夢Ⅱ
町はずれの廃工場。
昼間とは打って変わり静けさが支配する街。
俺はそんな世界を生きていた。
かつての相棒に呼び出され、この廃工場に来た。
俺がここに到着してすぐに奴もここにやってきた。
「そんな立派なナイフを携えてどうしたよ。」
「どうしたもこうしたもない。お前を殺すんだ。相棒。」
眼鏡をくいと持ち上げながらそう告げられる。
「つれない事言うなよ、相棒。どうせ組織の命令なんだろ。」
奴の持ったナイフ、いや正確に言えば持っていたナイフだろう。
そいつが俺の脇腹に深々と捩り込まれた。
鋭利な刃物が突き刺さった時はこんな感覚だったんだな。
じわじわと血が広がってゆく。
「がっ……ぁぁぁ。」
きっと内臓まで刃は届いているのだろう。
これはもう助からない。
奴がニヤリと口を歪ませる。
どうしたってそんな幸せそうな顔ができるんだよ。
こっちはこんなに苦しんでるのによ。
先程よりも更に血は広がりを見せ、俺は地面に倒れ込んだ。
もう倒れたことによる痛覚は感じない。
ごぼごぼと口から血が流れだす。くそまじぃ。
そんな感想を最後に俺の世界に対する感覚はプツりと途切れた。
「っつー夢をみたんだ。」
「疲れてんじゃねーのお前。」
夢の中で俺を殺した犯人とそっくりな顔をした友人は問題集と格闘しながらそう言った。
やはり此奴は覚えていなかったか。
このすまし眼鏡に期待した俺が馬鹿だったよ。
「流石に前世の記憶なんて残ってねーよなぁ。」
「ん?なんか言ったか?」