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逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。  作者: 聖願心理
第1章 アイオーンの跡継ぎ問題とその他諸々/第3節 ゼーレ族の問題(シェミー編とも言う)
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94 邪魔が多すぎて困る

本日一話目の投稿です。

これから2時間おきに最新話を更新していきます(最終更新は22時)

 外見が日本の古民家風なだけあって、中もほぼほぼの床が畳だった。靴を脱ぎたくなってしまうが、何があるかわからない。靴を脱ぐべきではないだろう。

 元日本人としての屈辱だ。だけど、ごちゃごちゃ言っている場合でもない。うう、もどかしいっ!


「こういう家には、至る所に仕掛けが隠してあるから絶対気、抜かないでね」


 忍者屋敷に似てる。絶対、床が抜けたり壁から人が出てきたりするって。そうであってほしい。


「じゃ、面倒な奴らが出てきたらよろしく」


 前衛組と後衛組に声をかけて、歩みを進める。



 * * *



「……どうして残ってるのが、私たち3人なの?」

「皆、他の奴らを相手にしているからじゃ」

「そんなのは知ってるよ?!」


 家に突入してから、私たちはことごとくディカイオシュネーの軍人と元ゼーレ族たちから襲撃にあっていて、あっという間に突破組しかいなくなった。

 当初の予定ではそうだったから何の問題もないんだけど、なんともまあ人数のいることだ。


「文句ばかり言ってないで進むぞ」


 レノにそう言って、先頭を歩く。


 シェミーは屋敷の奥に閉じ込められている。屋敷が広いし、入り組んでいるので、そこまで行くのに一苦労だ。


「こんな屋敷吹き飛ばしたら一発なんだけどなぁ」

「やめてくれよ?! シェミーに怪我をさせたらどうするつもりなんだ」

「だからやってないんじゃん。シェミーがいなければ吹き飛ばしたんだけどなぁ」

「豪快じゃの、エイリー」


 私の言葉にレノは焦り、ベルナは楽しそうに笑う。私が言うのも何だが、緊張している様子は誰ひとりとしてない。

 まあ、レノは騎士団長としてこういう場は何回も経験してるんだろうし、ベルナも王族として、マスグレイブ兄弟長女として、色々な場面をくぐり抜けているからだろう。


 こんな場馴れしたふたりがいて、とても安心だ。安心して、集団行動を乱すことができる。


 私たちは急ぎつつも、いつも通りの状態で進んでいた。

 だが、そんなスムーズに行くはずもない。


 何の前触れもなく、ひゅっと音がしてナイフが飛んでくる。


「……っ!」


 すれすれで避けられたが、私の髪に少しかすってしまった。

 危なっ。急に刃物を投げてくるなよ殺す気か?! ……殺す気だったね。

 殺気がまるで感じられなかったので、かなり手練れなんだなぁ、凄いなぁ。


「流石です、踊る戦乙女(ヴァルキリー)。私は心臓を狙った筈なんですけどね」


 そう言って、天井、壁、床などなど。至る所から、ディカイオシュネーの軍服を着た人たちが現れる。やっぱり出てきたっ!

 10人か。もっと隠れてる奴らいるんだろうなぁ。


「随分手荒なお出迎えをありがとう? そこを通してくれる?」

「……頷くと思いますか?」

「思わない」


 だよね !知ってたよ! あっさり通してくれるなんて、微塵も思ってなかったよ!!


「貴女たちには、ここで死んでいただきます」

「ほう? 妾を殺す、と。それはディカイオシュネーの総意なのかの?」

「…………」


 ベルナの問いにディカイオシュネーの軍人は黙る。

 だよね。ここで認めても認めなくても国際問題だもんね。答えられるわけないよね。

 ベルナは他国(アイオーン)の王族だ。しかも、次期女王になるかもしれない。そんな彼女を殺したとしたら……。面倒なことがいっぱい発生するな。


 でも、そんなことははっきり言ってどうでもいいのだ。

 私はシェミーを無事に助けて、サルワをぶっ飛ばすことができればそれでいい。


「……エイリー、ベルナディット様。ここは俺に任せて先に行ってください」

「そう言ってくれると思ってた! ということで行こう、ベルナ!」

「わかっておる!」

「やけにあっさりしてますね?!」


 レノと私とベルナの会話のテンポの良さに、ついつい軍人さんもツッコミを入れてしまったらしい。

 そうだよね。普通こういうのってもっと盛り上がるところだよね。「俺を置いて先に行け!」「そんなことできないよ!」「私も一緒に……」的な感じで。

 うん、知ってる。その流れは知ってる。だけど、無視する。


 想像以上に軍人が呆然としてくれたので、私たちはその隙をついて、軍人の囲みの中から脱出した。

 こういう時って小柄な女子ってほんと便利。するする〜って抜けていけるんだから。


「じゃあ、あとはよろしく!」


 そうレノにエールを送り、私とベルナは走り出した。



 * * *



 その後は大した敵と遭遇することなく、私たちはシェミーが囚われている部屋の前に着いた。

 誰もいない不気味さ。それが私をかなり緊張させる。

 絶対この先、強敵いるでしょ。わかってるんだからね!


「準備はいい、ベルナ」

「妾は大丈夫じゃ」


 ベルナの返事を聞いて、私はドア、というか襖を勢いよく開ける。ぱーんっといい音がした。


「ようこそいらっしゃいました、踊る戦乙女(ヴァルキリー)、ベルナディット・マスグレイブ」


 部屋の中には、5人の翡翠色の瞳を持つゼーレ族がいた。全員、年を取ってあるじいちゃんばあちゃんだが、何とも言えない迫力があった。


「サルワは何処にいるの?」

「この部屋の下です。ですが、我々はここを通すわけには行きません」

「でも、通らせてもらうよ」

「それはできません」


 私とゼーレ族の人がそんなくだらない会話をしていると、


「ベルナディット・マスグレイブの名において、此奴らの動きを止めよ」


 ベルナが魔法を放った。相手を金縛りにあったかのように動かなくさせる魔法だ。

 魔法はうまく効力を発揮したようで、ゼーレ族の方々は身動きが取れないようだ。


「エイリー、其方は先に行け」

「いいの?」


 一応、ベルナの守りを任されていたはずなんだけど。


「妾のことは気にするな。妾は、此奴らに話がある」

「わかった、じゃあ遠慮なく!」


 私はそうして、地下につながる階段を降りていくのだった。

次回、サルワさん登場です。やっとです。

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