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第七話 ー 魔法

「たっだいま~!」


 ボクらは拠点に戻って来た。

 レミーちゃんの元気な声が響き渡る。


「おお、戻って来たか!」

「お帰りなさい」


 先に戻って来たゴゼさんとクロフトさんは、ソファーに座りながらテレビを観ていた。


「聞いて聞いて! イギってば凄いの! 炎属性の魔物をーー」


 ちらっとボクを見るレミーちゃんだったけどーー


「ごわがったぁ(怖かった)」

「イギ!?」


 ぐったりと床に倒れているボクがいた。


「オイオイ、平気かよ!?」


 ゴゼさんが駆け寄ってくる。





 最後ボク達が受けた依頼のボスが、刺々しい羽を持つ大きな竜、ワイバーンだったのだ。

 そこでボクは巨大な相手に完全にパニックを起こし、水操ウォーターは役に立たないし、追いかけられるばかりだし、羽で飛ばされそうになるしで大混乱。

 自分から申し出たのに、本当にボクは炎属性の魔物以外の相手には完全に足手まといだと痛感した。

 フィサさんやレミーちゃんがいなければ、とっくに終わっていただろう。


「すみません、大きい相手だった上に……」

「イギは初めてだったし、仕方ないわよ。 でもとても助けられたわ。 ありがとう」

「そうだよ! 本当に凄い力で頼りにもなったよ!」

「くっ……オレも見たかった!」

「ふふ、驚くよ~?」


 レミーちゃんはしゃがむようにしてボクに近付き、


「体力だけ少し回復させるね、後は休んでて平気だから!」


 光がボクを包む。


「ありがとうございま……す」


 そうだ、力になりたいのだからここで臆する訳にはいかない。


 ボクは何とか立ち上がる。

 するとクロフトさんが、


「……夕食、美味しいもの作りますね」


 小さく微笑んで、キッチンへと向かった。


「わーい! 今日の料理当番はクロフトだー! 楽しみ!」

「クロフトは料理が得意なの。 二人一組の料理当番を、大抵一人でこなせるのよ。 私達のキッチンは設備もいいし」

「ま、二人一組っつってるけど、料理下手で足を引っ張るどこかの誰かさんもいるけ ぐぅおっ!?」


 ……フィサさんの肘が、ゴゼさんのお腹に突き刺さっていた。



 *




 夕飯まで休憩だと言われ、ボクは部屋に戻っていく。

 ベッドに横になりながら、ボクはまた考えていた。


 ……「水操ウォーター」以外に力になれるものはないか。


 せめて落ち着いていられたら、とも思うけど、そこはやはり慣れなのだろうか。


 皆のように、魔法でも使えたらいいのかもしれないけど……。


 魔法、か……。



 考えていたらまた瞼が重くなり、ボクはそのまま寝入ってしまった。





「おう、イギ! 夕飯だ!」


 大きな声の主はゴゼさんだ。

 ボクは目を擦りながら一階へと向かっていく。




「おはようございます」


 一階に降りていく階段から、ボクは一声挨拶した。


「夕食前の挨拶がそれでいいの?」


 フィサさんがクスリと笑った。

 …………2回目。




 今日の夕飯は、ビーフシチューに真鯛のカルパッチョだった。

 濃厚で口の中でとろけるような味わいのシチューに、彩りも鮮やかで見た目も美味しいカルパッチョのコンボは堪らない。


「先日出来なかったイギさんの加入祝いも含めて。 シチューも多めに作りました」

「そうそう! イギー! 仲間になってくれてありがとー!」

「ありがとう。嬉しいわ。」

「はっはっは、寂しさがまた飛んでったな! 感謝するぜ!」

「沢山食べて下さい。 ……ありがとうございます。」

「あ、ありがとうございます!」


 ボクは美味しさのあまり、シチューをあっという間に掻き込んだ。


「おかわりします!」

「あたしも! やっぱりクロフトの料理は違うわ~」


 そこへボソリとボクの隣から声が聞こえた気がしてーー


「…………私もあんな風に言われたい」

「フィサさん?」





 全員がお風呂に入り終わり、自由時間となった。

 ボクは緊張しながら、フィサさんの部屋のドアをノックする。


「どうぞ」


 ーーフィサさんの部屋は、綺麗に整頓されていた。


「イギ、どうしたの?」

「……あの……」


 思い切って、ボクは口を開いた。


「……………ボクにも、魔法を教えて貰えませんか?」

「え……?」


 フィサさんは目を丸くする。


「……ボク、炎属性の魔物以外には本当に役立たずで。 せめて敵を水浸しにして、感電させられるような力があればいいなって思って」

「……なるほどね」


 頷くフィサさん。


「……本気?」

「はい!」

「…………わかった。 精霊への誓いの事も考えておくわ。 でも、」


 歯切れが悪い。何か不味かっただろうか。


「……異世界から来たあなたに、元々魔力は存在しない。 険しい道のりになるのは覚悟しておいて」

「はい!」

「魔力はないから、最初から誓いが必要になると思う。 近い内に魔力の塔に行って、精霊と話してみましょう」


 フィサさんは忠告してくれた。


「……あと、あなたの場合は魔法は一つしか習得出来ないと思うから、注意してね」

「わかりました! 頑張ります!」


 そうしてボクは、フィサさんの部屋を後にした。





 翌日。

 会議が開かれる。


 内容は、ボクが昨日フィサさんに話した件だった。


「イギ、今のままでも十分だよ? 気にしなくて平気だよ」

「まだ力を見た事もありませんが、負担に思われないで下さい」

「オレは賛成だ! いや、オレもまだ水の力見た事ねぇが、イギがそうしたいならいいんじゃねーか?」


 皆口々に意見を述べてくれた。


「頑張ります!」

「……本当は私も反対なんだけれど……、イギも頑固ね」


 ふ、とフィサさんが苦笑した。



 ーーあれこれ話し合った結果、ボクは魔法を習得出来る事になった。

 明日にでも、塔に行く予定らしい。

 急だけど、自分が言い出した事だ。必ず習得してみせる。


「習得したら、クロフトも指導頼める?」

「わかりました」

「皆さん、ありがとうございます」


 ボクは頭を下げる。


「話し合いできちんと決めた事よ。 気にしないで」

「出来る限り支援させて頂きます」


 あれだけ我儘を言ったのに、とまた涙が溢れそうになる。

 けど、こうなった以上、必ず自分のものにしてみせる。



 明日は忙しいから今日の内にゆっくり休んでおいて、と言われた。

 魔力の塔ってどんな所だろう。

 一人考えを巡らす。


 思わず寝そうになった。 夕食前にまた一言言ってしまいそうだったので、我慢して起きていたら、


「ぐ~~」

「ちょっとイギ、何で寝ながら食べてるの!?」

「すまん、オレ達が作った料理不味かったか!? 確かにフィサも一緒につくーーぐえっ、足踏まれ……」

「イギ起きて! 私は確かに料理下手だけど、何か薬とかは入れてないから!」

「イギさん、寝不足ですか?」

次回、魔力の塔に向かいます。

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