30 ドラゴン狩り
はい更新。
ゴールデンなウィークが終わったので、連続更新は途絶えると思います。ごめん。
「グォォオ!!」
「うるせぇ!」
若干口調が前世……もとい男に戻りかけているミサーナが、ドラゴンに剣を叩きつける。
だが、剣は弾かれるばかりでダメージを与えている様子が無い。一応鱗に傷は入っているが、その程度をダメージとは言わないだろう。漫画でよくある傷の入った鱗を狙い撃つ技術もミサーナにはないので、やはり意味のある攻撃とは言えない。
「グォ!」
ドラゴンの口から『火球』が放たれた。
魔法なのかどうかは不明だが、当たれば間違いなく火傷では済まない攻撃だ。
『飛行』を駆使して躱す。
「『氷槍』!」
『火球』の間を通り抜け、氷で出来た槍を六本放つ。
しかし、これも鱗に阻まれ傷を与えるには至らない。
(まともに当ててもダメだな。魔法剣も通らないし、鱗を刺したり斬ったりするのは無理臭い……じゃあ、眼か)
「グォウ!」
『火球』が当たらない事に苛立ったのか、今度は火ではなくその巨躯と爪を使いミサーナを殺しにくる。
「あーもう!怖いんだよ!」
それを見たミサーナは、『飛行』を使い全力で距離を取る。
尻尾でも牙でも脚でも爪でも魔法でも、ミサーナ一人を殺すには充分すぎる破壊力だ。
「どれ食らっても致命傷とかふざけんのも大概にしろ!棍棒振り回すだけのゴブリン見習え!」
「グォォ!!」
ミサーナの言葉に業を煮やしたのか、そうでないのか、ドラゴンの攻撃は更に苛烈になっていく。
そして己の爪が届かないと見るや、その翼を羽ばたかせ飛び立った。
「ハァ!?」
ドラゴンにとっては気軽な行動なのかもしれないが、ミサーナにはそうではない。
ドラゴンの攻撃が届かないから、少しは冷静に戦えていたのだ。
いつ自分に届く攻撃が来るか分からない状態でなど、怖くてまともに戦えない。
「落とさなきゃ話にならないなぁ!」
「ガァァアア!!」
小回りを活かしながら尻尾と爪を掻い潜り、隙を窺う。
「落ちろ!」
大振りの尻尾を躱したミサーナが、翼の飛膜に『火球』をぶつける。これは普通の『火球』ではなく、当たった瞬間爆発する例の改良型だ。
「グォアアアァ!?」
ミサーナの狙い通り、飛膜に直撃した『火球』が爆ぜた。
その衝撃により、飛膜に小さくだが穴が空いた。一発でこれならば、すぐに飛膜を全損させられるだろう。
「『火球』!」
ミサーナが一気に『火球』を展開させた。
その数は、現在の限界である二十一発。その全てが爆発する改良型だ。
「行け!」
全ての『火球』がドラゴンの飛膜を目掛け、飛んでいく。
しかし、その半数は狙いを察したであろうドラゴンに防がれてしまった。手脚と尻尾を盾にするという強引な方法で。
「グォォ……!!」
だが、『火球』達は確かに役目を果たした。
飛膜をズタズタにされたドラゴンが、ゆっくりと地上へ降りていく。
まだ飛べる可能性はあるが、態々降りたという事は飛べなくなったと考えて良い筈だ。こちらを騙そうとするほどの知能があるとは考えたくないし、そうであって欲しい。
「ハッ!ざまぁ見やがれ!」
「グルルルゥウ……!!」
空中から勝ち誇るミサーナに、唸り声をぶつけるドラゴン。
しかし、未だ油断は出来ない。
今の所は、爪も尻尾も届かない位置に居ることが出来ているが、ドラゴンには『火球』があるし、ジャンプすればミサーナにも充分爪が届く。
それに、ミサーナに決定打が無いのには変わらないのだから。
「どうするかなぁ……」
最初は眼を狙う作戦だったが、飛膜を庇ったりする知能があるのだから、眼を狙えば全力で守るだろう。眼は飛膜ほど大きくないし、簡単に守れる筈だ。
「……使うか?」
奥の手、という程でもないが、今の所『ファイアバレット』と『爆裂弾』は温存している。
理由としては、ハンナに見せたくない……もっと言うと、アルフェルや他の幹部達に知られたくないからだ。ハンナに見せれば、確実に報告がいくだろうし。
いつか戦うかもしれない相手に、手の内は見せたくない。特にイーガス。
「とはいえ、ジリ貧だし……」
そんな風に迷っている間にも、ドラゴンからは『火球』が飛んでくる。
躱せるものは躱し、躱しきれないものは魔法剣で叩き落とす。
最初はいちいちビビりながら対応していた筈なのだが、慣れとは恐ろしいものだ。
「……もういいか、ハンナには口止めして、ダメなら諦めよう」
ミサーナは思考を放棄した。
「まずは一発」
そう言って、『ファイアバレット』を一つ展開する。
いつもより魔力と回転力を高めた特別製だ。
「行け」
ミサーナの言葉と同時、炎の弾丸が宙を穿ち、ドラゴンの鱗に直撃した。
「グォウ!?」
「ほう?」
直撃した『ファイアバレット』は、貫通するには至らなかったものの、接触した部分の鱗を砕く事に成功した。
「勝ったな」
そして、それを見たミサーナは己の勝利を確信した。
別に、鱗を全て砕こうとか、砕いた場所を狙おうという訳ではない。
大体の生物の特徴として、他の部分と比べて腹は柔い。
勿論それはドラゴンも例外ではない。そこら辺は、剣をぶつけた時に確認済みだ。それでも斬れなかったのは、正直納得いかないが。
まあ、鱗を砕けたなら、腹を貫くくらい楽勝だ。
「ま、とりあえず腹をぶち抜けばいいかな」
しかし、『ファイアバレット』では大きさが足りない。小さな弾丸では、あの巨体にトドメを刺すのにどれだけの数が必要になることか。
だが――
「『爆裂弾』」
これであれば、余裕だ。
元々、『ファイアバレット』は『爆裂弾』の副産物、否、失敗作でしかない。
では、ただの失敗作で鱗を砕いたこの魔法の完成版は、一体どんな威力を秘めているのか。
見た目は『ファイアバレット』と何も変わらない。
先端を尖らせた円柱に、螺旋回転を加えているだけだ。
「行け」
しかし、その威力はまるで違った。
ミサーナの狙い通り、鱗を外し、腹に突き刺さった『爆裂弾』は内臓にまで辿り着き、爆ぜ、その内部を蹂躙した。
「グォォオオァァァアア!?!?」
こうなると、簡単だ。
魔石は心臓に発生するそうなので、そこに当てないように『爆裂弾』を当てるだけで良い。
淡々と次の『爆裂弾』を展開し、発射する。
「グォォオオァァァ!?」
その度に内臓を蹂躙されるドラゴンは気の毒と言う他ないが、今のミサーナは慈悲も容赦も持ち合わせていない。
作業のように魔法を行使し、ドラゴンを破壊していく。
「グ……ォォオ……」
結局、ドラゴンが沈んだのは、五発目の『爆裂弾』が炸裂した時だった。
臓器やらの急所を爆発させられたにしては、よく耐えた方だろう。
「ふぅぅううう……疲れたぁ……」
「お疲れ様です、ミサーナ様」
動かなくなったドラゴンの横に座り込んだミサーナ、その横に、いつの間にかハンナが居た。
「うぉ……ビックリしたぁ、で、お疲れ様ってことは?」
「えぇ、お察しの通り、これで今回の任務は終了です。ドラゴンの死骸については、後で担当の者が回収に来るでしょうから、放置で結構ですよ」
「ふーん?まぁ、それよりも、ハンナはあれ見た?」
「あれ、とは?」
「惚けないで」
「…………そうですね、ドラゴンにトドメを刺した魔法でしたら、見ましたよ」
ミサーナが少し厳しく問いかけると、ハンナは思いの外あっさりと見た事を認めた。
そして、その勢いにまかせて口止めも済まそうとするミサーナ。
「そう、じゃあ黙っておいてね。あんまり人に知られたくないし」
「……それは、アルフェル様にもですか?」
「うん、当然」
「そうですか……申し訳ありませんが、それは出来ません」
だが、そうは問屋が卸さない。
確固たる意志を持っていそうな雰囲気で、断られた。
「どうしても?」
「どうしてもです」
どうしてもダメらしい。
その言葉に、ミサーナは少しだけ考え、戦闘中に考えていた事を思い出した。
「うん、じゃあいいや。でもアルフェル様以外には言わないでね」
「………………え?良いんですか?」
「それについては使った時点で覚悟してたし。あ、でも教えたりはしないから」
というか、割と諦めていた。
「ほら、早く帰ろ。もう疲れたから」
「……え?あ、はい」
そうして二人は、魔人族の城へと帰って行った。
ポイントくれって言ったら貰えると聞いたんですが、本当ですか?




