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第14話 ~天井~

 ――― 夕暮れ時 ―――


 この日は何やら言いようのない不安感がオイラの心を満たしていた


 それは外が少し薄暗かったせいからなのかもしれない


 とにかく、今日のオイラは不安に満ちていた


 オイラは、二階の自室から降りてくると居間の引き戸を開け、部屋の照明を〝パチン″と付ける


 そして、テーブルの上に置かれていたテレビのリモコンに目をやると今度は電源ボタンを押してみた


 黒かったテレビの画面に映像が流れ始めた


 その時!!



 カタン!! コトン!! グシャン!! ぽよ~ん♪



 何やら台所で音がする


 どうやら隣の台所では、母が夕食の支度を始めたらしい

 

 オイラはそんな事には特に気にせず、居間で胡坐をかいて座るとリモコン片手に幾つかのチャンネルボタンを適当に押し始めた


「何か面白そうな番組がやっていないかなぁ~?」


 オイラはそんな事を口走りながら、流れるテレビの内容を確認してゆく


 そして、しばらくするとボタンを押し続けていた指がピタリと止まった


 面白そうと思った番組が見つかった為だ


 その時――



 ギシッ・・・・・・

      ギシッ、ギシッ・・・・・・



 不意に聞こえる謎の音


(この音は一体何処から?)


 オイラは音のする方を見てみる


 すると、そこには兄が居た


 どうやら音の原因は兄が二階から降りてきた時の音だったらしい


 兄は降りてくるなりオイラの手元からテレビのリモコンを「貸してくれ!!」と奪い取ると、目まぐるしい速度でテレビの番組チャンネルを変えてくる


 だが、これはいつもの事なので特に気にはしない


 だが……


 ギシッ、ギシッ、ギシッ・・・・・・


 音はまだ、止まってはいなかった


「あれ?」


 オイラは一人首を傾げる


 それはそうであろう


 何せ、兄は今ここにいるし母も隣で料理を作っている。父に関しては未だに帰ってきてはいなかった


 ならば〝この音は一体何?″と言う話になる


 オイラはそれを確認する為にもゆっくりと席を立ち上がると二階へ向かって歩き出した


 二階にやってくれば、やはり誰も居ない


(気のせいか?)


 オイラは再度、周りを見渡してみる事にする


 だがやはりそこには誰もいなかった


 オイラは、不気味に思いながらも階段を下りる事にした


 すると、居間ではくつろぎながらテレビを見ている兄がいる


「さて、オイラもさっさとのんびりするかなぁ・・・」


 居間へと向かうオイラ


 するとちょうどその時、特に何かを考えるわけでもなくオイラは何気なく居間の天井を“フッ”と見上げた


 オイラは首を傾げる


「あれ?」


 そこには小さな黒染みがあった


 別段、天井にシミがあったからと言って特に気にする訳でもない


 だが、この時のオイラは何故かこのシミが無性に気になって仕方がなかった


(あんな染み、今まであったっけかな?)


 オイラは自問自答する


 何故ならオイラの記憶では天井のあの位置に染みがあったとは記憶していない


 なにせ自分の家なのだ、ある程度の事は把握している


(そういえば、さっきの軋む様な音も・・・一体?)


 オイラは再び疑問に駆られる


 気づけばあのギシギシと言う軋み音もいつの間にやら止んでいた


 オイラは首をかしげながらも兄と一緒にテレビを見るべく居間へと向かう


 もちろん、先ほどの件も気にはなったがこれはどうする事も出来ない


 ならばと、オイラは一切合切、忘れる事にした


 それから少し時間が経っただろうか


 特に何も起こらない……


 いや、何かを期待したわけじゃないんだ


 何も起こらないのだから良い事じゃないか


 オイラはそんなどうでも良い事を考えながらテレビを眺める


 そんな時、台所からは食欲をそそるような美味しそうな香りが漂い始めて来た


 どうやら料理が出来上がったらしい


 オイラは席を立ちあがると、出来上がったばかりの食事を居間へと運ぶ事にする


 料理を前に父を除いた家族全員が卓についた


 そして皆が各々、勝手に食事を始める


 しかしこの時、オイラは気がづいていなかった


 この後に起こる真の恐怖が、刻一刻、刻一刻と近づいてきていた事に


 天井を見上るオイラ


 すると――

 

(あれ、おかしいぞ!!。さっきの染みが濃くなっていないか?!。しかも木目と合わさり、顔の様にも見えなくもないか?。)


 それは此方を睨みつけているかのような模様を呈していた


 恐らくこれはパレイドリア現象の一つ


 パレイドリア現象とは本来、そこに存在しない筈なのにそこに何かを見出し、心にその事を思い描いてしまうという現象の事を言う


 つまり、そこに居ない筈のモノを関連付けて見てしまうという現象だ


 こんな現象を見てしまうとはオイラはなんて想像力豊かなのだろう


 そう思うことにした! だが、気にはなる……


 お化けなんて居ないし、何かされるわけでもない


 人の顔が浮かび上がっている様には見えるがあれは本当にただの染みなのだ!!


 オイラは、心にそう言い聞かせる


 そして染みの事は忘れる事にした


 その方が心と体に優しい


 オイラ達は黙々と食事を続け、夕食も食べ終わる頃に差し掛かってくると再びテレビに集中していく


 その時、突如外から強大な力が押し寄せるかのような大きな軋み声が家中に響き渡った




 ギシ・・・


  ギシギシギシギシギシ・・・・・・



「きゃ―――!!」


 母の悲鳴が聞こえた


(何事だ!?)

 

 母の方を振り向くオイラ


 そして……


「醤油、こぼしちゃった……」


(うん、確かに大変だ 染みになったら大変だ)


 ホッと一安心。オイラは台拭きを持って醤油を拭き取った


 すると今度は兄の不気味な悲鳴が聞こえた


「にょ~~ん!!」


 今度は何?。と思って仕方なく今度は兄の方へと振り向く


「しっ、汁が!!」


「おいおい、今度は何をこぼしたって言うんだい。まさか、麺汁めんつゆでもこぼしたッて言うのかい?」


 そんなオイラの冗談に兄はアホな事を言ってきた


「ばかもん!!。こぼしたのは麺汁めんつゆなんかじゃない。天つゆだ!!」


 どうでもよかった


(どうやら天つゆらしい……って本当にそんな事どうでもいいわ!!)


 しかし事の重大さはそれだけでは終わらなかった


 〝天つゆ″って言っていたのに夕飯に天ぷらなんて無かったのだ


 天ぷらが無いのに天つゆを一体、何に使う


 そして天井を見上げた瞬間、オイラの瞳が大きく見開かれた


 そこにあったもの!!


 それは――



 ぴちょん・・・ 

   ぴちょん・・・

 




 不気味な音が微かに響く・・・


 見れば未だテーブルに茶色いしずくが滴り落ちる


 それは上の方から落ちてきていた



 ぴちょん・・・ 

   ぴちょん・・・




 瞬間、オイラの首筋を冷たいモノが這いずり回るような感覚がして思わずゾクリとした


 そしてオイラは大声を張り上げていたのであった


「馬鹿兄貴!! これは〝天つゆ”じゃなくて雨漏りって言うんだよ!!」


「いや、天井から降ってくる汁だから天つゆだとばかり……」


「もう、そんな事はどうでもいいわ!!。誰が上手いこと言えっていったよ。」


 被害が拡大したら大変


 皆が慌てて容器を探しだす


 そしてオイラも容器を見つけては滴の垂れる下へと容器を置いていく


 ポチャン・・・ポチャン・・・ぽよ~ん♪


 プラスティックの容器に少しずつ溜まって行くけがれた茶色の水

 

 今や雨漏りは一か所だけでなく天井の多くの部分を濡らしながら至る場所から落ちてきた


 オイラは原因を探る為にも急いで近くの押し入れから天井板を外して天井を覗き込んだのであった



 薄暗い天井裏―――


 その中で一カ所だけ横に一直線、家の隙間から差し込む薄光が見えた


 そこから流れ込んで来ている雨水


 居間へと戻ると母が未だ大小様々な容器を持ってきて新にできた水の滴る場所へと置いていた


 オイラは先程見た記憶をたよりに外へと確認する


 すると雨が降っていた


 しかも水という物は本来であれば重力に従って上から下へ落ちる物である


 だが、この日は違っていた

 

 強風によって雨水が煽られ下から上へと押上げられていたのである


 強風に煽られるたびに家は軋み、風圧によって水が下から上へと吹き上げられていた


 光の差し込む場所は丁度、一階と二階にある小さな屋根の丁度付け根部分


 そこに小さな隙間が出来ていた


 雨水が壁を昇って隙間へと入り込む


 雨風が吹き荒れる中、オイラは急いで木材を詰め、応急処置を施し、穴をテープで埋めた


「これで一応は大丈夫……の筈。多分……」


 しかし人間、諦めも肝心と知れ


 これ以上は無理なのだ


 オイラは適当に処置を終えると部屋の中へと入っていく


 これで事件は収束するはずであった


 案の定、雨漏りは収まりを見せた


 そして、一時はどうなる事かと思ったオイラ


 これ以上は無理!!


 そう思うことにする


 これにて家の中での騒動は収まりを見せたのだ



 この日、外は大雨。外は風が強く吹き荒れていた……


 人は皆、これを台風と呼ぶ


なんか、久しぶりに書いて見た

面白いと思うか思わないかはあなた次第!!

ぶっちゃけ、よくこんなどうでも良い話かくよなぁ~と思うオイラでした

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