第四話 ー 水操(ウォーター)と異変
相変わらず読みにくいかもです; m(_ _;)m
「4ヶ月前から、炎属性の魔物が急に増えだしたの」
「4ヶ月前、ですか……?」
ボクが“誕生“する2、3ヶ月前だっただろうか。
彼女は首を傾げる。
「簡単に言うと、元々、炎属性の魔物はいたんだけど、急に数が圧倒的に増え出した。 でも、この世界には氷魔法はあれど、“水魔法“は存在しない……、いえ、消えてしまったの」
「水魔法が、ですか……?」
そうよ、と言うレミーちゃん。
「正式に魔法を扱う職に就きたい場合、各属性の“精霊“に誓いを立てる必要があるのよ。 魔力を借りて更に強くなる為の儀式ね。 でも、百五十年位前だったかな……、“精霊戦争“っていわれる争いで、“水の精霊“が殺されたらしいの」
「精霊が殺された……」
クロフトさんが肯定するように小さく頷く。
「で、何でか知らねーが、詳しく書かれた本とかもなくて、オレ達もそれについては詳しくはわからないし、知っている人ももういないっつー訳だ」
フィサさんとレミーちゃん、ゴゼさんの言葉に、ボクは素直に驚いた。
「精霊の死により、水魔法は消滅した。 しかも代わりになりそうな氷魔法は、敵に溶かされるか温度を下げるだけだったの」
フィサさんの言葉に、
「なるほど……本来なら消えたはずだった力が現れて、皆ボクのそれを欲しがっていたんですね。実際は誓いや魔法とは違いますが」
「その通り。 次は私達の動向について説明するわ」
ようやく繋がった。
ボクは頷く。
「私達は、この異変の調査し始める事にしたの。 そしてほぼ時を同じくして、チームの一人で、しかもリーダーだったメンバーが行方不明になってしまったの」
「一人で軽く図書館にでも調査してくると言われたのが最後だったよね。 ……皆ショックだった」
レミーちゃんの目には、涙が浮かんでいるようにも見えた。
「でも、絶対生きてるって信じてる」
彼女はそう続けた。
「んで、俺達はそいつを探し出す為に今は動いてたんだ。 この現象に少なからず関係があると思ってな。 因みにリーダーはフィサが引き継いだ」
ゴゼさんが補足する。
再びフィサさんが口を開いた。
「今までは、行く先炎属性の魔物ばかりだから、魔法で氷を作って、それをわざと溶かしてもらって火を何とか凌いでいたの」
「何て原始的な」
ボクは思わず突っ込んでしまった。
重要な話なのだから、呑気に言っている場合ではない。
フィサさんはクスリと笑って、
「そうかもね。 でも、増加は魔法を使える職がいないチームに関しては大打撃だったと思う」
「少数ならともかく、増加してからはまず戦えないのよね。 あたし達も攻撃魔職が二人いるとはいえ、氷魔法を使えるフィサとクロフトの負担は多きいの」
レミーちゃんが困ったように言う。
「あたしには二人の体力を少しでも回復させる事しか出来ないし、ゴゼなんかデカイ割に戦力外だし」
「でも壁にはなっているじゃねぇか! レミーだってオレを盾にして炎凌いでるだろ!」
「立ってるだけじゃない」
「うぐおっ」
ゴゼさんは胸に何か刺さったような声を出した。
「だから、あなたの力を見た人間は、あなたを喉から手が出る程必要としていたのよ。 私達も借りたいの」
フィサさんは肩をすくめる。
「一人だったあなたを放って置けなかったのは事実。でも、あなた自身の謎について協力するのはもちろんだけど、何だか力を借りたいから勧誘したみたいになっちゃったわね」
それを聞いたボクは、
「気にしないで下さい。 ボク、このチームが既に大好きですし、孤独だったボクにとっては最高のチームですし! ボクでお役に立てるなら!」
また目を擦る。
………この世界では、ボクを必要としてくれる人がいる。
しかも、同じく異端者と呼ばれていた仲間達の力になれる。
それだけでも十分だった。
「ありがとな! イギ、君は救世主だ!」
急に席を立ち、ボクの首をがしっと抱き締めてきたゴゼさんだったけど、
「く、苦じ…」
「ぬぉ!? すまぬ!」
彼は慌てて自分の席へ戻る。
斧を武器としているだけあって、体は大きいし、ゴゼさんの筋力は強すぎた。
「これで、粗方説明は終わりよ。 長くなってごめんね」
「いえ! ありがとうございます」
「じゃあこの拠点を案内するわね。皆、解散よ」
「らじゃー!」
レミーちゃんの元気な声が響く。
それからボクは、フィサさんに入り口の指紋認識システムについて教わった。
そして目立つからと、敢えて人通りも殆んどなく、転移装置に近いこの場所を拠点としている事や、この拠点の部屋やお風呂等といった場所を教えてもらった。
加えて部屋一つもらえるなんて、何て贅沢なんだろう。
フィサさんに休憩時間だと言われ、ボクは教えてもらった二階の自分の部屋へ向かう。
すると、あとから階段を上って来たクロフトさんと目が合った。
「あ、ええと……」
クロフトさんは、フィサさんとはまた違った意味で落ち着いた人だ。
さっきから怪我までして助けてくれたお礼すら言えてなかったので、丁度よかった。話し掛けてみよう。
「……さっきはありがとうございました。 よ、よろしくお願いしま…す」
ボクの口下手!
自分に勝手にイライラしていると、
「…………僕は自分のやりたい事をしたまでです。そんなに緊張なさらないで下さい。 ……仲間になって下さって、ありがとうございます」
頭を下げられてしまった。
「あ、あ、別にそんな……」
ボクは慌てて首を横に振る。
クロフトさんは小さく微笑んで、
「…………気持ちはわかります。 最初は緊張する事が多いですよね。僕でもよろしければ、わからない事があればいつでも聞いて下さい」
「あ、ありがとうございます!」
今度はボクがつられて頭を下げる。
「…………………すみません、僕はこれが基本なので。 気になさらないで頂ければ」
……………デフォルト?
「あっ、あの!」
「? 何か」
「………あの空き部屋、行方不明になった仲間の人の部屋ですよね……? そのままになっている……」
「……はい」
「………掃除とかしないんですか?」
ボクは早速疑問を投げ掛けた。
だけど、触れるべきではなかったと直後に気付き、慌てて口を押さえる。
「…………彼がいつ“リンク・ウィング“に戻ってきてもいいように、部屋はずっとそのままにしてあります。」
あまり表情が変わらないクロフトさんだったが、
「……………彼、寂しくないといいのですが」
クロフトさんの方が、余程寂しそうだった。
「すみません、無神経な事を言って」
「いえ。 また何かありましたら。では失礼します」
クロフトさんはそれだけいうと、自室に入っていった。
本当に静かな人だ。
ボクも自分の部屋に入ろう。どんな部屋だろう。
部屋は綺麗に整頓されており、ランプや机、テーブル等が置いてあった。
自由に使っていいとの事。
「ふぅ……」
何となくベッドに横になる。少しだけ疲れを感じた。
転移してから、いろんな事があった。
あれだけ異端扱いされてきた“水操“を突然求められ、知らない人に囲まれて、見た事もない土地を歩いて、凄い技術を見て。
魔法や剣といった事を知って。
まだまだ知らない事が沢山ある。
学んでいけたらいいな。
そうしたら、異端だったボクはこの世界にもっと馴染めるだろうか?
少なくとも、異端でよく思っていなかった水操を、少しだけ好きになれたかもしれない。
いろいろ考えを巡らしていたら、疲れのせいか瞼が重くなり、まだ夜でもないのにボクはそのまま眠ってしまった。
説明回終了です。
次回から少々更新が遅れますm(_ _)m
お読み頂きありがとうございました!