私の妹が可愛くてしょうがないからたっぷり可愛がってあげたら(想像の中で)それがブーメランでばれた話
「……」
妹の部屋で私は固まっていた。
落ち着け、落ち着くんだ、私……!
ここで私は胸を抑えて、深呼吸を1つ。
ちょっとバカっぽいて思いつつほっぺたをつねってみる。正常。夢じゃない。
私の名前は?
瀬戸彩音。19歳。去年高校を卒業してニート大学に合格。立派な自宅警備員に就職しました……と。よし、こっちも正常っと。
「でもこれって……」
あいもかわらず目の前にはさっきと変わらない風景が広がっている。
ゴシゴシ、ごしごし……
「……夢じゃない、か……」
ほっぺたをつねっても、目をこすっても現実は変わるはずもなく訴えかけてくる。
「……ほんとどうひよ……」
思わず声がだらしなくなってしまった。
今、私の目の前にあるのは、皆さん大好き薄っぺらい絵本。
しかもえっちなやつ。
さらに百合。
極めつけは姉妹物。
てか、姉妹ものお⁉︎
「どうしよ……同志よ……」
実のところ、私もそっち系が好きなのである。
「……なんてことを言ってる場合じゃなくてっ‼︎」
今は涼音のやつ高校に行ってるけど、そろそろ帰ってきてもおかしくないし……
そんなことを考えつつも、ついつい手が勝手にページを開いてしまう。
うわぁ……結構えげつないのすきなんだなぁ……まったくいつの間にこんな変な(人のこと言えない)方向に……昔はあんなに純粋だったのに。
《私の脳裏の中に映る妹の姿》
「おねーちゃん!」
抱きついてくる涼音。
「おねーちゃん!」
私と一緒に下校するランドセルバージョンの涼音。
「おねえちゃん」
卒業証書を持った私の隣で悲しみをこらえて笑顔を作る涼音
「おねぇちゃん♡」
ベッドの上で裸で手を伸ばしてくる涼音……
「ぅぉおおおおおおお⁉︎」
「ただいまーーーーーー!」
ぎゃーーーーーーーーーーーー!
心臓と一緒に飛び出しそうになった悲鳴を私は口を手にあてて飲み込んだ。
今私がこれを見つけたことは知られてはいけない!絶対にだ!
家が世界の全ての私にとって、家族との不仲=死。特に妹に嫌われたら……
涼音に嫌われるなんて私、死んじゃう!
ということは。
脱出するしかない。幸いうちの涼音ちゃんってばいい子だから家に帰ったら手洗いうがいを……
「あやねえ〜?いないの〜?」
涼音の声と階段を上がる足音。
いつものように返事をしなかった私を心配してくれるなんて……なんていい妹なんだ……でも、今じゃない!
「ん〜?あやねえが外に出てる訳ないでしょ?」
おお、なんて素晴らしい信頼関係なんだ!でも、
とにかく、まずい。
今からでもここを出ないと!
決心したコンマ001秒(体感)、私は人生史上最速の動きで床に手をつき立ち上がると(ここまでコンマ002秒(体感))、その勢いのままドアへ突進しノブをひねって廊下へ……
「あやねえ何してるの?」
出たところで階段を上りきった涼音とバッチリ目があった。
「あ、あの……幽霊ごっこ?なんてね〜あはは」
そのまま私は、す〜っと部屋に引っ込んだのだった。
☆☆☆☆☆☆
「ほんと、最近暑くてやんなっちゃうよね」
その後、勝手に部屋に入ったことはなぜかお咎めなしで涼音の部屋で彼女の話を聞いていた。
「おまけにうちの高校貧乏だからクーラーついてないし。
セーラー服から着替えて半袖短パンになりベットに腰掛けた涼音が言う。その手には二階に来る前に冷蔵庫から持ってきた棒アイス。
「あーっもう本当にいやになっちゃうよ」
そう繰り返すと涼音はアイスにかじりついた。
「んん〜!おいしい‼︎」
涼音は私の前でそう言いながら顔をほころばせ、足をばたつかせる。
通称女の子座りをしている私の前で、ほっそりとした2本の足がゆらゆら揺れて、
うへっ、涼音の足はやっぱりきれいだな(下衆な笑顔)
おっと危ないよだれが……♡
実際、家族だということを抜いても涼音は可愛いと思う。私がまだ高校にいた時(まだまともだったはずの時)2つ上の私にも噂が届いてきた。
男子を1日に4人ふったとかなんとか……(デマだと思うけど)
足もいいけどスタイルも抜群で、胸だけワガママで、髪はサラサラでいいにおひが……
涼音を足からそっと視線を這わせていた私の目と、それを怪訝そうに見る涼音の目があった。
「あやねえ話聞いてる?」
「え⁉︎ き、聞いてるよぉ! ほんと最近暑くてやだよね……ハハハ……」
「あやねえずっとクーラー効いた部屋にいるじゃん」
「おぅ……」
妹よ。なかなか気の利いた皮肉を言えるようになったじゃないか。
手に持ったアイスを少し見つめて、涼音は小悪魔的に微笑みながらこちらを向いた。
「あやねえもアイスたべりゅ?」
一瞬の脳内のホワイトアウト。何を言われたのか理解の追い付かない私の頭に涼音の言葉が反響する。
たべる? アイスを? さっきまで涼音が食べてた? そそそそれって=間接キス
「えっ、いいの? うへぇ……」
溶けきった理性と脳を頑張って働かせて私は返事をする。
落ち着け。ここで下心がばれたらせっかくのチャンスが台無しに。
「やっぱや〜めたっ!」
「え〜っ!」
そう言うと私の伸ばした手をよけるようにして、残りのアイスを食べきった。
「な、なんで……」
「えっ、だって、お姉ちゃんの顔が変質者みたいだったから」
「ぐぅ……」
不覚。つい顔に出てしまった。
「はあ〜ぁ。じゃあ私はこの辺で」
私は失意に肩を落として部屋を出て行こうとすると、
「で、探し物は見つかったの?」
⁉︎
振り返ると、涼音は意味ありげな顔をしていた。
「探しものってなんのことぉ?」
絶対私顔に出てる! まさか昨日壁に耳をつけて妹に危険がないか確認していたら変な声が聞こえて何があったのか妹の部屋を観察しにきたなんて長い文章が顔に書いてなんか……
「じゃあどうして私の部屋にいたの?」
やべー。どうやって言い訳しよう……えーっと……
「まあばれちゃったみたいだけどね」
私を見ていた涼音の視線は動き、私もそれを追う。
『やあ!』
本棚に押し込んだはずの、さっきまで見ていたそいつが覗いていた。
お、おまええええええええ!慌てて元に戻そうとした私にも非はあるけど……この状況はかなりまずい。まじで。
「私のコト……ばれちゃったみたいだね」
「いや別に私は忙しい妹のためにちょっと掃除をしてあげようと思って部屋に入ったら見つけただけで……うん、ちょっとたまたまそれが落ちてて、」
はい。とりつく島もなし。
「でもさ。こんな時だから言っちゃうけど、お姉ちゃんも好きだよね。こうゆうの」
どきっ!
「え……なんで知ってるの?」
「というかばれてないと思ってたの?」
優しく微笑みながら近づく涼音に私は動けない。
「あとさ……あれ書いたの、多分お姉ちゃんだよね?」
涼音のしなやかな指が本棚を指差す。
どきどきっ! 最後の砦が崩れたような気がする。
「……」
「あたり……かな?」
「いや、ちょっと友達のを取り次いだだけで……」
「嘘は……ダメだよ?」
涼音が私の唇に指をあてる。
私の背中を冷たい汗が流れる。
「主人公の妹、私ににてたから」
だから、私は力をふりしぼって答えた。きっと楽になると思ったから。
「うん……」
「私、お姉ちゃんの絵本たくさん読んで勉強したから……」
涼音の腕が私の腰に回される。
顔は近づいておでこがぶつかった。妹のはきだした息はバニラの甘い香りがする。
「わたし……」
涼音の目がまっすぐわたしを見つめる。
「お姉ちゃんのこと……大好きだよ」
2人っきりの部屋。夢に見たものが手に入れられた時、その現実にそっとキスをした。
詳しい経緯は活動報告に書いてあります。物語のイメージは変わるかもしれませんが是非読んでください!