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いつか君に  作者: 太田里子
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世界が色を失った日

母上がなくなった。


母は父の話をよくしてくれた。

どんなに素晴らしい人なのか。

父上の話をする母上はとても柔らかい顔で話してくれる。

僕が起きている時は滅多に会えないけれど、母上の語る父上はとても優しく、母上が父上を大好きなのがわかった。


もともと体の強い人ではないけれど、側室で第2王子の母という微妙な立ち位置。

実家も王都から遠い領地を持つ伯爵の娘。

父上もはじめのうちは頻繁に通ったようだが、私が生まれてからは第2王子ということもあり安全のために王都の近くの離宮に移った。距離もあって父上が母の元へ通う回数はどんどん減っていく。


生まれた時から周りは自分を王子として見る。擦り寄る者、自分の利になるから見定めようとする者、噂や陰口が飛び交い、幼いながらもひどく心が痛んだ。


5歳になると王子としての教育が始まった。毎日やったことを母に報告すると、本当に嬉しそうに聞いてくれる。今日は足し算を習った、ピアノが弾けるようになったとか剣を持たせてもらえたと毎日母に報告できるのが嬉しくて、どんどん学んでいった。


だんだんとベッドにいることが多くなる母。それでも極力自分との時間を作ってくれた。優しく撫でてくれて、抱きしめてくれる。毎日話を聞いて褒めてくれる、そんな毎日が続くと思っていた。


葬儀には父も出席したが、幼い頃より甘えたことも、遊んでもらったこともないので父というより国王としての彼しか知らないことに今更ながらに気がついた。


何もする気力がわかない。

学ぶことも剣も母のために、自分のためにと頑張ってきたが、守る者がなくなってしまった。


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