほんと便利。するする〜って抜けていけるんだから。
「じゃあ、あとはよろしく!」
そうレノにエールを送り、私とベルナは走り出した。
* * *
その後は大した敵と遭遇することなく、私たちはシェミーが囚われている部屋の前に着いた。
誰もいない不気味さ。それが私をかなり緊張させる。
絶対この先、強敵いるでしょ。わかってるんだからね!
「準備はいい、ベルナ」
「妾は大丈夫じゃ」
ベルナの返事を聞いて、私はドア、というか襖を勢いよく開ける。ぱーんっといい音がした。
「ようこそいらっしゃいました、踊る戦乙女、ベルナディット・マスグレイブ」
部屋の中には、5人の翡翠色の瞳を持つゼーレ族がいた。全員、年を取ってあるじいちゃんばあちゃんだが、何とも言えない迫力があった。
「サルワは何処にいるの?」
「この部屋の下です。ですが、我々はここを通すわけには行きません」
「でも、通らせてもらうよ」
「それはできません」
私とゼーレ族の人がそんなくだらない会話をしていると、
「ベルナディット・マスグレイブの名において、此奴らの動きを止めよ」
ベルナが魔法を放った。相手を金縛りにあったかのように動かなくさせる魔法だ。
魔法はうまく効力を発揮したようで、ゼーレ族の方々は身動きが取れないようだ。
「エイリー、其方は先に行け」
「いいの?」
一応、ベルナの守りを任されていたはずなんだけど。
「妾のことは気にするな。妾は、此奴らに話がある」
「わかった、じゃあ遠慮なく!」
私はそうして、地下につながる階段を降りていくのだった。
次回、サルワさん登場です。やっとです。




