27 実技試験
更新頑張るって言いましたからね(ドヤ顔)
少し前、ミサーナが『ファイアバレット』を習得した場所にて。
「ねぇ……これ無理じゃない?」
「さぁ……?出来ない事はないと思うけど……」
そこでは今、アリアが丸太に短剣を打ち付けていた。
何をしているのかと言うと、二人で魔法剣の練習をしていた……のだが。
「いやだって、こんなの剣が折れるでしょ。頑張ってコントロールするのにも限度があるわよ?」
どうやら上手くいっていないらしい。
「うーん、なんかこう剣に当てないようにやるんだよ。上手く言えないけど」
「当てないも何も剣から生えてるじゃない」
「そうじゃなくてさぁ……」
頭をこねくり回して考えるが、良い説明が思いつかない。
「まぁ、良いわ。これの練習だけでもかなり良い訓練になりそうだし」
「確かに難しいけど、そんなにかなぁ?」
「そんなによ。先生でも出来るか怪しいわ」
それが出来るミサーナに言える事はあまりないが、多分普通の練習と土壇場の一発勝負で出来なければ死ぬ状況とでは、色々と違うのだろう。
一度出来れば感覚は掴めるだろうし、割とやる気の問題だと思う。
ただ、その為だけに死ぬ間際まで追い詰めるのは問題外なので、ミサーナにはどうにも出来ない。説明下手だし。
「それよりも、他に使い勝手の良い魔法とかないの?」
そう聞かれて、ミサーナは少し迷った。
使い勝手の良い魔法と言えば、今のミサーナの中では『ファイアバレット』が圧倒的にトップだ。
必要な魔力も少なく、殺傷能力も高い。制御は少し難しいが、それも魔法剣程ではない。
我ながら完璧だと、ミサーナは思う。
だが、これをアリアに教えても良いかと言われると、微妙なところだ。
実力的に、ということではなく、信用的に。
ミサーナとしても信用したいとは思っているが、今までの事を考えるとどうにも信用しきれない。
もし『ファイアバレット』を教え、後ろから頭でも撃たれれば普通に死ぬだろうし、ミサーナに使われなくとも、悪用されるのは不快だ。
そして迷った末に。
「無いよ」
と、そう答えてしまった。
「ふーん……そう……」
アリアの少し残念そうな返事を聞くと、罪悪感がすごい。
もう少し仲良くなって信用出来たら必ず教えよう。そう決意した。
突然だが、この学校には試験がある。
と言っても、留年も赤点もない、あってないような気楽な試験だが。
ただ、それは筆記試験に限ったことだ。
試験項目の一つに、実技試験がある。
これが魔法による的当てなら良かったのだが、実際はクラスメイトとの決闘なのだ。
ミサーナとしては、それは流石にどうなんだとか思わないでもないが、昔からの伝統らしい。魔人族は力……というか、魔法こそ正義みたいなところがあるので、そういう事なのだろう。
そして、本日はその実技試験が行われる日だ。
総当りではないため、二人組に別れるのだが、流石に自由ではなくクジで決まる。溢れた人は先生と対戦だ。ミサーナ的に、正直一番の当たりくじだと思う。
だが、そんなミサーナのささやかな願いも虚しく、先生のくじは引けなかった。
では代わりに誰のくじを引いたのか。
「やっとこの時が来たな、ミサーナ!」
誰であろう、初日に絡んできた目つきの悪い少年だった。
名前は確か、ルガスだったか。
「……やっととは?」
「この一ヶ月でお前が強いのはよくわかった。だけど、やっぱり俺はお前が許せねぇ」
「許せない?」
一体何の話をしているのか。
そう思っていたミサーナの思考は、次の一言で完全に粉砕された。
「俺の父上の名前は『イーガス』だ」
その一言による衝撃は、きっとルガスとミサーナにしか通じないだろう。
「父上に怪我をさせたのはお前なんだろ」
「……だったら?」
「俺が勝ったら、父上に謝れ」
「…………は?」
今、何と言ったのか。
「謝る?私が?イーガスに?」
「父上を呼び捨てにするな!」
知るかそんなこと。
こんな状況に陥れたあの諸悪の根源に謝る、謝罪する。断じて有り得ない。
あったとしても逆だろうが。イーガスが私に謝罪するべきだ。
そんな思考でミサーナの脳みそが埋まっていく。
そして、そこから溢れる言葉は一つしかなく。
「死んでも御免だ」
これ以外には存在しない。
たとえこれがただの逆恨みであっても、何があろうと絶対に撤回はしない。
「じゃあ、俺に勝てば良い」
「…………そうか」
そういえば、そうだった。
負けなければいいのだ。簡単な話だ。
「私が勝ったら?」
「俺がお前に謝る」
しょっぱい報酬だ。
だが、死んでも負けられない闘いなのだから、勝った時の報酬なんてどうでもいいだろう。
「……話は終わりましたか?これは私闘ではないのですから、本当はそういうのは御法度なのですよ?」
じゃあ何で止めなかったんだよ、と、つい口から飛び出そうになるのを堪えるミサーナ。
「では、始め!」
絶対に負けられない闘いが、始まった。




