第19話 ~空に浮かぶ白い影~
この日、オイラは数名の糞ガキ共を連れてザリガニ釣りへと赴いていた
いや、この言い方は無いかな・・・
この時のオイラは、まだ小学生
オイラは数名の友達を引き連れてザリガニ釣りへと赴いた
チャリを転がし現地の小川へ到着すると皆は思い思いの場所へ散っていく
そしてオイラは、と言うと――
何故かその場からはあまり動かず、じっと空でも眺めていた
ザリガニ釣りも楽しくはあるのだけどこの時のオイラは何故かそんな気にさせられる
空を見上げると空は何処までも高く清んでいた
するとそんな空にポツリと、白き物体が空に浮いていた
(何だアレ?)
初め、何かの見間違えかと思ったが、その白き物体は確かに浮遊している
まるで中空をユラリ、ユラリと舞い踊るかのようにも見える謎の物体
「あれは・・・何だろう。まさか、一反木綿?」
何故か脳裏にそんな言葉が浮かんできた
一反木綿
それは俗にいう妖怪の事である
姿は約一反(幅36㎝長さ12m位)、木綿のような姿の妖怪で夕暮れ時にヒラヒラと飛んで人を襲うという
襲い方はまちまちで、首に巻きついたり顔を覆って窒息死させるといわれている
また、反物のようにクルクル回りながら飛来しては人を巻き込んで空へ飛び去ってしまうともいわれている妖怪だ
青きキャンパスに、まるでその一点だけが白き異物として存在感を感じさせる一反木綿
オイラは目を細めながら、その物体をゆっくりと目で追いかけていると、やがて一反木綿は段々とこちらへと近づき・・・
そして大地へと降り立った
(結構近くに落ちたな!!)
オイラは突如走り出す
何せアレが着地したのはここからかなり近い位置だからだ
ここから100メートル位であろうか
オイラは元気に駆け出した
現場に到着する
すると何かが落ちていた
白い布切れ
それは――
パンツだった・・・
男物の白いパンツ
しかもブリーフときたものだ
ブリーフが足元に転がっている
オイラは落ちていた棒切れで取り合えずブリーフをツンツンしてみる
特に動かない
股間の所が黄色かっただどうしようと等とどうでもいい妄想を膨らませたが、残念ながらそのブリーフは純白だった
次にオイラとしてはこのブリーフを警察に届けるべきだろうかと考える
落とし物は警察に・・・
これは小さい頃から叩き込まれた、もはや刷り込みとも言うべき習性だ
『えっ、パンツを届けるの?』と思う人もいるかもしれない
だがこれもれっきとした落とし物
しかもオイラは知っていた
落ちていた物は警察に届けると拾い主に何割かをもらう権利があるという事を、。
パンツ、しかもブリーフの何割かをもらう権利・・・
「いらねぇや・・・」
(股間の辺りだけを切って貰ったらどうしよう)
どうしようもない考えが過る
もしも、そんなパンツをはいた日には大事な部分がポロリと、
アレがアレしてニョロリと出てきて、
だがここで再びオイラは考える
いやまて、ブリーフは小便がしやすいように股間に切り込みがあいている!!
ヤバイ、既に穴が開いているんだ!!
どうでもいいアホな事を考えてしまった
結論――
見なかった事にしよう
オイラはその場を後ずさる事にきめた
すると友達の一人がこちらへとやってくるのが見える
ヤバイ・・・
このブリーフを見られたらどうしよう
オイラは友達が来る前に素早く友達の下へと駆け寄る
ここには何も無かった事になっているのだから
オイラは努めて明るく平常心でやってきた友達へと語り掛ける
「どうかしたの?」
「いや、一人で変な所へ行くからどうしたのかなって・・・それで、何やってたん?」
どうやら友達は、一人小川から離れているオイラを不思議に思ったらしい
なんて答えるか・・・
オイラは言葉に詰まる
そして、考えた結果――
「ブリーフ一枚・・・空を飛んでる男のパンツを見ていたんだ。」
「は?」
友達は『何言ってんだコイツ』ってな感じでオイラの顔を見てきた
だが話は終わらない
「そのパンツは純白で・・・」
「はぁ?」
「そしてそのパンツには大事な処に穴が開いていて・・・」
「はぁぁああああ!!」
「拾った棒でツンツンしてみた!!」
「ほあぁぁぁぁぁぁあああ・・・」
「そのパンツをとって警察にでも駆け込もうか・・・」
「お前、頭大丈夫か?」
この日、空は何処までも青く
強風が吹き荒れていた




