第6話 ~白い手~
■成分・ この物語は作者自身の身に起こった事を忠実に盛って作成されています
■効能・ 本製品は、暇な時間の緩和に効果を発揮するアレですよアレ。
■用法・ 容量・本製品は1日1ページ位を目安に御使用ください。
■注意・ 用法・容量をキチンとお守りください。もし、次の症状があった場合は直ちに使用を避け一部の症状が現れた場合、医師とご相談下さい
目の充血、目のかすみ 眠気 破壊衝動 狂喜乱舞 作者への誹謗・中傷(ここ重要)
第6類医薬品.?
小学生の頃の話をしよう・・・
オイラの家から少し離れた場所に大きな沼があった
その沼は周りがハイキングコースとなっていて多少ではあるが遊具も設置されている
入り口にあるのは石に彫られた○○沼公園の石碑
沼を取り囲むようにして広がる空間には敷地面積の割には公園と言う名の小さな広場と多くの木々が生い茂っていた
そこへ……ポツリ、またポツリといる釣り人達
ここは釣り場としても結構有名な場所であるらしい
今日は平日とあってか割と人が少ないほうだ
だが、沼の周りはある程度舗装されており、足場も良く、休みの日などは多くの釣り人達で賑わいを見せている
この日、オイラは仲の良い友達を引き連れて沼へと釣りへ出かける事にしたのであった
仲間を引き連れ、自転車を漕ぐ
急いで到着すると何処か適当なところへ自転車を放置する
そして釣り道具を片手に散って行く仲間達
オイラも釣りを開始するべく適当な個所ポイントへと散策を始めた
適度に回わって、ある程度の場所で腰を落ち着かる
水面に釣り糸をポチャンと垂らして獲物が掛るのをジッと待った
だがこの日、オイラは何とも言えない違和感の様な物を感じ取っていた
嫌な予感がする
何時もであれば既に何匹か釣り上げられている筈なのだがこの日の獲物は一向に掛らない
オイラは只々ジッと獲物が掛るのを待っていた
暫くして、どのくらい時間が経ったであろうか
いつまで経っても掛からない獲物に、業を煮やしたオイラは道具を残して沼の周囲の散策を始める事にした
良い所は既に別の釣り人達に占拠されてしまっている
一応、釣り人のマナーとして騒がす静かに散策を開始する
どの位、歩いたであろうか
気付けば辺りに人の気配がまるで無い場所へまでやって来ていた
沼からも少し離れたこの場所は雑草が大いに生い茂り、そびえ立つ高い木々は辺りの日差しを遮っている
辺りは薄暗く、不気味な雰囲気に包まれていた
そんな中、不自然に雑草が掻き分けてある個所があった
こんな雑草だらけの所に誰か分け入ったのか?
オイラは好奇心に連れられ、雑草をかき分けながらその道筋に沿って奥へ奥へと分け入っていった
目の前に広がる沼
だが、なぜだろうか?
この場所からは何やら薄ら寒い物を感じさせられる
特に強烈に何かを感じたという訳でもない
だがオイラはこの時ばかりは何かしらの予感を感じ取られずにはいられなかった
風が吹き抜け背筋に悪寒が走る
握り締める手にはジットリと汗が滲んでいた
横を見ればそこにヒッソリ佇む小さな社やしろ
「なんでこんな所に社やしろがあるんだろう?」
オイラが不思議に思っていると――
そんなある時、
「お――――い!」
不意に誰かがオイラを呼ぶ声がした
「お――い!」
再び聞こえる謎の声
何やら声は徐々に、こちらの方へと近づいてきているようだった
「おーい!」
声が近くで聞こえた
やはり誰かが近づいてきているのだ
オイラに何か用なのだろうか?。声は草むらの向こう側まで迫ってきていた
「お~い!」
影が迫る
しばらくすると草むらの向こう側に何やら小さな人影が見えた
しかし、こんな誰にも見つからないような場所で一体だれが?
そんなことを思っているとオイラはある事を思い出した
それはこの声の主、これは友達の声だ
よくよく考えて見れば当然
(しかし、よくオイラがここに居るのが分かったなぁ~。草むらをかき分けて入ってきたのに……)
オイラは不思議に思いながらも友達に声をかけていた
「どうした~?」
ゆっくりと近づいてくる友達
返答のない友達
だが、ここでオイラは〝あれ?″と思った
こいつは誰だ?
思い返してみればこいつが誰だったか思い出せない
嫌な予感がする
確かにこいつは友達である筈なのだ
だが今思い返してみてもこいつが誰だったか思い出せない
焦りが募った
「ねぇ、どうしたの?」
その謎の友達が声を掛ける
その声にハッと我に返ったオイラは友人の顔を覗き見る
靄が掛かったかのようにぼやける友人の顔
オイラの思考が一端、停止した
「…………」
しかしここで再びある事を思い出した
それは――
なんでしょね?
ただ単に昔の事だったので今の私がよく思い出せなかっただけという事なのだ!!
謎が解けた
なのでこいつの事はモブAとしておこう
オイラは近くに来たモブAの顔をチラリと盗み見る
何故か口元だけをニヤリと笑いを浮かべるモブA
オイラの体の中に緊張が走った
やっぱり顔を思い出せない!
いや、それはもういいか……話を戻そう
この時、オイラは汗ばむ手に何か違和感を覚えた
何かを握り締めている感覚がある
いつから握っていたのであろうか
オイラはいつの間にか小さな破片を握りしめていた
オイラは意味もなく手にしていた物を沼の中へと放り込む
なぜかそうした方がいいような気がしたからだ
手から離れた其れは宙を飛び、弧を描くようにして落ちていく
そして沼底の中へとユラユラと揺れながら沈んでいくソレ
その時だった!!
水底から手が現れた
その手は白く、細く、そしてゆっくりと水底から這い出して来る
それが一本、二本、三本、四本と段々と増えて行き――
やがてはオイラが投げ入れたそれを掴んで沼底へと運んでいく
水の奥底から次々に這い出てきた白く細く長い手、手、手……
それは妙に透明感があり、向こう側が透けて見える
「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ・・・」
オイラはその様子に声を上げる
白く細長い手はその後もどんどん這い出してくる
何本もの白く細長い手がオイラの投げ入れたそれを奪い合うかのように沼底で争っている
「おい、今のは何だ?」
「あれは〝手″……だろ?」
「まさか!!。見たか!、お前も見たのか!。」
「あぁ……お前が投げたアレを引きずり込んでいってたな」
モブAと供に語り合う
そして二人は思わず大声をあげていた
「×▽※○▲#……」
恐る恐る網を持って水際まで近づく
頷く二人
そしてオイラとモブAは……
もちろん、その〝手″に向かって〝ザッパ、ザッパ″と友達が持ってきた網を振るう
狙うは先程、手が出て来た場所である
水の中を掻き回す
オイラはさっきの手を見て酷く興奮していた
友達も興奮していた
何故ならば――
「手長エビが超居たよ~」
「やべぇよ~。やべぇよ~。ここにこんなに居るなんてなぁ・・・」
「オイラが偶々(たまたま)持っていた餌にこんなに喰らいつくとは思わなかった~」
一通り辺り一面の水面を引っ掻き回す
そしてオイラはおもむろに網を揚げてみた
じっくり網を覗き込む馬鹿二人
そして絶句した!!
二人して絶句していた・・・
「「 馬鹿な! 」」
二人の声が見事にハモる
「網の中に一匹も手長エビが入って居ないなんて・・・」
「何で入って居ないんだ。もう一度、もう一度やるんだ~」
「おう!」
「いや、俺がやるからその網返せ」
「駄目だ、オイラがやるからまっとけ!!」
二人して頑張ったがその後もエビが入る事は無かった
あれだけの手が見えていたのに一匹も入っていなかった
そしてオイラ達二人は意気消沈しながら皆の元へと戻っていったとさ……
後ろ姿に哀愁が漂う
そして哀愁漂う中、オイラは友達へと語り掛ける
「そういえば良くオイラの場所が分かったなぁ~」
「あぁ、あっちの方へ行くのが見えたから・・・」
「そっか・・・」
「あぁ・・・」
この日、誰もエビを釣り上げたものはいなかった
皆が坊主に終わった瞬間
そして今日釣りに来ていたのは手長エビ釣り
いいポイントは皆他の釣り人に取られていて・・・
初めに感じた嫌な予感は的中した
つまり釣れそうにない・・・
社の周りだけはポイント的に良さそうだった
だが、捕れなかった
そういえばあの時の他の友達は誰だったかなぁ~
まぁ、昔の記憶だから忘れていても仕方が無いか・・・
思い出せないものは思い出せない
しかしこんな出来事があった事だけは今でも鮮明に思い出す




