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転生王女は元男の子  作者: いでりん
33/36

30 ドラゴン狩り

はい更新。

ゴールデンなウィークが終わったので、連続更新は途絶えると思います。ごめん。

「グォォオ!!」


「うるせぇ!」


 若干口調が前世……もとい男に戻りかけているミサーナが、ドラゴンに剣を叩きつける。


 だが、剣は弾かれるばかりでダメージを与えている様子が無い。一応鱗に傷は入っているが、その程度をダメージとは言わないだろう。漫画でよくある傷の入った鱗を狙い撃つ技術もミサーナにはないので、やはり意味のある攻撃とは言えない。


「グォ!」


 ドラゴンの口から『火球』が放たれた。

 魔法なのかどうかは不明だが、当たれば間違いなく火傷では済まない攻撃だ。


『飛行』を駆使して躱す。


「『氷槍』!」


『火球』の間を通り抜け、氷で出来た槍を六本放つ。

 しかし、これも鱗に阻まれ傷を与えるには至らない。


(まともに当ててもダメだな。魔法剣も通らないし、鱗を刺したり斬ったりするのは無理臭い……じゃあ、眼か)


「グォウ!」


『火球』が当たらない事に苛立ったのか、今度は火ではなくその巨躯と爪を使いミサーナを殺しにくる。


「あーもう!怖いんだよ!」


 それを見たミサーナは、『飛行』を使い全力で距離を取る。

 尻尾でも牙でも脚でも爪でも魔法でも、ミサーナ一人を殺すには充分すぎる破壊力だ。


「どれ食らっても致命傷とかふざけんのも大概にしろ!棍棒振り回すだけのゴブリン見習え!」


「グォォ!!」


 ミサーナの言葉に業を煮やしたのか、そうでないのか、ドラゴンの攻撃は更に苛烈になっていく。

 そして己の爪が届かないと見るや、その翼を羽ばたかせ飛び立った。


「ハァ!?」


 ドラゴンにとっては気軽な行動なのかもしれないが、ミサーナにはそうではない。

 ドラゴンの攻撃が届かないから、少しは冷静に戦えていたのだ。

 いつ自分に届く攻撃が来るか分からない状態でなど、怖くてまともに戦えない。


「落とさなきゃ話にならないなぁ!」


「ガァァアア!!」


 小回りを活かしながら尻尾と爪を掻い潜り、隙を窺う。


「落ちろ!」


 大振りの尻尾を躱したミサーナが、翼の飛膜に『火球』をぶつける。これは普通の『火球』ではなく、当たった瞬間爆発する例の改良型だ。


「グォアアアァ!?」


 ミサーナの狙い通り、飛膜に直撃した『火球』が爆ぜた。

 その衝撃により、飛膜に小さくだが穴が空いた。一発でこれならば、すぐに飛膜を全損させられるだろう。


「『火球』!」


 ミサーナが一気に『火球』を展開させた。

 その数は、現在の限界である二十一発。その全てが爆発する改良型だ。


「行け!」


 全ての『火球』がドラゴンの飛膜を目掛け、飛んでいく。

 しかし、その半数は狙いを察したであろうドラゴンに防がれてしまった。手脚と尻尾を盾にするという強引な方法で。


「グォォ……!!」


 だが、『火球』達は確かに役目を果たした。

 飛膜をズタズタにされたドラゴンが、ゆっくりと地上へ降りていく。

 まだ飛べる可能性はあるが、態々降りたという事は飛べなくなったと考えて良い筈だ。こちらを騙そうとするほどの知能があるとは考えたくないし、そうであって欲しい。


「ハッ!ざまぁ見やがれ!」


「グルルルゥウ……!!」


 空中から勝ち誇るミサーナに、唸り声をぶつけるドラゴン。


 しかし、未だ油断は出来ない。

 今の所は、爪も尻尾も届かない位置に居ることが出来ているが、ドラゴンには『火球』があるし、ジャンプすればミサーナにも充分爪が届く。

 それに、ミサーナに決定打が無いのには変わらないのだから。


「どうするかなぁ……」


 最初は眼を狙う作戦だったが、飛膜を庇ったりする知能があるのだから、眼を狙えば全力で守るだろう。眼は飛膜ほど大きくないし、簡単に守れる筈だ。


「……使うか?」


 奥の手、という程でもないが、今の所『ファイアバレット』と『爆裂弾』は温存している。

 理由としては、ハンナに見せたくない……もっと言うと、アルフェルや他の幹部達に知られたくないからだ。ハンナに見せれば、確実に報告がいくだろうし。


 いつか戦うかもしれない相手に、手の内は見せたくない。特にイーガス。


「とはいえ、ジリ貧だし……」


 そんな風に迷っている間にも、ドラゴンからは『火球』が飛んでくる。

 躱せるものは躱し、躱しきれないものは魔法剣で叩き落とす。

 最初はいちいちビビりながら対応していた筈なのだが、慣れとは恐ろしいものだ。


「……もういいか、ハンナには口止めして、ダメなら諦めよう」


 ミサーナは思考を放棄した。


「まずは一発」


 そう言って、『ファイアバレット』を一つ展開する。

 いつもより魔力と回転力を高めた特別製だ。


「行け」


 ミサーナの言葉と同時、炎の弾丸が宙を穿ち、ドラゴンの鱗に直撃した。


「グォウ!?」


「ほう?」


 直撃した『ファイアバレット』は、貫通するには至らなかったものの、接触した部分の鱗を砕く事に成功した。


「勝ったな」


 そして、それを見たミサーナは己の勝利を確信した。

 別に、鱗を全て砕こうとか、砕いた場所を狙おうという訳ではない。

 大体の生物の特徴として、他の部分と比べて腹は柔い。

 勿論それはドラゴンも例外ではない。そこら辺は、剣をぶつけた時に確認済みだ。それでも斬れなかったのは、正直納得いかないが。

 まあ、鱗を砕けたなら、腹を貫くくらい楽勝だ。


「ま、とりあえず腹をぶち抜けばいいかな」


 しかし、『ファイアバレット』では大きさが足りない。小さな弾丸では、あの巨体にトドメを刺すのにどれだけの数が必要になることか。

 だが――


「『爆裂弾』」


 これであれば、余裕だ。

 元々、『ファイアバレット』は『爆裂弾』の副産物、否、失敗作でしかない。

 では、ただの失敗作で鱗を砕いたこの魔法の完成版は、一体どんな威力を秘めているのか。


 見た目は『ファイアバレット』と何も変わらない。

 先端を尖らせた円柱に、螺旋回転を加えているだけだ。


「行け」


 しかし、その威力はまるで違った。

 ミサーナの狙い通り、鱗を外し、腹に突き刺さった『爆裂弾』は内臓にまで辿り着き、爆ぜ、その内部を蹂躙した。


「グォォオオァァァアア!?!?」


 こうなると、簡単だ。

 魔石は心臓に発生するそうなので、そこに当てないように『爆裂弾』を当てるだけで良い。

 淡々と次の『爆裂弾』を展開し、発射する。


「グォォオオァァァ!?」


 その度に内臓を蹂躙されるドラゴンは気の毒と言う他ないが、今のミサーナは慈悲も容赦も持ち合わせていない。

 作業のように魔法を行使し、ドラゴンを破壊していく。


「グ……ォォオ……」


 結局、ドラゴンが沈んだのは、五発目の『爆裂弾』が炸裂した時だった。

 臓器やらの急所を爆発させられたにしては、よく耐えた方だろう。


「ふぅぅううう……疲れたぁ……」


「お疲れ様です、ミサーナ様」


 動かなくなったドラゴンの横に座り込んだミサーナ、その横に、いつの間にかハンナが居た。


「うぉ……ビックリしたぁ、で、お疲れ様ってことは?」


「えぇ、お察しの通り、これで今回の任務は終了です。ドラゴンの死骸については、後で担当の者が回収に来るでしょうから、放置で結構ですよ」


「ふーん?まぁ、それよりも、ハンナはあれ見た?」


「あれ、とは?」


「惚けないで」


「…………そうですね、ドラゴンにトドメを刺した魔法でしたら、見ましたよ」


 ミサーナが少し厳しく問いかけると、ハンナは思いの外あっさりと見た事を認めた。

 そして、その勢いにまかせて口止めも済まそうとするミサーナ。


「そう、じゃあ黙っておいてね。あんまり人に知られたくないし」


「……それは、アルフェル様にもですか?」


「うん、当然」


「そうですか……申し訳ありませんが、それは出来ません」


 だが、そうは問屋が卸さない。

 確固たる意志を持っていそうな雰囲気で、断られた。


「どうしても?」


「どうしてもです」


 どうしてもダメらしい。

 その言葉に、ミサーナは少しだけ考え、戦闘中に考えていた事を思い出した。


「うん、じゃあいいや。でもアルフェル様以外には言わないでね」


「………………え?良いんですか?」


「それについては使った時点で覚悟してたし。あ、でも教えたりはしないから」


 というか、割と諦めていた。


「ほら、早く帰ろ。もう疲れたから」


「……え?あ、はい」


 そうして二人は、魔人族の城へと帰って行った。

ポイントくれって言ったら貰えると聞いたんですが、本当ですか?

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