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転生王女は元男の子  作者: いでりん
32/36

29 任務

はい!!!!!!!

 試験も終わり長期の休みになった。


 結果は分からない。態々貼り出されたりしないからだ。


 だが、そんな事はミサーナにはどうでもいい。

 大事なのは長期の休み……所謂夏休みだ。

 学生のイベントといえば、これに優るものは無いだろう。

 折角友達と言えそうな人もできたのだ。休みを利用して親交を深める以外にする事など無い。


 そう思いながらミサーナが家……というか、城っぽい建物に帰ると、何時ものようにメイドのハンナが待っていたのだが……。


「お帰りなさいませ、ミサーナ様」


「うん、ただいま……で、何で私の手を掴んでるの?」


 しかも、割としっかりがっちりと掴まれていて、振り解けない。


「アルフェル様に呼び出されていますので、着いてきて下さい」


「やです」


『身体強化』も使い、無理やり全力で逃げようとするミサーナ。

 だが、それをハンナが許さない。何故かミサーナよりも強い力で止められる。


「ちょっと待って?力強過ぎない?」


「逃げようとすると思っていましたからね。分かっていれば対策くらい出来ますよ」


 どうやら最初から戦略で負けていたらしい。

 話している間にも逃げようと踏ん張っているが、ハンナの手も足腰も動かせない。

 ハンナの本気度にミサーナの頬が引き攣る。


「では、行きましょうか、ミサーナ様?」


「……はぃ」


 そして、必死の抵抗虚しくミサーナは連行された。




「任務、ですか?」


「あぁ、任務、というか仕事だ」


 例の玉座の間に連行されたミサーナは、アルフェルに謁見していた。

 相変わらずプレッシャーが凄まじいが、あの幹部っぽい連中が居ないので、これでもかなりマシなのだ。


 さて、この謁見を簡単にまとめよう。


「お前も知っているだろうが、魔人族は今人材が少ない」


「はぁ……」


「そして、中でも戦闘をこなせる者となると、更に少なくなる」


「はぁ……」


「だが、その戦闘をこなせる者には仕事を任せている事が多い。今もそうだ」


「はぁ……」


「そこで、お前だ」


「え?」


「それなりに実力があり、今手が空いている者。学校は今日から休みだろう?」


「えーと、そうですね」


「では時間があるな、任務を命じる」


「いや、でも」


「任務を命じる」


「はぃ……」


 以上。

 細かい事はハンナに伝えているから、そちらに訊け、だそうだ。


「で、任務って何するの?」


「はい、ご説明しますが……機嫌悪くないですか?」


「別に」


 どう見ても悪いのだが、その理由が友達と遊ぼうと思っていた予定が崩れたから、とは、想像もしていないだろう。元々遊ぶ約束もしていないのだが。


「ミサーナ様がそう言うなら構いませんが……まぁ、任務の内容は魔物の討伐です」


「魔物?モンスターじゃなくて?」


「はい、そこから説明しますね。モンスターは所謂凶暴な動物ですが、魔物は簡単に言うと、魔法を使うモンスターです」


「もう嫌になってきたんだけど帰っていい?」


「ダメです。今回の任務では魔物の魔石を採集しに行ってもらいます。魔石は魔物などの魔法を使う生物の心臓に発生する石で、色々と使い道がある素敵な石ですね」


 初めて聞いた情報だった。

 魔物とやらは初耳だし、魔石についてはあるのは知っていたが、魔法を使える生物からしか採れないのは知らなかった。


「……魔石って魔人族からも採れるの?」


「…………えぇ」


「そう……」


 何となく、魔人族が少ない理由が分かった気がした。


「まぁ、いいや、何を狩るの?」


「えぇと、最初は――」




「ねぇ、あれは人一人に倒せるものじゃないと思うんだけど」


「貴女は人ではなく吸血鬼でしょう?」


 ミサーナの怖気付いた言葉に、割と辛辣な言葉が帰ってきた。


「もう帰りたいよぉ……」


「まだ挑んですらいないのに何言ってるんですか」


「あれに挑むのは自殺行為だから」


 ミサーナがそこまでビビる相手とは一体何なのか。


「ただのドラゴンじゃないですか、あんなの大きなトカゲと変わりませんよ」


 そう、ドラゴンであった。

 体長は凡そ20mほど。

 長く靱やかな尻尾を揺らし、一対の蝙蝠のような巨大な翼を羽ばたかせ、四本の太い脚を持ち、その全身を紅い鱗で彩った、俗に言う西洋竜がそこに居た。


「ただのトカゲはあんなにデカくないし、翼も付けてないから。そう思うならハンナが行ってきてよ」


「わたしは『転移』以外は並以下だと来る前に言ったじゃないですか。あんなのの前に出たら一瞬で消し炭です」


「よくそれで私に行けとか言ったな」


 ミサーナが半眼になってハンナを睨むが、堪えた様子は全く無い。


「ミサーナ様こそ、態々剣を所望したのに何を遊んでいるのですか?敵はあちらですよ」


「ぐぅ……」


 ハンナの言う通り、ミサーナは新しい剣を手に入れていた。

 普通のロングソードの先端を折り、無理やり曲げたような形をしていて、色は漆黒で所々錆びているという、禍々しさを感じる中二病ソードである。ちなみに斬れ味は普通だ。

 どうしてもこれが良かったとかではなく、宝物庫に入っていた中で、最も丈夫な物がこれだったのだ。丈夫でないと魔法剣を遠慮なく使えないので、仕方がない。


「あーもう……死んだら怨むから……」


「では、怨まれないよう、応援しておきますね」


「囮にしてやろうか」


「別に良いですけど、わたしが死んだらミサーナ様は帰れませんよ?」


「くそぉ……」


「言葉遣いがなってませんねぇ」


 確かに此処にはハンナの『瞬間転移』でやって来たので、ミサーナ一人では帰れない。

 逃げ出して人間の街に行くのも、現実的とは言い難い。折角友達も出来たし。


 最後まで調子の良いハンナを後目に、ミサーナがドラゴンに『飛行』で近づいて行く。

 正々堂々なんて馬鹿なことは考えない。気付かれない内に、後ろから全力で奇襲する。


 使うのは魔法剣。纏わせるのは『風刃』だ。


 更に、いつもより多く魔力を使い、『風刃』を強化していく。

 これも丈夫な剣あってのものなので、中二ソード様様だ。


 限界まで魔力を注いだ剣を構え、ドラゴンの頸に狙いを定める。


「――――」


 そして、全力でその頸に剣を叩きつけた。


 ガギィン!


 だが、その一撃はあっさりと鱗に弾かれた。

 幸い剣が折れるようなことは無かったが、頸は斬れるどころか軽く傷がついた程度。

 その上、当然ながらドラゴンに気付かれた為、奇襲アドバンテージも失った。


 この状況を一言で表すなら――


「最悪だな」


「グォォオオオオオゥ!!」


 戦いが始まった。

中二ソードの形はこんなの


―――――――――――\

・・・・・・・・・・・・\

―――――――――――\・\

・・・・・・・・・・・・\/


大体こんなのです

『・』は無いものとして考えてくれ。AA(かどうかは微妙)作るの難しすぎる。


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