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第二話 ー 仲間との出会い

自己紹介です。

「ご、ごめんなさい。 何か悪い事でも言っちゃったかしら……?」


 フィサと名乗った女性は、慌ててボクにハンカチを差し出した。


「……すみません。 ボク、ずっとひとりぼっちで、名前なんて呼ばれたの久しぶりで……。 ありがとうございます」


 彼女は一瞬だけ驚いた表情を見せると、


「そうだったの……」


 そう言って、その表情はすぐに笑顔へと変わった。


「お礼を言われるような事は何もしてないわ。私はあなたの味方よ。気にしないで」

「……ありがとうございます」


 警戒していない訳ではないが、この女性は悪い人ではない。涙を拭う。


「……幾つか聞きたいのだけど、あなた、さっきこの世界の人間じゃないって言おうとしてたわよね?」


 再びありがとうございます。 聞いてくれていたんですね。


 ボクはまた涙しそうになった。


「いく宛、ある?」


 そう問われ、


「ないです」


 思わず即答。


「いく宛がないなら、私達の所へ来ない? こう言ったら難だけど、あなたの力も借りたいの」

「え、いいんですか!? それに力って…?」


 どんどん頭に舞い込んでくる先程の男性達の変わった姿や、“チーム“やら“スクシスタンツ“やら“力“等の言葉に、ボクの頭は混乱するばかりだった。

 だけど助けてもらった上、親切にしてくれるのは有難い。


「悪いけど、詳しくは後で話すわ。 ここでは長話は出来なくて」


 そう言われ、宛てもないボクは彼女の後を付いていく事にした。

 あんなに警戒していたこの世界だけど、今は平気だ。この人は信頼できる。

 そんな不思議な確信が、ボクの足取りを少し軽くしていったのだった。








 ついていった通りには、ギルド、雑貨屋、武器屋、防具屋、宿と、見た事もない様々なお店が立ち並んでいた。


「凄い……」


 ボクは素直に言葉を発した。


「珍しい?」


 フィサさんが笑みを浮かべながら話し掛けてくる。


「はい。 新鮮です」

「ふふ、丁寧語もいらないし、呼び捨てでもいいわよ」

「じ、じゃあ……フィサで。 ボクも呼び捨てにして構いません」

「わかったわ」


 言い慣れないというか、信頼できると感じてはいたけど、出会ったばかりの人に変わりはない。

 それにどう見たって歳上だ。

でも、仲良くなれるといいな。


 淡い期待を抱いていると、巨大な光の玉が目に映る。


「あれは……?」

転移装置ワープゲートよ。 この世界限定だけど、別の地域にワープ出来るの。 好きな転移装置にワープ可能よ」

「え、そんな凄い発明品が!?」

「この世界では当たり前よ」


 凄まじすぎる技術。

 異端なボクだけど、この世界にも異端が溢れているような気がする。


 ……この世界、ボクに合うかな。


「移動するわね」

「え、入るの!?」

「そう。 初めてだろうけど安心して。 少し眩しい位だから」


 その時だった。


「オイ、あいつさっきの池の奴!」

「いや待て、一緒にいるのは“リンク・ウィング“の奴だぞ!?」

「こんな堂々とあのガキを手に入れて連れ回して……ふざけんじゃねー!」


「……フィサ……さん」

「無視して」


 呼び慣れない。

 それにしても、フィサさんのその言い方が、ボクには少し寂しそうに聞こえたんだけどーー



 そうして、ボクらは眩い光を放つ球体の中へと入って行くのだった。






「着いたわ」


 転移装置から出て、歩く事二分。

案内されたのは、人気の無い閑散とした場所だった。

 砂漠のような色の大地。近くには転移装置が一つ。

 フィサさんが転移装置の近くで空中に円を描くと、円の中央に掌のマークが現れる。

 彼女が右手の掌をマークに合わせると、空間に縦にヒビが入り、やがてヒビは扉を形作った。


「入って。 自動ドアよ」


 ビックリする程の技術に、ボクは入る前に腰が抜けそうになる。

 中に入ると、まずは大声が飛んできた。


「おかえり………っておお! 君は噂のウォーターボーイ!」


 ……ウォーターボーイ?

 早くもボクは“水“の影響で有名人になってしまったようだった。 いつの間に容姿まで。

 でも、何故だろう。さっきからこの力、ひたすら歓迎されているような気がする。


「ただいま。 逆ナンしてきちゃった」

「何だそりゃ!」


 がっはっは、と笑っているのは斧を構えた恰幅がよく鍛え抜かれた筋肉を持つ、巨体な男性だった。

 30歳過ぎだろうか。


「逆ナンって何ですか?」


 ボクが何気なく質問をしたら、ズデンッと転びそうになった音二つ。


「冗談は置いておいて……。 皆、ただいま。イギ、奥へ入って」


 案内されたその場所は、まるで「家」のようだった。

 沢山の本、タンス、テーブルに椅子。

二階まである。


「“リンク・ウィング“へようこそ、イギ。 ここは私達の拠点よ。 後でまた案内するわ。 皆、集まって。」

「は、はい」

「少年よ、そんなに緊張しなくていいぞ。 呼び捨てにしていいし、丁寧語もいらん! オレたちゃみんな心が広いからな! がっはっは!」

「う、うん……」


 すると今度は、小さな女のの声がした。


「ちょっとゴゼ、ウォーター君困ってるじゃない!」


 少女は不思議な模様が描かれた服を着ており、髪は金髪のツインテールだった。10歳位だろうか。胸元の赤い宝石が目にとまる。

 でも、ウォーター君も出来れば避けてほしかった……


「いや~、つい興奮しちまってな! まさかオレ達があのウォーターボーイを迎えられるとは!」


 ゴゼと呼ばれた大男は、


「お前もビックリしただろ? レミー」

「あたし、あなたみたいな騒がしい人好きじゃない」

「ぐっはぁ!」


 ………レミーという少女と、温度差のある掛け合いをしていた。

 その光景を眺めていると、すっ、とボクの元へ近づいてくる少年の姿があった。


「………クロフトと申します。 以後お見知り置きを」


 クロフトと名乗った少年は、少し長い濃い紫の髪を首の半ば辺りで一つに纏めており、スラっとした体格だった。

 年齢はボクより2~3歳上位に見える。


「み、皆様いいんですか? ボク、突然来たのに」


 するとゴゼさ…ゴゼがポンッとボクの頭を叩く。


「気にすんな! フィサが連れてきたんだ、いい奴に決まってる!」


 ……ふと、また泣きそうになる。

 ボクみたいな異端児、本当にこんないい人達の輪に入っていいのだろうか?


 ゴゼさんは大声で笑いながらテーブルに向かう。


 そうだ、集まってって言われてたんだ。





 ーー話の内容は、会議のようなものだった。

まずはボクの名前も含めた皆の自己紹介。


「初めまして、イギ・レイシヴです! 水操れます!」


 それだけしか言えない自分を悔いた。


「名前は一応名乗ってるけど、とりあえず私から。 フィサ・ルーティス。 職業……、戦闘に置いての立ち位置は、魔法戦士マジックナイトよ。 よろしく」

「オレゃゴゼ・ハイン。 斧戦士ベルセルクだ! ま、よろしくな!」

「レミー・フィートよ。 職業は回復魔導士クレリック。 よろしくね!」

「……………改めまして、攻撃魔導士ウィザードのクロフト・フォーレンです。 よろしくお願い致します」


「………クロフトさんは丁寧語でもいいんですか?」


 隣の席のフィサさんに小声で話し掛ける。

「彼、頑固なのよ」と返された。


 次はこのチームに入った経緯。

 ボクは生い立ちやこれまでの経緯を、全て正直に話した。

 何故だろう。何度も思うけど、最初はあんなに初対面だからと警戒していたのに。

 でも、この“チーム“には不思議な安心感があった。


 皆は、どこの馬の骨かもわからないボクを、何一つ責める事無く受け入れてくれた。

思わず涙が出そうになり、それにも「平気だから」と等と言われ、ますます涙が出そうになる。

 そしてボクについて、親身になって考えてくれた。


「異世界転移か……。 そりゃ水を操るなんて力、()()持ってる奴いねえもんな、こっちには」

「ええ、記憶喪失というのも気になるけれど」

「突然の“誕生“に“水操ウォーター“、元からこっちの世界にいてほしかったな」


 ボクはボロボロと涙を流した。


「すみません…こんなまともな会話、久しぶり過ぎて……、否定され続けてたのに、こんなに歓迎されて」

「おぅおぅ、これからはオレらがいるぜ! 転移してよかったな!」


 頷くボク。


「ボク……許されるならずっとこっちの世界にいたいです」

「転移前は話せる人もいなかったのよね。 気持ち、わかるわ。 ……そうね……。まずはあなた自身の謎をゆっくり解明してみましょう。 お礼っていう訳じゃないけど、私達も手伝うわ。」

「い、いいんですか!?」

「もちろん! ただ、力を貸して!」


 レミーちゃんが元気な声で述べる。


「ありがとうございます。もちろんです! ……ただ、」


 ボクは一つ区切って切り出した。


「……あの、そろそろボクもいろいろ聞いていいですか?」


 すると、


「そう来るのは当然よ。 ごめんなさい、あなたの疑問をここまで蔑ろにして。 答えられるものならい幾つでも答えるわ」

「ありがとうございます」


 フィサさんが頷く。


「……教えて下さい、この世界は一体どうなっているのか、“チーム“や“スクシスタンツ“とは何なのか、“リンク・ウィング“は何を意味するのか、そしてどうしてボクの“ウォーター()“はこんなに求められているのか」

疑問多すぎですね。

暫く説明会に入りますm(_ _)m

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