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第17話 ~暗闇~

 季節は冬

 あれは確かオイラが部屋でまったりとしていた頃の出来事


 辺りは既に暗くなっていた


 仕事から帰ってきたオイラは真っ先に自室に籠ると部屋の照明でんきをつける

 すると、部屋の中が明るくなった

 ついでとばかりにテレビの電源も付ける

 すると今度はテレビのスピーカーから音が流れ始め、画像に色が付き始めた

 だが、突然天井の照明が・・・


チカ、チカ、チカチカ……


 フッリッカージャブの如く部屋の照明でんきが明暗を繰り返す

 それもやがては『フッ』と消えた

 辺りが暗闇に包まれる

 だが、真っ暗などではない

 テレビの電源が付いていたからだ

 これで唯一頼りとなるのはテレビから漏れる明かりのみとなった


 オイラは薄暗い中『何か代わりの明かりになりそうな物は無いか?』と、思いテレビから漏れる明かりだけを頼りに辺りを見渡す

 だが何もない


「仕方ないか・・・」


 オイラはあきらめる

 その時、オイラの体を何処か得体のしれない風が、まるで体をなでまわすかのように通り過ぎた

 一瞬、ブルリと震える

 オイラは不思議に思いながらもとりあえず冷気の入ってきたであろう窓へと顔を近づける


「あれ?。オイラ、窓開けてたっけ……」


 その時、何か部屋の外に誰かの影がよぎった気がした……

 あくまで気がした


 ちなみにここは二階

 仕方なくオイラはもう一度目を凝らし確認する

 すると、もちろん誰も居ない

 誰もいなかった


 オイラは『気のせいか?。』そう思うと再びテレビへと視線を向ける

 すると、今度は――


トン、トン

  トン、トン……


 まるで何か扉を叩くかのような音

 オイラはこれも気のせいかと思ってこの時は無視した

 だが、また再び……


トン、トン

  トン、トン…………

  

 音が聞こえてくる


「一体、なんの音だ?」


 オイラは不思議に思った為、そっと部屋の扉を開けてみる事にした

 その時!!


ギィ……


 扉が軋む音が聞こえた

 もちろん、誰も居ない

 扉の向こう側には暗闇が広がっている

 ただそれだけだった……


「やっぱり気のせいか?」


 オイラは部屋の電気がもう一度つかないかと最後の足掻きとばかりに確認してみる

 もちろん無理だと分かってはいた……が、念の為である

 電気をつけたり消したりとパチパチ切り替える

 しかし、やはり明かりは付かない


「やっぱ無理か・・・」


 オイラは気を落として座り込む

 するとまた――


トン、トン……


 扉を叩くかのような音


「一体何なんだ?」


 オイラは首をかしげながらも再度、扉を確認する……が、やはりそこには誰も居ない

 仕方なく暗闇の中でテレビを見ている

 すると今度は――


トン、トン……

トン、トン……

トン、トン……


 オイラは無視をする

 そして断続的に部屋の中に音が響いてくる

 それもやがては――


ドン!! ドン!!

ドン!! ドン!!


 音は激しさを増してゆき、やがては――


ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!


 オイラは思わず部屋を飛び出した


「何事だ!!」


 音の元を辿り、オイラはそこで棒立ちになる


 親が台所でカボチャを切っていた・・・

 ただそれだけだった

 母はカボチャを叩きつけるかのようにちぎっては投げちぎっては投げ……

 まぁ、今はそんな事はどうでもいい

 オイラにはそんな些細な事より気になることがあった

 その事とは……


 その為オイラは家を飛び出す

 家を飛び出し気づけば夢中で走りだしている

 薄暗い闇夜の中、息を切れさせながら気づけはオイラはある建物の前まで辿り着く


 オイラは誘われるかのようにその建物へと足を踏み入れた

 そこにいた人物がゆっくりとこちらを向く……

 まるで幽鬼のような人物が……一言!!


『いらっしゃいませ~!!』


 笑顔満面、店員が温かくオイラを迎え入れてくれてくれた

 幽鬼などと言ってすまん

 ごく普通の店員さんだった

 そしてオイラがたどり着いた建物

 そこには〝○ジマ電気″の文字

 某家電量販店である


 もちろん照明が切れた為に家電量販店に来ただけ

 照明を交換するのが当たり前

 えっ、もしかして何か期待させちゃったかな?

 プ~、クスクス……

 オイラはただ単に暗闇でテレビを見ていたのだが『これは何とかせねば!!』と思い至ったに過ぎない


 暗い中でテレビを見るのは目に宜しくないのだよ

 その事に気づいたオイラは部屋の照明を直す為にいそいで蛍光灯を買いに走った

 しかしオイラには気がかりな事が更に一つあった事にいまさらながらに気が付いた

 その事態にオイラは思わず心の中で悪態をつく


(クソ、信じられない!!。足りなかったらどうしよう!!)


 もちろんそれは財布の中身を確認するのを忘れていた為であって断じてオイラの頭の中身ではない

 もう一度言おう!!

 無いのだ!!


 そんな訳で財布の中身を確認する

 幸いであろうか金額を見ると今の手持ちの金は少なかったがそれで十分買えそうな値段だった

 蛍光灯を持ち、会計を済ませるといざ我が家へ!!


 だが、これこそがこの後に起こるであろう更なる厄災の始まりであると言う事に……オイラはまだ気づく事はなかった


 何も知らないオイラは『これで部屋が明るくなるな~』と単純な思考の下、家へとたどり着く

 家へと着くと早速とばかりに部屋の照明を交換してみる

 今度こそ明るい部屋でテレビを見られるぞとカバーを直して照明をつけてみる

 だが……


「あれ? おかしいな……」


 部屋の照明を何度もパチパチと切り替えるが何故か一向に付く気配がない

 新品に交換したはずなのにこれいかに?


 その時!!

 何か得体の知れない違和感がオイラの体を駆け巡った

 思わず身がブルリと震える

 この感覚には覚えがあった!!


 そんな事を思っていると

 今度は何処からともなく女性の声が

 その女性は何を言っているのか分からない

 だが確かにオイラの部屋の中に微かな女性の声が響いたのだ

 気のせいかと思い耳を澄ませてみる

 すると今度は何も聞こえない

 静まり返った部屋

 気のせいかとそこ事にホッと一息・・・

 だが突如、扉の向こう側から人の頭が!!


山姥やまんばか!!)


 オイラは思わず大声を上げそうになった

 だが!!


「ごはん、出来たわよ~!!」


 オイラの母親だった

 もちろん答えは――


「後で食べる~」


 オイラは部屋の電気を再度確認すると自問自答を繰り返す

 そしてやはり照明でんきは付かなかい


(何故なんだ!!)


 オイラは心の中で自問自答を繰り返す


(マジか!?)


 まじなんです・・・


(マジか!?)

 

 まじなんです・・・

 

 暗闇の中を佇むオイラ

 そこで出た結論!!


「初期不良なのか!!」


 オイラは心の中で毒づく

 『初期不良』それはとても恐ろしい出来事

 今までの一連の動作をすべて無駄にさせてくれるという代物だ

 蛍光灯を買いに走った苦労、暗い中照明のカバーを外し照明を交換した苦労

 その他一切を無駄にさせるひどい話

 よって、照明でんきはつかなかった……

 もう一度言おう

 照明でんきはつかなかったのだ……

 付かないとはこれ如何に!!


(おかしい、おかしすぎるだろ!!)


 オイラは心の中で毒づく

 蛍光灯を新品に交換したはずなのだ

 なのに照明が付かない

 一体どういうことよ!!

 オイラは怒りと共に急いで先程の電気屋まで辿り着く


(クソ、ふざけるなよ!! 初期不良なんてあり得るのか?)


 あり得るんです!!


 オイラもまさか再び○ジマまで走らされるとは思いもしなかった

 これこそ不幸と言わずして何と言おう

 急いで往復していたために疲れるオイラ

 だが無事、別の蛍光灯と交換してもらった時はホッとした

 一応、レシートは持って行ったが店の人がオイラの事を覚えていたらしい

 新しい蛍光灯への交換へはすんなりと行った

 そしてオイラは今度こそ無事、新しい蛍光灯と交換できた

 だが、これで再びつかなかったらどうしよう

 そんな思いを胸に再びの蛍光灯交換

 それは薄暗い中で行った為か更なる苦労の連続だった


 因みに今晩のおかずはカボチャの煮っころがし

 あの時の叩く音は母がこれを調理していた時の音

 かぼちゃの身は固い


(結構叩きつけたような音がしたよな~)


 そんな事を思いながらオイラはカボチャを食べる

 ただそれだけ

 結構、どうでもいい話である

 


追伸

 蛍光灯はつきました・・・


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