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転生王女は元男の子  作者: いでりん
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4 魔法を使いたい

「魔法を使いたい」

 

  来るかどうかも分からない戦争の事を考えるのを止めたミサーナが、最初に思ったことがこれだ。


  実際、戦争になったとしても王女である以上、前線に出たりはしない筈だ。だが、万が一戦うことになった場合を考えると、魔法が使えるかどうかで生き残れる確率はかなり変わってくる。……という建前を持っただけで、本音はただ魔法が使いたいだけだったりする。


  とにかく理由はどうであれ、学ぶという事は無駄にはならないだろう。なので、まずはアイリに聞いてみる。


「魔法ですか?そういう本は図書室には無い筈ですよ。確か、国王様の書斎に置いてあった気がします。ですが、使えるようになるかどうかは分かりませんよ?」

「どうして?」


  ミサーナの言葉にアイリは曖昧な微笑を浮かべて、答えてくれた。



  この世界では、魔法使いというのはとても数が少ないらしい。

「全ての人間には魔力が存在していると言われています。ですが、その中でも魔法と呼べる程のものを使える人は五千人に一人と言われていて、更に、魔法使いの才能は子供に遺伝しない……親に使えても子供に使えるとは限らないので、自分に才能があると気が付かずに一生を終える人も多いのです」


(そういえば、神様も才能が絡むって言ってたな。こういう事だったのか)


  そして、魔法には色々な種類があるらしい。火の玉を出し、土を操ったり、カマイタチを起こしたりする物は一般的で、身体能力を強化して肉弾戦で戦う魔法や、瞬間移動やテレパシー、回復のような、他の人をサポートする魔法もあるらしい。


  他にも、土から鉱石を抽出したり、その鉱石を精錬するものもあるらしいが、これは錬金術と言って魔法とは別物なのだそうだ。


「この中のどの魔法でも、使えれば一生困らないと言われています。それほど魔法使いという存在は貴重なんですよ」

「そうなんだ」


  表情には出さなかったが、アイリの言葉にミサーナはとても驚いていた。魔法を使えるかは才能が絡むと聞いていたが、そこまで数が少ないとは思っていなかったし、彼女が子供の夢を壊すような事を言うとは思っていなかったのだ。


「とりあえず、お父様の書斎に行こう」

「えーと、本当に行くんですか?」

「行く」


  それでも迷いなく書斎へ行こうとするミサーナに、アイリは動揺している。当然だろう。何故なら彼女は二歳の幼児に現実を叩きつけた所なのだ。それも、ミサーナは大人びていて、賢い。あれだけ厳しい事を言ったのに諦めないとは思わなかったのだろう。確かにミサーナは普通の子供ではない、中身は二十歳の成人男性と同じだからだ。普通なら諦めたかもしれない。

  しかし、ミサーナは普通ではない、自分に魔法の才能がある事を知っている。何故なら彼女は、産まれる前に会っているからだ。

 

     神という存在に。


  自分を転生させた存在が、自分に魔法の才能を付けておくと言っていたのだ。ならば大丈夫。そう思う程度には、ミサーナは彼女の事は信頼している。確かに女として転生させられたり、奴隷の子供以外と言ったら、王族として産まれていたりと、アバウトな点もあるが、それでも彼女は神様だ。この魔法が貴重な世界で、魔法の才能が欲しいと言ったら、それだけでいいのかと逆に驚くような、力のある存在だ。なら、きっと大丈夫。



  そんな風に考えていたが、アイリに言える筈が無いので黙っておくミサーナであった。

(むしろ、何故アイリは諦めさせようとしてるんだ?)


  少し考えてみたが、自分に傷ついてほしくなかっただけだろう。ミサーナは、自分をそう納得させてアイリと共に書斎へと向かった。





  何事もなく書斎へ到着した。アイリに扉を開けてもらい、中に入ると立派な本棚が三台置いてあり、その中心にある椅子には王様が座っていた。

「ん?ミサーナか、どうした、何かあったか?」

「はい、お父様。此処に魔法の本があると聞いたので、貸してください」

「魔導書か?確かにあるが…読めるのか?」


  そう言って王様はアイリに視線を向けた。

「えぇ、読めていますよ。昨日も書庫の歴史書を読んでいましたから」


  アイリがそう言うと、王様はとても驚いていた。それも当然だろう、何せミサーナはまだ二歳の子供である。本をしっかり読めるのはおかしいし、何なら大人と同じように話せるのも充分不自然だ。

  ミサーナも最初は子供らしくしようとしていたが、すぐに諦めてしまった。普通の子供という物を知らないのに、演技ができる訳がない。


「そうか…まぁいい。魔導書は左の本棚で、水晶は机の上にある。好きに使え、では私は仕事に戻る。頑張れよ」



  王様はそう言い残して、部屋から出て行った。最近から使えるとは思っていないのだろう、何せ五千人に一人なのだし。

  とりあえず、アイリに本棚から『魔法入門』という本を引っ張り出してもらい、読んでみる。


「えーと、まずは水晶に両手で触れて、五分ほどそのままの状態で待機します。もし水晶が光ったら、貴方には間違いなく魔法の才能があります」


  随分と簡単に判るんだなと思いつつも、言われた通りに両手で触れてみる。触れてすぐは何も起こらなかったが、だんだん手が熱くなってきた。そして、ミサーナは気付かなかったが、ピッタリ五分経った時に水晶に変化が起きた。



「おぉ………!」

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