6 魔法を使う2
ちょっと短いです。すみません
ミサーナが初めて魔法を使った日から一年程の時間が流れた。そして、今日でめでたく三歳になり、なんと魔法の訓練場という所に行ってもいいことになった。
あれからも、魔法の練習は欠かしていなかったが、室内では初級以外は使えなかったので、中級以上はまだ使えない。なので自由に練習出来るのは非常にありがたい。
と思っていたのだが、今日からはミサーナのお勉強が始まってしまった。それが終わるまでは図書室も魔法もなしになっている。
面倒なことこの上ないが、幸い勉強はミサーナにとっては文字通り児戯のようなもので、アルファベットに算数といった基礎の基礎しか行わない。日本で教育を受けていたのだから、この程度は遊びにもならない。
そんな訳でミサーナは自重せず、普通に課題に励んだ。早く魔法の練習がしたかったのだ。それと、どの程度加減をするのか考えるのが面倒だったという理由もある。
筆記体に少し苦戦したが、サクッと終わらせた。変な目で見られると思っていたのに、そんな気配が微塵もない。不思議に思ったが、聞くのも不自然だし、都合が悪いわけでもないので、ミサーナは無視して訓練場に向かった。
訓練場に到着した。雰囲気的には弓道場に似ていたが、その三倍は広そうである。的も置いてあるので、練習するには十分だろう。
準備運動に初級魔法を使う。詠唱は完全に無くすのは、無理だった。自力で魔力を動かすことがどうしても不可能だったのだ。
試しに図書室で調べてみると、完全な無詠唱で魔法を使いこなすのは魔族のみらしい、との事だったので魔族の身体には、自力で魔力を動かす器官があるのだろう。
だが、ミサーナは無詠唱の練習だけは続けていた。不可能なのはわかったが、万が一があるかもしれないし、普通に魔法を使う練習にもなったので。
結局、無詠唱は使えなかったが、練習の成果で魔法の発動速度はかなり速くなった。
「『火よ……』」
これだけで初級魔法は使える。かなり速くなった筈だが、アイリには何も言われないので案外これぐらい普通なのかもしれない。
……とミサーナは勝手に思っているが、全くそんなことはない。普通の人は、そもそも詠唱を使わずに魔法を使おうとは考えないのだ。何故なら、それは魔族しか使えないとされているから。
なので、人族の魔法使いは必ず詠唱を使う。アイリがそれを指摘しないのは、単にミサーナの異常さに慣れてしまっただけだ。勉強の時に無反応だったのも、それが原因だ。そしてその慣れは王宮全体に浸透しているので、誰も指摘しない。故にミサーナは自分が普通だと思い込む。悪循環だ。慣れって怖い。
そんな事には一切気付かないミサーナは、準備運動を終えて早速中級魔法の練習を始める。
「『火よ、我が武具となりて敵を貫け、火矢』」
使うことは出来なくても、教科書、もとい魔導書は読み込んでいたので、暗記は完璧だ。なので普通に詠唱は出来た。だが、矢は出てきたのに浮いたまま飛んでいかない。
そこで飛んで行くイメージをすると、真っ直ぐ飛んで的に当てることができた。
その後も、中級魔法を色々試していたミサーナだったが、本に書いてあるものは全て問題無く使うことができ、一回使えば詠唱も短縮することが可能であった。
続けて上級魔法も試してみると、こちらも普通に使えた。ただ、炎の竜巻やら、落雷やらを起こしたせいで、訓練場をボロボロにしてしまい、アイリにこってり搾られたミサーナだった。